校正=出版前の最終確認

論文がアクセプトされた後、発行物として世に送り出される直前に、著者は出版物の最終チェックをする機会(通常、雑誌の場合には1回のみ、単行本の場合には1~2回)を得ることができます。このとき出版社からは、掲載予定の発行物のレイアウトに合わせ文章を組み直された見本が送られてきます。これを、「校正刷」または「ゲラ刷」といいます。
校正刷を受け取った著者は、速やかに印刷ミス等がないかを確認し、出版社に返送しなければなりません。何らかの事情で指定された〆切までに返送できない場合は、出版社にその旨を至急連絡するようにします。
校正はかならず紙の上で行います(PDF等のデータで送られてきた場合も、一度紙にプリントアウトするのが望ましいとされています)。訂正する場合には、朱書ではっきりと書き込むようにしてください。それ以外の直し方をしてしまう(例えば、Word等のデータ上だけで修正する、鉛筆書きで修正指示を入れる)と、出版社や印刷所で見落とされ、直しの入らないまま出版されてしまうおそれがあります。
また、校正刷には、査読者や出版社編集スタッフから質問が書き込まれていることもあります。これらについても確認し、必要に応じて訂正するようにします。
出版プロセス全体から見ると、著者校正は査読の後に位置することになります。そのため、校正の段階で新しい知見を加えることは望ましい行為ではありません。同様の理由で、共著者の追加も避けたほうがよいと考えられます。論文投稿後・アクセプト後にこのような追記が必要と判明した場合には、校正を待たずに至急出版社に連絡し、判断を仰ぐようにしてください。
校正を終えてしまうと、すぐに印刷工程に入るため、その後の訂正は原則できなくなります。返送までの期間は短いですが、見落としのないよう慎重に行う必要があります。

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著者校正、なぜ必要?

しかし、なぜ校正をする必要があるのでしょうか? 投稿時の原稿を完璧に仕上げるようにすれば、それをそのまま印刷するだけでよいのではないでしょうか? 実のところ、自分の見落としを見つけることだけが、校正段階において著者に与えられた仕事ではないのです。
論文投稿後~出版までのプロセスを知っておくと、このことはよく理解できます。
まず、著者から投稿されアクセプトされた論文は、出版社の編集スタッフによって丹念にチェックされます。また、出版物のレイアウトに綺麗に収まるように、見出しや文字の指定を入れていきます。この工程には、雑誌の表記統一ルールに従って、字句の修正をすることも含みます。この作業は「原稿整理」とよばれています。
原稿整理がなされた原稿は、次に、印刷所へと受け渡されます。印刷所では、この原稿と著者から提出されたデータをもとに、専用の印刷機にかけられるデータへと変換する作業を行います。つまり、Word等のデータが、まったく別の形式のデータに変わることになります。
これらの作業を経てできあがった見本が、「校正刷」となります。したがって、著者が投稿した原稿と、校正時に送られた校正刷は、まったくの別物と考えたほうがよいことになります。データ変換時の文字化け、編集スタッフによる字句の指定ミスが生じているかもしれません。自分の論文の質を損なわないためにも、校正は丹念に行う必要があるわけです。
また、文字だけではなく、グラフや画像についてもチェックが必要です。特に紙で印刷されたものは、PCモニタで見たときとは色が変わっているのが普通です。読者に内容が正しく伝わるか、確かめるようにしてください。

校正刷の返送〆切は?:受領後48時間以内

校正のために著者に与えられた時間は、日本国内外問わず、また医学に限らず、「校正刷を受領後、48時間以内に返送」とされていることが多いようです(10ページ程度の一般的な論文の分量の場合)。
克誠堂出版(株)の場合には、この期間に輸送にかかる時間を加え、「弊社発送から約1週間後に必着」でご依頼させていただくことがほとんどです。
著者にとって、これはかなり短い時間と感じられるかもしれません。なぜ満足いくまでチェックさせてもらえないかというと、冒頭で述べたように、校正は出版プロセス全体の中の最後に位置づけられているからです。特に定期刊行物の雑誌の場合には、校正発送時には残された製作期間は残り少ない、ということがままあります。加えて、研究者の倫理として、出版リソースは無駄にしてはならないという考え方があります。校正刷の返却が遅れることは、他の論文の出版機会を失わせ、学界全体の停滞につながるおそれがあります。厳しい学会や出版社によっては、48時間以内に返送がなかった時点でその号への掲載を取り止め、とすることもあるようです。
学協会・出版社によって校正期間はまちまちですが、著者は「校正刷を受け取ったら可及的速やかに確認」を心がけておくのがよさそうです。

まとめ:著者校正はとても重要、しかし出版プロセスの中ではごく一部

著者は投稿した論文が、その内容が正しく伝わる形で出版されるか、丁寧な最終チェックをしなければなりません。
同時に、校正は、製作の作業・期間の中のごく一部にすぎないと意識しておくことも大事です。ヒューマンエラーの可能性を低くし、校正作業を楽にするためにも、論文投稿時に原稿の質をできるだけ上げておく心がけが必要と思われます。

▼参考文献
1)Lang TA,著(宮崎貴久子,中山健夫,監訳).11.学術誌に出版する方法.In: トム・ラングの医学論文「執筆・出版・発表」実践ガイド.東京:シナジー,2012:pp. 262–87.

作成日:2018年6月7日
公開日:2018年11月13日