症例から学ぶ！　集中治療の24レッスン

訳者序文ⅲ
序文 Foreword and How to Use This Bookⅸ
著者一覧 Author Informationⅹ
謝辞 Acknowledgements ⅺ
略語一覧 List of Abbreviationsⅹⅲ

Part Ｉ IntroductionSection 1 クリティカルケア概論
A Brief Introduction to Critical Care　2
Section 2 重症で状態が不安定な患者への挿管
Intubation of the Critically Unwell Patient　11

Part Ⅱ The CasesCase 1 昇圧薬の必要量が増している患者
The Patient with Rising Vasopressor Requirements　20
Case 2 呼吸困難の患者Ⅰ
The Patient with Respiratory Distress I　30
Case 3 呼吸困難の患者Ⅱ
The Patient with Respiratory Distress II　40
Case 4 腹痛と嘔吐を伴う患者
The Patient with Abdominal Pain and Vomiting　50
Case 5 交通事故に巻き込まれた患者
The Patient Involved in a Road Traffic Collision　60
Case 6 高熱の患者
The Patient with a Raised Temperature　69
Case 7 吐血の患者
The Patient with Haematemesis　80
Case 8 換気困難の患者
The Patient Who Is Difficult to Ventilate　88
Case 9 胸痛の患者
The Patient with Chest Pain　100
Case 10 院外心停止の患者
The Out-of-Hospital Cardiac Arrest Patient　110
Case 11 低ナトリウム血症の患者
The Patient with Hyponatraemia　117
Case 12 てんかん重積の患者
The Patient in Status Epilepticus　131
Case 13 低血圧の患者
The Patient Who is Hypotensive　140
Case 14 気管挿管後に状態悪化した患者
The Patient Who Deteriorates Post Intubation　150
Case 15 意識障害の患者
The Patient with Reduced Consciousness　158
Case 16 脳卒中の患者
The Patient Who had A Stroke　170
Case 17 胸痛と発疹のある患者
The Patient with Chest Pain and a Rash　182
Case 18 卒倒した若年患者
The Young Patient Who Collapses　192
Case 19 薬物過剰摂取の患者
The Patient Who has Taken an Overdose　204
Case 20 体調不良の産科患者
The Unwell Obstetric Patient　218
Case 21 心血管系 ICU の患者
The Patient in Cardiac ICU　228
Case 22 住宅火災の患者
The Patient Who was in A House Fire　242
Case 23 血小板数低値の患者
The Patient with Low Platelets　253
Case 24 COVID-19 の患者
The Patient with COVID-19　265

Part Ⅲ Test Yourself
各選択肢（A〜E）の正誤を選ぶ問題
Multiple Choice Questions　278
各選択肢（A〜E）から最も正しいものを選ぶ問題
Single Best Answer Questions　283
解答 Answers　288
訳者追加表　302
索引 Index　306

本書はぜひ集中治療室に1冊常備し，同じような症状がある患者が入室した時に研修医，指導医，また集中治療室の看護師の臨床推論に役立つ内容です。はじめから通して読むより，同じような症例を担当した時に読み進めると，対応の手助けとなること確実です。太田啓介先生が翻訳を決断されたのもうなずける良書です。
太田先生と私は静岡県立総合病院の集中治療センターで同僚で，集中治療センター立ち上げ当時から，診療の疑問が生じるとよく議論していました。その後，その蓄積が一気に爆発したかのように，数多くの優れた集中治療に関する書籍を執筆されました。
本書は，英国の2名の集中治療医による症例検討の実践書です。欧州では救急集中治療は麻酔科の先生方の担当のことが多く，蘇生ガイドラインでも優秀な麻酔の先生方が活躍されていました。
24の症例のタイトルは，「昇圧薬の必要量が増している患者」「呼吸困難の患者I，Ⅱ」「腹痛と嘔吐を伴う患者」「交通事故に巻き込まれた患者」「高熱の患者」「吐血の患者」「換気困難の患者」「胸痛の患者」「院外心停止の患者」「低ナトリウム血症の患者」「てんかん重積の患者」「低血圧の患者」「気管挿管後に状態悪化した患者」「意識障害の患者」「脳卒中の患者」「胸痛と発疹のある患者」「卒倒した若年患者」「薬物過剰摂取の患者」「体調不良の産科患者」「心血管系ICU の患者」「住宅火災の患者」「血小板数低値の患者」「COVID‒19 の患
者」です。全症例のタイトルをここで提示した理由は，もっともよく遭遇する症状名が網羅されていることがわかるからです。
最初は，研修医などの初学者への症例の解説書と高をくくり読み進めると，高度な内容へ誘われ，指導医としての考え方にまで広がります。
記述はABCDE のアセスメントから始まり鑑別診断に広がり，さらにアセスメントを行い，治療が進んでいき，反応を追っていくと，あたかも自分が担当しているかのように経過が展開されていきます。
すべてがうまく進むわけではなく，失敗した時にはどうするのかを考えさせられる場面も出てきます。COPD を有する例で本人家族との共同意思決定の結果，多職種カンファレンスを経て，一方通行の抜管（気管挿管の再挿管はない）でDNARとして死に至る。このように，終末期の倫理的な取り組みを考えさせられる例もあります。
また，超音波の活用，補助人工心臓の適用など最新の診療方法や，最新のガイドラインの紹介と実際の活用が示され，その転帰が述べられています。最終章には知識の確認のための問題集がつけられ，本文中で学んだことを十分に理解しているか自己再学習の機会が設けられています。至れり尽くせりのテキストです。
この書籍の翻訳を選択された太田先生に感謝します。幅広くお勧めしたい良書です。

日本蘇生協議会　野々木　宏

（「麻酔」74巻6号掲載）