症例から学ぶ胸部画像診断

症例から学ぶ胸部画像診断

編集 酒井文和
ISBN 978-4-7719-0307-7
発行年 2006年
判型 B5
ページ数 268ページ
本体価格 4,600円(税抜き)
電子版 なし


第1章 びまん性肺疾患(1)
 びまん性結節陰影・粒状影(1)/荒川浩明…1
第2章 びまん性肺疾患(2)
 びまん性結節陰影・粒状影(2)/荒川浩明…13
第3章 びまん性肺疾患(3)
 びまん性すりガラス陰影/荒川浩明…23
第4章 びまん性肺疾患(4)
 びまん性consolidation/荒川浩明…39
第5章 びまん性肺疾患(5)
 モザイクパーフュージョン(mosaic perfusion)/荒川浩明…53
第6章 びまん性肺疾患(6)
 肺嚢胞性陰影/空洞性陰影/酒井文和…67
第7章 びまん性肺疾患(7)
 網状陰影/酒井文和…81
第8章 びまん性肺疾患(8)
 広義間質陰影/荒川浩明…95
第9章 気道病変(1)
 細気管支炎/酒井文和…107
第10章 気道病変(2)
 中枢気道の病変/酒井文和…117
第11章 限局性肺疾患(1)
 限局性すりガラス陰影/櫛橋民生,藤澤英文,門倉光隆…129
第12章 限局性肺疾患(2)
 充実性結節陰影/藤澤英文,櫛橋民生,門倉光隆…145
第13章 限局性肺疾患(3)
 結節の良悪性の鑑別/藤澤英文,櫛橋民生,門倉光隆…161
第14章 限局性肺疾患(4)
 無気肺/鈴木美奈子,藤澤英文,櫛橋民生,門倉光隆…177
第15章 限局性肺疾患(5)
 肺門部の異常/浅野信子,藤澤英文,櫛橋民生…191
第16章 縦隔・胸膜・胸壁疾患(1)
 前縦隔腫瘤/酒井文和…205
第17章 縦隔・胸膜・胸壁疾患(2)
 中縦隔,後縦隔腫瘤/酒井文和…221
第18章 縦隔・胸膜・胸壁疾患(3)
 びまん性胸膜肥厚/酒井文和…239
第19章 縦隔・胸膜・胸壁疾患(4)
 限局性胸膜病変/酒井文和…251

今回症例から学ぶ胸部画像診断を単行本として上梓することになった。本書の内容は,2003年から2004年にかけて日本 胸部臨床に連載した画像診断読影講座に加筆訂正を加えたものである。現在では,胸部疾患の診療において画像診断は必要欠くべからざるものとなっている。こ れには肺の高分解能CT(HRCT)の臨床応用とヘリカルCTの開発によるところが少なくない。実はこの2つの技術は本邦で開発されたものであり,そのこ とはわれわれが誇ってよい事実である。高分解能CTの開発と臨床応用は現福井大学医学部放射線医学教室の伊藤春海教授とその一門のなした世界的な研究であ り,本邦ではその伝統を引き継いで多くの胸部画像診断の研究業績があげられ,現在でも本邦の胸部画像診断のレベルは世界でもトップクラスになるといってよ い。この根底には,呼吸器診療と臨床研究にあたる呼吸器内科医,呼吸器外科医,病理医,放射線科医のたゆまぬ共同作業があったことは言うまでもない。

編者は,胸部画像診断の実際にあたって,なるべく理詰めで鑑別診断,診断を行うべきであると信じている。CTがさほど発展していない時代には,単純撮影 と断層撮影が胸部画像診断の主な手法であった。この時代にはしばしば経験にもとづく読影が行われ,鑑別診断の筋道を理論的に修練課程にある先生に伝えるの がなかなか難しかった。しかし,CTの進歩と広い臨床応用により読影の方法も整理され,所見の把握から鑑別診断の筋道を論理的に説明できるようになったと いうのが,編者の正直な感想である。もちろん呼吸器疾患の診療にあたっては,画像診断はその一つの診断手段であり,限界があることをわきまえて使用しなけ ればならない。

今回,執筆にあたる第一線で胸部画像診断に当たっておられる先生には,できる限り所見をどのようにとらえ,その所見をどのように解釈し,鑑別診断から診 断に至るかの筋道が分かるように記載をお願いした。読者は,一例一例の症例にあたってなるべく所見の拾い上げ,その解釈と鑑別診断に至る道筋を実地で学ん で欲しい。もし診断が誤っていた場合は,どこで誤ったのか,所見の拾い上げ方が悪かったのか,解釈に誤りがあったのか,最後の鑑別から診断に至る過程が悪 かったのか,分析できるような読影法を学んで欲しいと思う。もちろん実際の臨床の場ではこのような明快なプロセス通りには行かないであろうが,この作業の 繰り返しが読影力のアップにつながることはまちがいない。

本書では多岐にわたる胸部画像診断の領域を,荒川浩明先生,櫛橋民生先生,小生の3名を中心に分担執筆の形をとった。表現や記載などに統一を欠く部分が あればそれはひとえに編者の責任であることを明記しておく。本書が,呼吸器診療にあたる医師に画像診断に興味を持っていただく機会になれば編者の大きな喜びである。

2006年6月
酒井 文和