眼瞼下垂レーザーミュラータッキングマニュアル

著者 宮田信之  村上正洋
ISBN 978-4-7719-0570-2
発行年 2022年
判型 B5
ページ数 112ページ
本体価格 7,000円(税抜き)
電子版 あり
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皮膚切開から組織の剥離へ流れるように術野を展開していく手さばき! 目標のMRDに1回でピタリとそろえるミュラー筋タッキング! 百戦錬磨の宮田信之DRのCO2レーザーを用いた「Extended Müller Tucking」。その手術の詳細を動画50編を交えて紹介します。「眼瞼形成手術に携わる医師に極めて有益なコツの『宝箱』になりました!」(共著:村上正洋)。

contents

はじめに①[宮田信之] ⅰ
はじめに②[村上正洋] ⅱ
動画の閲覧方法 ⅷ

part 1 総 論

Ⅰ CO2レーザーによる手術の歴史と展望 2
Ⅱ CO2レーザー機器の構造 2
Ⅲ CO2レーザーの特性と基本的な使用方法 3
1.設 定 3
2.実際の使い方 動画1~4 4
3.安全対策 6
1)角膜の保護 2)皮膚の保護 動画5 3)排煙対策 動画6
Ⅳ インフォームドコンセント 8
Ⅴ 眼瞼の解剖 8

 

part 2 CO2レーザー治療マニュアル ―眼瞼下垂の治療―

Ⅰ 眼瞼下垂とは?―Extended Müller Tucking(EMT):宮田法の開発― 12
Ⅱ 術前診察のポイント 12
Ⅲ 手術適応 13
Ⅳ 手術の実際 13
1.デザイン 13
2.麻 酔 動画7~8 15
3.皮膚切開・切除・止血 動画9・10 16
4.眼輪筋の切除,挙筋腱膜の剥離,ミュラー筋の露出 動画11・12 17
5.ミュラー筋タッキング 動画13 21
6.挙上の確認と縫合 動画14~16 24
Ⅴ 後療法 28
Ⅵ 長期経過のチェックポイント 28

part 3 特別講演:DR.宮田による疾患別の治療例

セッション1 眼瞼下垂 31
演題1    加齢性(退行性)眼瞼下垂 31
―特徴とポイント―
症例①85歳・女性 動画17・18 症例②78歳・男性 症例③91歳・女性 症例④72歳・女性
▪質疑応答 ▪座長の〆の一言!

演題2    ハードコンタクトレンズ長期装着による眼瞼下垂 35
―特徴とポイント―
症例⑤50歳・女性 症例⑥46歳・女性 症例⑦52歳・女性
▪質疑応答 ▪座長の〆の一言!

演題3    緑内障点眼薬による眼瞼下垂 39
―特徴とポイント―
症例⑧72歳・女性
▪質疑応答 ▪座長の〆の一言!

演題4    成人の先天性眼瞼下垂 42
―特徴とポイント―
症例⑨28歳・男性:右先天性眼瞼下垂 動画19・20
症例⑩18歳・女性:左先天性眼瞼下垂 動画21・22
▪質疑応答 ▪座長の〆の一言!

演題5    再手術例 45
―特徴とポイント―
症例⑪78歳・男性:手術に習熟していないと思われる医師による症例の再手術例 動画23
症例⑫65歳・女性:手術に習熟してると思われる医師による症例の再手術例 動画24
症例⑬70歳・男性:演者による再手術例 動画25
▪質疑応答 ▪座長の〆の一言!

演題6    前頭筋吊り上げ術を併用した症例 48
―特徴とポイント―
症例⑭78歳・女性:難症例(加齢性下垂) 動画26・27
症例⑮82歳・女性:難症例(先天性+加齢性下垂)
症例⑯45歳・女性:難症例(右先天性下垂再手術)
▪質疑応答 ▪座長の〆の一言!

演題7    若年者の眼瞼下垂 52
―特徴とポイント―
症例⑰18歳・男性 動画28・29 症例⑱20歳・女性 動画30・31
▪質疑応答 ▪座長の〆の一言!

