臨床病理レビュー 特集第156号
高齢者の臨床検査値の見方・考え方

臨床病理レビュー 特集第156号

監修 佐守友博、高橋 浩
編集 ラボ検査研究会
ISBN
発行年 2016年
判型 B5
ページ数 106ページ
本体価格 2,500円(税抜き)


第1章
1.高齢者の臨床検査値に興味を持たれたみなさんへ(佐守友博)
2.高齢者の検査値に基準範囲はあるのか?(広山晶一)
3.臨床検体19項目のデータを俯瞰して(麻植芳郎)
4.臨床検体と健診検体の両データを見て(山口宏茂)

第2章
1.19項目の検査値の加齢変化
血球計数検査5項目 (血液中にある細胞成分の数や量)(島田一彦)
① RBC( 赤血球数)
② Hb( ヘモグロビン量)
③ Ht( ヘマトクリット値)
④ WBC( 白血球数)
⑤ PLT( 血小板数)
酵素活性検査4項目 ( 血清中に含まれる各種臓器で産生される酵素類の活性)(山本博昭)
⑥ AST( アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)
⑦ ALT( アラニンアミノトランスフェラーゼ)
⑧ ALP( アルカリ性フォスファターゼ)
⑨ GGT( γ – グルタミルトランスペプチダーゼ)
含窒素成分検査2項目(藤本一満)
⑩ UN( 尿素窒素)
⑪ CRE( クレアチニン)
脂質関連検査4項目 ( 脂質代謝を反映する血清中の脂質)(山村 満)
⑫ T-CHO( 総コレステロール)
⑬ TG( 中性脂肪)
⑭ HDL-C( HDL コレステロール)
⑮ LDL-C( LDL コレステロール)
蛋白検査2項目 ( 血清中に含まれる蛋白質の総量とアルブミン量)(藤本一満)
⑯ TP( 総蛋白)
⑰ ALB( アルブミン)
糖代謝検査2項目 ( 血糖値と糖化ヘモグロビンの量)(平井和美)
⑱ GLU( グルコース)
⑲ HbA1c( ヘモグロビンA1c)
2.高齢者の検査値(19項目)の傾向と考え方(佐守友博)
血球計数検査5項目
I 臨床検体では加齢により顕著な低下傾向を示す赤血球系3項目 (RBC,Hb,Ht)
II 臨床検体では加齢により軽度の低下傾向を示す血小板数 (PLT)
III 臨床検体では加齢による特徴的な変動のない白血球数 (WBC)
生化学的検査14項目
IV 臨床検体では加齢により上昇する3項目( ALP,CRE,UN)
V 臨床検体では加齢により低下する2項目( TP,ALB)
VI 臨床検体では加齢による低下に特有の性差を示す2項目 (LDL-C,T-CHO)
VII 臨床検体では性別により加齢変化に違いを示す3項目 (GGT,TG,HDL-C)
VIII 肝細胞障害を反映する2つの逸脱酵素( AST,ALT)
IX 糖代謝異常を反映する2つの検査( GLU,HbA1c)
さいごに
3.健康診断のデータからみた65歳以上の臨床検査値(山口宏茂)
4.これらのデータは臨床でどのように使えるか,期待できるか(高木 康 )
5.臨床検査の今日まで,そして,これから(高橋 浩)

資料編
1.施設間の検査データの安定性と互換性について(平井和美)
I 検体採取から測定までの各種保存法による測定値の安定性
II ラボ研各施設の測定値の互換性(クロスチェックによる一致度)
2.ラボ研と私-その生い立ちとこれからについて-(門田成喜)

この本は,高齢社会に突入した我が国の医療に資することを目的として書かれている。
臨床検査医学を研鑚し,多くの検査センターを牽引してきた臨床検査技師と臨床検査医が贈る,高齢者の臨床検査値の特徴と読み方を提示した一冊である。
臨床検査の標準化が進み,共用の基準範囲が40項目もの臨床検査に対し設定できるようになってきた時代をふまえて,まず,我々は検査センターに持ち込まれる検体の安定性と検査センター間のデータの互換性を確認する作業を行った。そのうえで検査センターに寄せられる膨大な数の検体のデータをまとめることで,高齢者の臨床検査値をどう見るかどう読むかを解説したのが本書である。
大小の病院や診療所から集められてくる検体のほぼ半分が66歳以上の高齢者の検体である。血液学的検査5項目と生化学的検査14項目の計19項目について,およそ163万テスト分の検討を行った。本書を読まれた方は今回検討したデータをみて,「高齢者は年齢と共にこういうふうに変化していくのだ」とか,あるいは「この検査項目でみると,こういうふうなデータの人達が長生きするのか」とか,「この検査値の高い人は生き残れないから,加齢とともに下がっているのかな」といった見方をしたり,「この検査項目は,加齢による変化がないんだ」とか,「若いときには性差があったのに加齢とともに男女差がなくなるんだ」といった見方をしたりするかもしれない。また,参考のために付表に記した各項目の年代別・性別の検体数をみて,「91 歳以上の検体数をみると,圧倒的に女性の方が多いのが判った。男性より女性の方が寿命が長いのを実感した。」などの見方をする人も出てくると思う。ぜひ,高齢者の検査成績の特徴を自分なりにとらえていただきたい。

日本の検体検査の約半数を請け負っている検査センターの膨大なデータをまとめることによって,いろいろな検討ができることをこの本が最初に証明したと考える。
今回はラボ検査研究会に所属する10社の検査センターの検査責任者全員で本書の製作を行った。匿名化したデータを持ち寄ることを検査センター内部の倫理委員会などで諮った結果,6 ~ 7 社からのデータを集めることができた。ラボ検査研究会の活動を陰日向になって支えてくださった歴代の日本衛生検査所協会近畿支部支部長ならびに本書の製作に当たり協力してくれた10社の経営陣に感謝したい。
これを機に多くの検査センターのデータをまとめて検討して得られた成績が,様々な知見となって臨床検査医学の裾野を拡げることになれば幸いである。

さいごに,この本の製作に当たり実際の編集作業を手伝っていただいた宇宙堂八木書店の社長八木秀志氏,担当の篠﨑 愛氏,執筆者と編集者の連絡や校正の労をとっていただいた臨床検査技師の土井三千子氏に深謝申し上げる。
2016 年10 月15 日
ラボ検査研究会顧問
日本臨床検査専門医会 前会長
日本食品エコロジー研究所
佐守 友博