心電図プロの見方が面白いほど見える本
スキ間で極意・学習編!!

著者 上嶋健治
ISBN 978-4-7719-0514-6
発行年 2019年
判型 B5
ページ数 190ページ
本体価格 5,600円(税抜き)
電子版 あり
医書.jp<電子版>
M2Plus<電子版>

第1章 較正・記録速度をチェック
章扉について
要点
1.心電図の記録に関するルール
1-1.記録紙の約束
1-2.記録の約束
2.心電図の誘導(電極)に関するルール
2-1.四肢の双極誘導と単極誘導
2-2.胸部の単極誘導
2-3.電極の色に関するルール
マーカーの解説
1.較正波に着目
2.紙送り速度に着目
3.心電図の波形・間隔の名称に関する約束事
この章のまとめ
参考文献
練習問題

第2章 心臓の電気的位置:電気軸と移行帯をチェック
章扉について
要点
1.電気軸の考え方
2.移行帯の考え方
マーカーの解説
1.電気軸の評価はI誘導とaVF誘導に着目
2.移行帯の評価は胸部誘導を上から下に
3.移行帯の評価には念のためR波の増高を評価
疾患:電気的位置異常を示す疾患
1.電気軸異常を所見とする疾患
1-1.左軸偏位を呈する疾患
1-2.右軸偏位を呈する疾患
2.移行帯異常を所見とする疾患
2-1.時計軸回転を呈する疾患
2-2.反時計軸回転を呈する疾患
2-3.R波の増高不良を呈する疾患
この章のまとめ
参考文献
練習問題

第3章 P波・PQ間隔をチェック
章扉について
要点
1.P波の形状の評価
2.PQ間隔の評価
マーカーの解説
1.まずI誘導のP波に着目
2.心房拡大の評価はV1誘導とⅡ・Ⅲ・aVF誘導に着目
3.さらにaVF誘導では
4.特殊なP波の形状(ペースメーカ心電図)
5.PQ間隔の評価はI・aVF誘導とV1誘導で十分
5-1.PQ間隔の延長
5-2.PQ間隔の短縮
疾患:P波やPQ間隔の異常を示す疾患
1.右胸心
2.心房拡大
2-1.右房拡大を来す疾患
2-2.左房拡大を来す疾患
3.異所性上室調律
4.ペースメーカ心電図
5.房室ブロック
5-1.1度房室ブロック
5-2.2度房室ブロック
5-3.3度房室ブロック(完全房室ブロック)
6.房室解離
7.早期興奮症候群
7-1.WPW症候群
7-2.LGL症候群
この章のまとめ
参考文献
練習問題

第4章 QRS波をチェック
章扉について
要点
1.脚ブロックの評価
2.心肥大の評価
3.異常Q波の評価
マーカーの解説
1.まずV1とV5誘導のQRS波のパタンに着目(脚ブロックの評価)
1-1.右脚ブロック:V1誘導でのrSR’パタン
1-2.左脚ブロック:V5誘導の結節性R波
2.次にV1とV5誘導のQRS波高に着目(心肥大の評価)
2-1.右室肥大:V1誘導のQRS波高に着目
2-2.左室肥大:V1とV5誘導のQRS波高を計測
3.最後に電気軸と移行帯に着目(異常Q波の評価)
疾患:QRSパタンに影響を与える病態や疾患
1.右脚ブロック
1-1.2束ブロック
1-2.ブルガダ症候群(特発性心室細動)
2.左脚ブロック
3.特殊な脚ブロック
4.右室肥大
5.左室肥大
6.心筋梗塞(陳旧性)の異常Q波の評価
6-1.前壁梗塞・中隔梗塞
6-2.側壁梗塞
6-3.下壁梗塞
6-4.後壁梗塞
7.肺血栓塞栓症
この章のまとめ
参考文献
練習問題

第5章 ST部分・T波・U波をチェック
章扉について
要点
1.ST低下(非貫壁性の心内膜下虚血など)の評価
2.ST上昇(貫壁性の重症心筋虚血)の評価
3.ST上昇(早期再分極)とJ波の評価
4.T波の高さ・深さの評価
5.QT間隔の評価
6.U波の評価
マーカーの解説
1.ST低下は,aVFとV5誘導に着目
2.ST上昇は,I,aVF,V1,V5の4誘導に着目
3.T波の増高と低下および陰性化もI,aVF,V1,V5の4誘導に着目
4.QT間隔の延長と短縮にはI,aVF,V5の3誘導に着目
5.虚血に関連したU波の出現にはV1(V2)とV5誘導に着目
疾患:ST偏位やT・U波に影響を与える病態や疾患
1.狭心症・無痛性心筋虚血(ST低下)
2.左室肥大によるストレインパタン(ST低下)
3.ジギタリス・電解質異常などの外的影響(ST低下)
4.心筋梗塞・冠攣縮性狭心症(ST上昇)
5.心筋炎(ST上昇)
6.早期再分極とJ波(ST上昇)
7.T波の増高と減高
8.陰性T波
9.QT間隔の延長と短縮
9-1.QT間隔の延長
9-2.QT間隔の短縮
10.虚血に関連したU波の出現
この章のまとめ
参考文献
練習問題

