あなたの外来で始める下肢静脈瘤治療

監修 細川 亙
編集 波多祐紀
ISBN 978-4-7719-0512-2
発行年 2019年
判型 B5
ページ数 172ページ
本体価格 9,200円(税抜き)
電子版 なし


●刊行にあたって(細川 亙,波多祐紀)
●AR機能の使い方

I 外来での管理
■日米の診療ガイドライン-Society for Vascular SurgeryおよびAmerican Venous Forumからの提言
-(此枝央人)
■エコー診断と記録(長谷川宏美)
■圧迫療法を正しく理解する(立花隆夫)
■下肢静脈瘤に伴う愁訴に対する漢方薬の有用性(林 忍)

II 逆流本幹の治療
■波長1470nmレーザーおよび高周波治療機器の治療成績(山本 崇)
■血管内焼灼術の手技:私の方法(山本 崇)
■非焼灼治療-シアノアクリレートによる血管内塞栓術-(榊原直樹)
■ストリッピング手術の役割(白方秀二)

III 局所的な逆流の治療
■一般的なフォーム硬化療法(柳沢 曜,黒川正人)
■可視化硬化療法(田代秀夫)
■不全穿通枝の処理(草川 均)

IV 重症例・困難症例
■難治性潰瘍を伴う重症例の治療戦略(菰田拓之)
■静脈奇形への対応(波多祐紀)

資料・サンプル集
■サンプル①:患者説明用紙(1)-あなたの今の静脈瘤【路線図】
■サンプル②:患者説明用紙(2)-タイプ別・重症度別の分類
■サンプル③:患者説明用紙(3)-血管内治療のようす
■サンプル④:エコー記録用紙
■サンプル⑤:手術記録用紙(血管内焼灼術)

下肢静脈瘤は古代の記録にも残る疾病で,直立歩行を始めた人類の宿命の病いであるのかもしれません。そして今後は健康寿命の延長ととともに,人生において直立する年月が長くなればなるほど,益々罹患率が上昇していくことでしょう。そういう意味では,古典的でありながら極めて現代的,さらには未来的な疾患であるともいえます。
下肢静脈瘤は古くからある疾患ですが,特に近年,エコーでの診断やレーザー機器による血管内治療など,診断や治療において劇的な変化が起こりました。しかし,レーザー機器による血管内焼灼術が2011年に保険収載された後も,より優れたレーザー機器の登場や高周波を用いた装置の出現など医療技術の進歩は著しく,日々の知識の更新が欠かせない分野です。この変化に対応して雑誌「形成外科」では,2014年に「下肢静脈瘤に対する診断・治療の最前線」,2016年には「レーザー普及後の下肢静脈瘤治療」と2 回の特集を組みましところ大変好評で,書籍化を求める声が多数寄せられました。
これまでも下肢静脈瘤関係の成書は少なからずありましたが,既刊本の多くは下肢静脈瘤専門施設による「一子相伝の指南書・指導書」としての性格が強く,下肢静脈瘤を取り巻く現状や今後の展望までを俯瞰的に扱った書籍は見当たりません。そこで,前述の2 つの特集からさらに新知見に基づいた加筆・修正を加え,本書を出版する運びとなりました。これまでのように単一の哲学を伝授するバイブルとは異なり,読めば各分野に関して気鋭の先生方と同じ視野が得られる「深く広く,一歩先を知ることができる書」を目指しました。
書籍化にあたっては2 つの工夫を加えました。1 つめは,IT時代に対応して,一部の図をスマホの動画で見られるようにしたことです。「百聞は一見にしかず」をぜひその目でお確かめください。2 つめは,忙しい外来で説明を楽に進められるよう,説明用図譜を付録として用意したことです。同じく効率化のために用意した検査・手術記録用紙の例と併せてご利用ください。
ベテラン医師も,これから参入しようとする医師も,ナースやパラメディカルも,それぞれの分野でそれぞれの立場で,今後増え続けるであろう下肢静脈瘤という国民病との戦いに勝利していただくための一助となれば幸いです。

2018年12月
大阪大学名誉教授・JCHO大阪みなと中央病院長
細川  亙
JCHO大阪病院形成外科
波多 祐紀

評者:寺師 浩人(神戸大学大学院医学研究科形成外科学)
今日からあなたも静脈通

「ついに出た!」が,私が本書を手にとった時の最初の印象です。
その次に,臨床写真の美しさが飛び込んできて,治療前と治療後にもはっきりと治療効果がわかることが斬新です。これまでの静脈疾患関連の教科書において,臨床写真はあっても疾患の紹介例が多く,検査をどのように施行し,何を考えながら系統だって治療が行われ,その後の後療法へとどのように展開していくのかを示すものはありませんでした。加えて,臨床写真をうまく補佐するかのように,とてもわかりやすいイラストレーションが随所に散りばめられています。極め付けは,寸時にダウンロードでき閲覧できる動画AR機能が搭載されていることだと感じました。ともすれば億劫となりがちなデュプレックス超音波検査所見を簡易に読みやすくさせていることも,本書を読み解くことに大いに貢献しています。まさに,多くの静脈疾患に対して,波多氏がいかに長く真摯に取り組んできたかを教えてくれる書となりました。そのような意味において,多くの臨床家にとって身近なのに地味で避けられがちな下肢静脈瘤治療が,魅力的なものと化す貴重な教科書が登場したといっても過言ではありません。
2006年に日本静脈学会がまとめた会員アンケート調査(静脈学17:251-257, 2006)においても,デュプレックス超音波検査施行率が80 %で,弾性ストッキングや弾性包帯着用率が70 %という結果ですので,いかに必須であるべきことが未施行であるかがわかります。このような状況下において,その必要性と有用性がわかりやすく伝えられているありがたい教科書が上梓されたことになります。
したがって,本書は形成外科医のための教科書ではありません。下肢静脈瘤にかかわる多くの診療科,検査技師,そして看護師にとって有用な書で,まさに書名にありますように,外来診療のデスク上にあるべきものに違いありません。最終章にある「資料・サンプル集」がそのことを訴えているかのごとくです。
今後,日本が超高齢化社会を迎え,同疾患に悩む患者さんが増加することが予想される中,多くの臨床家が本書を習読されることを祈ってやみません。波多先生・細川先生,そして各項目をご担当された先生方,ありがとうございました。(2019年 立春)