演題8    薬剤の影響が考えられる眼瞼下垂 55
―特徴とポイント―
症例⑲30歳・女性
▪質疑応答 ▪座長の〆の一言!

演題9    重症筋無力症による眼瞼下垂 57
―特徴とポイント―
症例⑳64歳・男性
▪質疑応答 ▪座長の〆の一言!

演題10    長期経過観察症例 59
―特徴とポイント―
症例㉑62歳・女性 動画32・33 症例㉒60歳・女性 症例㉓58歳・男性
▪質疑応答 ▪座長の〆の一言!

セッション2    眼瞼痙攣 62
演題11    眼瞼痙攣を伴う眼瞼下垂 62
―特徴とポイント―
症例㉔28歳・女性:眼瞼痙攣 動画34・35 症例㉕72歳・女性:眼瞼痙攣,開瞼失行 動画36・37
症例㉖65歳・女性:眼瞼痙攣 動画38・39 症例㉗62歳・女性:眼瞼痙攣 動画40・41
▪質疑応答 ▪座長の〆の一言!

セッション3    眼瞼内反症 67
演題12    加齢性(退行性)下眼瞼内反症 67
―特徴とポイント―
▪手術適応 ▪術前診察 ▪手術の実際 動画42 ▪術後の後療法
症例㉘79歳・男性 動画43・44
▪質疑応答 ▪座長の〆の一言!

セッション4    眼瞼の腫瘍 71
演題13    眼瞼皮膚腫瘍 71
―特徴とポイント―
▪手術適応 ▪手術の実際 ▪術後の後療法
症例㉙68歳・女性 症例㉚62歳・女性 症例㉛58歳・女性
▪質疑応答 ▪座長の〆の一言!

演題14    眼瞼結膜腫瘍 75
―特徴とポイント―
▪手術適応 ▪手術の実際 動画45 ▪術後の後療法
症例㉜69歳・女性
▪質疑応答 ▪座長の〆の一言!

セッション5    その他 78
演題15    結膜弛緩症 78
―特徴とポイント―
▪手術適応 ▪術前診察 ▪手術の実際 動画46 ▪術後の後療法
症例㉝70歳・女性
▪質疑応答 ▪座長の〆の一言!

演題16    眼窩脂肪ヘルニア 82
―特徴とポイント―
▪手術適応 ▪術前診察 ▪手術の実際 動画47 ▪術後の後療法
症例㉞72歳・男性 症例㉟76歳・男性
▪質疑応答 ▪座長の〆の一言!

演題17    翼状片 86
―特徴とポイント―
▪手術適応 ▪手術の実際 動画48〜50 ▪術後の後療法
症例㊱70歳・男性
▪質疑応答 ▪座長の〆の一言!

まとめ  [村上正洋] 89
あとがき[宮田信之] 90
事項索引 94
著者紹介 97

はじめに①―「超」高齢化社会を見据えて[宮田信之]

高齢化社会といわれる現在,心筋梗塞や脳梗塞などの罹患,もしくは画像検査で発見された無症状の梗塞巣のため,抗血小板・抗凝固薬を内服している患者は少なくありません。循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)によると,手術に際し,大手術や血性合併症が起こった場合の対処が困難な体表の小手術では内服の中止などの対応が推奨されていますが,術後出血への対応が容易な体表の小手術では内服継続下での手術が推奨されています。眼瞼形成手術のすべてが体表の小手術に分類されるかについては議論がありますが,内服の中断により原疾患の再梗塞が1%の確率で発生すると指摘する報告もある中で,内服の継続下で手術する機会も多いのが現状です。
一方で術者としては,出血を抑え良好な術野で各組織を明瞭に確認しながら手術したい。なかには,止血困難のため本来簡単な手術が難症例になることもあります。このような状況の中で,CO2レーザーは救世主といえる存在です。CO2レーザーを使用して手術をすると,抗血小板・抗凝固薬を使用していてもほとんど出血なく手術ができる場合が多く,ストレスの面でも大きなメリットがあります。また,切開と止血が同時にできるので,バイポーラに持ちかえる必要がある従来の手術より時間の短縮が可能です。
眼瞼形成手術の代表疾患である眼瞼下垂では,上眼瞼を目標位置へ挙上する微調整が必要になりますが,そのためには鮮明な術野のもと,瞼板,眼瞼挙筋腱膜,ミュラー筋を同定することが絶対条件であり,切開と止血が同時にできる止血力の強いCO2レーザーの使用はとても有効です。さらに,下眼瞼内反,眼瞼皮膚腫瘍,結膜腫瘍,結膜弛緩症,眼窩脂肪ヘルニア,翼状片の手術にもCO2レーザーは有用です。
以上より,本書では眼瞼形成手術におけるCO2レーザーの使い方についてわかりやすく解説します。

