概要

査読は、主観によってではなく、客観的な視点で行わなければなりません。また、著者個人への批判ではなく、報告の技術的な面を評価しなければなりません。「査読シート」(PDF)はこの作業を助けます。
「査読シート」に記載されている評価項目について、5段階で点数をつけてください。基本となるのは3点で、優れているわけではないが出版するにあたって問題ない場合が該当します。ここより優れている場合には点数を高く、劣っている場合には点数を低くしてください。具体的には、次のように考えるのがよいでしょう。
1点:本誌の目的と範囲に合致していない場合。出版するのに問題があり修正も容易でない場合。
2点:そのままでは出版するのに問題があるが、適切に修正されれば出版可能となる場合。
3点:優れているわけではないが、出版するのに問題もない場合。軽微な誤字・脱字といった、著者校正時に修正すればよいような問題については、減点の対象とはしない。
4点:一般的な論文よりも優れており、高く評価されるべき場合。
5点:他の論文より抜きんでて優秀で、読者のお手本となるような場合。また、世間に広く知られるべき、貴重な報告・手法である場合。

各論

独自性・新規性

既存の報告に比べ、新しいものがあるかどうかを評価してください。
さほど目新しさは感じられないが、読者にとって有益であると思われる場合には、3点をつけてください。
新しい内容がなく、読者にとっても価値ある報告と思われない場合には、1~2点をつけてください。

背景・目的

論文の背景と目的について、著者が自覚的であるかどうか、また読者にそれらを明確に伝える努力がなされているかどうかを評価してください。扱われているテーマに関する先行研究が適切に引用され、報告との関連について述べられているかどうかも重要な要素です。
日本語要旨と英文abstractの評価もあわせて行ってください。

科学的根拠

結論を導くにあたって、その根拠が科学的なものかどうかを評価してください。
どのような実験や介入がなされ、それらは適切かどうか。実験の条件や管理は適切かどうか。

論理

論文中の論理に瑕疵がないかどうかを評価してください。
論理の明確さ、わかりやすい文章表現も評価の対象です。論理的に正しくとも、冗長な言い回しであったり、読者の混乱を招くおそれがあれば、低い評価となります。

データの明示、適切な解析処理

上記の「科学的根拠」「論理」と関連し、それらを支えるデータが十分に示されているかどうかを評価してください。
データが統計解析などによって処理されている場合には、その方法が適切であるかどうかについてもあわせて評価してください。

投稿規定の順守

本誌の投稿規定に従っているかどうかを確認してください。
査読に回されるより以前に発行元の編集スタッフによって一通りのチェックがなされていますが、軽微な不備とみなされた場合には、早急な出版のために査読を依頼することがあります。しかしながら、査読の結果、その不備が軽微なものではないと判明することがあるかもしれません。特に報告内容の評価に関わる場合には、点数を低くつけ、編集スタッフならびに編集委員会に知らせてください。

「目的と範囲」への合致

報告内容が本誌の「目的と範囲」に合致しているかどうかを評価してください。
優れた報告であったとしても、読者の関心とずれていると、それを読む人の数が少なくなってしまいます。場合によっては、他誌への投稿を勧める必要もあるかもしれません。
「目的と範囲」に合致していないが本誌で掲載する意義が高いと感じられた報告については、その旨をコメントで記載してください。編集委員会で協議のうえ、採択となる場合があります。

図の解像度

図や表の明確さ・読みやすさは、時に科学の正しさにとってとても重要です。不明瞭な画像は科学的真実を歪めてしまうかもしれません。
このことは報告の内容に直接関わる箇所に限りません。読みにくさを少しでも感じた場合には、点数を低くつけ、著者に高解像度の画像を請求するようにしてください。

先行研究の引用

本文中の注、ならびに文献一覧も重要な評価項目です。
明らかに他の著作を参考にしているにもかかわらず、その出典が明記されていない場合には、盗作とみなされることがあります。しかしながら、著者は故意にではなく、不注意によって引用を忘れたのかもしれません。非難するのではなく、コメントを利用して、著者の注意を促すようにしてください。
重要な先行研究に言及していない場合には、点数は低く評価されます。扱われているテーマにとって過不足なく引用されているかどうかを確認してください。
著者が知らない先行研究について、査読者が知っていることもあるでしょう。そのときには具体的に文献名を示し、それを参照するとどのように論文が改善されるのか具体的に教えるようにしてください。教育も本誌の目的とされています。

研究・出版倫理

研究・出版の倫理、あるいは法律や社会規範に反するような報告であると懸念された場合には、その旨を編集委員会に知らせてください。
報告内容は発行元と編集委員会によって協議され、必要であれば外部組織とも連携して対応にあたることになります。査読者自らが著者に連絡することはあってはなりません。

 

更新履歴
2019年7月9日 公開