“麻酔”迷宮オデッセイ
メカニズム探検ツアーにようこそ!


著者 廣田弘毅
ISBN 978-4-7719-0497-2
発行年 2018年
判型 B5
ページ数 497ページ
本体価格 3,900円(税抜き)
電子版 あり

M2Plus<電子版>

まえがき:麻酔科学は小説より奇なり
プロローグ

Chapter1 もう一つのEther Day─それは画家ロバート・ヒンクリーの物語─
Ether Dayを描いた男
パリのアメリカ人
再びボストンへ
Ether Dayの生き証人
エーテル特許訴訟裁判
解けない謎
最後の生き証人
本当のEther Day
神様からの贈り物
モリリンの歴史捜査
Morilyn is Back!
モートンの裏の顔
気化器のミステリー

Chapter2 どくとるとモリリンのタコツボ探検─麻酔メカニズム文献レビュー─
優れた麻酔科学者ほど聴衆を眠らせる
全身麻酔薬作用の拮抗〔論文1/論文2〕
コンピュータを麻酔する?
全身麻酔薬の作用を分類する〔論文3〕
意識のメカニズムにせまる
Tononi博士の思考実験〔論文4〕
脳内のネットワークを網羅的に調べる〔論文5/論文6〕
Goal directed therapyとしての全身麻酔
記憶と意識〔論文7〕
光で麻酔をコントロールする〔論文8〕

Chapter3 〈スピン・オフ〉麻酔科探偵モリリー・クイーンの冒険 第30話
逆Yの悲劇 絵と文:杉谷野 森子
初めての出張麻酔
テイク・オフ(離陸)
宿敵,現る
タービュランス(乱気流)
麻酔科医の逆襲
コード・ブルー
コマンダーは誰か
長期出張
ICU(集中治療室)へ入室
ICU入室第1病日
ICU入室第2病日
タービュランス・再び
ありえない光景
呼吸心停止
モリリーPC再起動
読者への挑戦状
合同カンファレンス
動かぬ証拠
ナイチンゲールの涙
ラスト・フライト
ランディング(着陸)

Chapter4 魔法の蒸しタオル─どくとるとモリリンの脳科学実験─
若きモリリンの悩み?
マスターの教え?
ブラック・モリリン?
海馬と全身麻酔
神経入力の変化による全身麻酔薬作用の修飾
ダーク・ベイダの過去?
ギョーザの研究?
絶賛失敗中?
イオンチャネルの使用依存性変化
失敗は成功の母?
ナゾは解けた!……のか?
ハックルベリーおじさん?
扁桃……体?
ギョーザの味は忘れない?
博士と助手の挑戦?
海馬ニューロンに及ぼす扁桃体の影響
扁桃体/海馬スライスにおける全身麻酔薬の作用
その説明,お見事です!
Bench to Bedside!
モリリンの凱旋!

Chapter5 モリリン,専門医試験を受ける
問題1/問題2/問題3/問題4
問題5/問題6/問題7

参考文献
あとがきとプチ解説
索 引

まえがき:麻酔科学は小説より奇なり
麻酔メカニズム研究は不遇です.Nature 誌やScience 誌に載るようなノーベル賞級の研究がたくさんあるにもかかわらず,麻酔メカニズムの講演やシンポジウムに麻酔科医は集まりません.なぜでしょう?
理由は簡単です.“手術室の司令塔”麻酔科医は忙しすぎて,麻酔メカニズムのことを考えるヒマがないのです.今日の手術室では,ハイリスク患者に対する複雑多様化した外科手術が当たり前のように行われています.麻酔科医は日夜,患者さんの疼痛を制御し,めまぐるしく変化する呼吸・循環動態を管理しながら“命のせめぎ合い”を展開しているわけで,とてもレセプタやチャネルなどミクロの決死圏まで,想いを馳せる余裕はないというのが現状でしょう.
しかしながら,麻酔科医も麻酔メカニズムに興味がないわけではありません.いや,麻酔科医でなくとも“麻酔がなぜ効くのか”という世界の七不思議の答えを知りたくない人がいるでしょうか.それならば,“絵空事のような”細胞・分子レベルの話と,手術室で目の当たりにしている“現実の”臨床麻酔の世界をリンクさせてみたらどうだろう……わたしはそう考えました.タテのものをヨコにする,あるいは切り口を変えると,難解だったものがおもしろくなるんじゃないか,無味乾燥がワクワクになるんじゃないか,というのがこの本の根底にあるコンセプトです.
そのパラダイム・シフトにあたり,再び登場してもらったのが杉谷野森子ちゃん(通称:モリリン)です.前作(参考文献1)ではミステリー好きのおしゃまな医学生だったモリリンは,いつのまにか医学部を卒業して,いっぱしの研修医になっていました.しかも何やら怪しげな呪文のようなミステリーをいろいろ探検してきたらしく,その経験が今回の麻酔メカニズム解明に役立つのかもしれません.
本書は医学の専門書ではありますが,専門用語には適宜脚注をつけましたので,専門外の一般読者も麻酔の迷宮を楽しめると思います.さあ,あなたもモリリンと一緒に,麻酔メカニズムの旅に出ませんか.麻酔科学は冒険と驚き,そしてミステリーに溢れていることに,きっとお気づきになることでしょう.麻酔メカニズムに花束を!
2018 年2 月1 日
廣田 弘毅
富山大学附属病院診療教授