 

はじめに②[村上正洋]

独学で眼瞼形成手術を始めた約22年前,形成外科医である私は,手術結果を出すことには苦労しましたが,形成外科医として身に付けた手技にて,手術操作自体に苦労を感じたことはありませんでした。特に止血に関しては,数をやればやるほど自然と出血しなくなるものです。
多くの形成外科医は,金属メスに勝る皮膚切開のデバイスはなく,剪刃を組織の硬さや緊張具合を感じながら手術することができる貴重なデバイスと考えています。アナログ的ですが,デジタル機器のCO2レーザーにはない長所といえます。したがって,私はCO2レーザーを眼瞼形成手術に使用することに対して積極的な意見をもっていませんでした。
宮田先生は,眼瞼形成手術を行う医師で知らない人がいないほど有名です。私も論文や学会発表で宮田先生のCO2レーザーを用いた手術手技は理解していましたが,形成外科医の先輩でもある宮田先生は,当然ながら切開,剥離,止血,縫合などの形成外科的基本手技はマスターしておられ,どうしてわざわざCO2レーザーを使用するのか疑問に思っていました。しかし,2017年9月に札幌にて開催されました第40回日本美容外科学会総会・学術集会で拝見した宮田先生のライブサージャリーで,私の考えは一変しました。CO2レーザーは確かに出血のコントロールに有効なデバイスですが,私が感動したことは,ハンドピースを持ち変えることなく皮膚切開から組織の剥離と流れるように術野を展開していく手さばきでした。さらに,左右差のある眼瞼下垂に対し,それぞれ12mmと14mmのミュラー筋タッキングを行い,1回でピタリと目標のMRDにそろえた豊富なご経験に裏打ちされた直感にも驚かされました。しかし,一方でなぜこのような手術ができるのか,私には多くの疑問が浮かびました。同時に,この結果は宮田先生にとっておそらく至極当然のことであるため,私たちが感じる疑問に宮田先生は気づいていないとも感じました。したがって,このノウハウを抽出できれば,それは眼瞼形成手術に携わる医師にとって極めて有益な情報になると強く思いました。
それから暫くしたある日,幸運にもその時に感じた疑問に対して答えをいただくとともに,ノウハウを抽出できるチャンスが私に訪れました。ライブサージャリーの後に宮田先生が著書を執筆され,さらにとても名誉なことなのですが,私に内容確認の依頼が来たのです。そこで早速,著書を拝読しましたところ,その第一印象は,「やはり宮田先生は疑問なく手術されている」ということでした。つまり,眼瞼形成手術を始める医師にとって知りたい内容が,百戦錬磨の宮田先生にとっては当然のことであり,多くが省略されていたのです。そこで私は,依頼された内容確認ではなく,質問役に回り,宮田先生が当然と思っているため記載されていない手術のポイントを抽出することに専念することとしました。そこを掘り起こせたら,この著書は手術のコツの宝箱になると確信したからです。また,ポイントごとに動画も入れ,これから本格的に眼瞼形成手術を始める先生方にとってわかりやすい内容になるよう工夫もしました。
デジタル機器特有のリスクもありますので,安易な気持ちでCO2レーザーを使用しないよう,最初に一言釘を刺しておきますが,ぜひ,本書を手に取って眼瞼形成手術の基本を学んでいただくとともに,CO2レーザーの扱い方を身に付けてもらい,今は宮田先生の「特技」といえる手技を,皆で標準的手技のひとつにしていきましょう。