第6章 心拍数と脈の整不整をチェック
章扉について
要点
1.脈の整・不整
2.心拍数
3.不整脈の評価
3-1.期外収縮の評価
3-2.頻脈性不整脈の評価
3-3.徐脈性不整脈の評価
3-4.変動する不整脈の評価
マーカーの解説
1.心拍数の算出
1-1.300の法則
1-2.1500の法則
1-3.記録紙の最下段のマークにも着目
2.期外収縮に着目
2-1.期外収縮と正常心拍の間隔に着目
2-2.期外収縮の頻度に着目
3.頻拍に着目
4.徐脈に着目
5.変動する調律に着目
5-1.P波を伴い変動する調律
5-2.P波を伴わない変動する調律
疾患:脈の不整を呈する病態や疾患
1.期外収縮
1-1.心房期外収縮
1-2.房室結節期外収縮
1-3.上室期外収縮
1-4.多源性上室期外収縮
1-5.非伝導性上室期外収縮
1-6.変行伝導を伴う上室期外収縮
1-7.心室期外収縮
1-8.心室期外収縮の起源
1-9.副収縮
2.頻脈性不整脈
2-1.洞頻脈
2-2.上室頻拍
2-2-1.自動能性上室頻拍
2-2-2.リエントリー(回帰)による上室頻拍
2-2-3.房室結節回帰性頻拍
2-2-4.房室回帰性頻拍
2-2-5.変行伝導を伴う上室頻拍
2-3.心室頻拍
2-3-1.単形性心室頻拍
2-3-2.倒錯型心室頻拍(torsades de pointes:twisting of the points)
2-3-3.特発性心室頻拍
2-3-4.催不整脈性右室心筋症(ARVC)
2-3-5.頻脈性心室固有調律(AIVR)
2-4.幅の広いQRS型頻拍(wide QRS tachycardia)の鑑別
2-5.心室細動(ventricular fibrillation)
3.徐脈性不整脈
3-1.洞機能不全症候群(SSS)
4.変動する不整脈
4-1.洞不整脈
4-2.移動性ペースメーカ(wondering pacemaker)
4-3.心房細動(atrial fibrillation)
4-4.心房粗動(atrial flutter)
この章のまとめ
参考文献
練習問題

巻末資料:心電図の判読と重症度判定

序文に代えて

2016年4月に『ビギナーのための心電図便利帳』(最新医学社)という拙著を上梓した後,ご縁があって克誠堂出版の関貴子さんからお電話を頂き,編集部の吉原成紀さんとの二人三脚で『スキ間で極意!! いつでもどこでも心電図判読88問』という心電図の問題集を上梓することができました.医学書の堅苦しいイメージを払拭し,移動中や就寝前のひと時などで「スキ間時間にも読める気軽な医学書」いうコンセプトをもとに,詰碁や詰将棋の問題集を解くような感覚で心電図の判読技術(極意)を取得して頂きたいとの思いを前面に押し出してのことでした.一定の評価とそれなりの反響も頂きましたが,やはり問題集だけでなく,同時に判読のための最低限の知識の整理も必要という意識を持ち続けていたのも事実です.実際,『スキ間で極意~』の巻末には学習編としての第2段の出版を予告するなど,しかるべきテキスト作成の準備が行なわれていました.ただ,従来の各種疾患の心電図所見を記述していくタイプの教科書とは一線を画したいとの思いは強く,心電図波形の解説をするのではなく,心電図のどこをどう読むかというノウハウを中心とした教科書にしたいと考えました.まず,見落としがないようにするためには,P波からU 波までアルファベット順に判読するという視点です.さらに,本書を最後まで読んで頂くとお気づきになると思いますが「注目すべき誘導には偏りがある」という視点です.つまり,Ⅰ,aVF,V1,V5の4誘導に注目する頻度が高いのです.このポイントに気づき,情報量の多い誘導へと自然に目が動くようになれば,判読の極意は無事伝授されたものと思われます.
また,前著と同様に文体と内容に一貫性を保たせるために単著にこだわりました.そのため,今回も相応しい心電図を著者1人では収集することができず,多くの先生方から心電図のご提供を頂きました.宮城県成人予防協会中央診療所の佐藤文敏先生,北海道勤労者医療協会勤医協中央病院の鈴木隆司先生,協和会協立病院の岡島年也先生,京都下鴨病院の山下文治先生,武田病院健診センターの桝田出先生,京都府立医科大学の白石裕一先生,JA広島総合病院の藤井隆先生(国循のレジデント時代の貴重な心電図もご提供頂いたのですが,そのファイリングのよさに驚嘆しました)には,この場をお借りして厚く御礼申し上げます.また,既刊書やホームページからの図表の転載にご快諾を頂きました最新医学社の中西啓社長,南江堂の小立鉦彦社長,ハート先生こと心臓病看護教育研究会会長の市田聡先生(ホームページの引用許諾以外にも国循時代の貴重な心電図もご提供頂きました)にも深く感謝申し上げます.
今回の執筆過程においては,前著とは著者の所属も異なっているように,著者の公私にわたる環境が激変したことから思うように執筆が進まず,完成までの苦労は前著を大きく上回るものでした.そのような状況の中でも,吉原さんの読者視点からわかりやすさと正確さを追及しての建設的な助言は,大変有難いものでした.厚くお礼を申し上げます.
最後になりますが,本書が心電図の判読に携わる方々のお役に立ち,前著ともども心電図判読の腕試しにご活用頂ければ望外の喜びです.宜しくお願い申し上げます.

2018年10月  多くの感謝とともに
上嶋健治