ADVANCE SERIES I-2 四肢の形成外科 最近の進歩:改訂第2版

ADVANCE SERIES I-2 四肢の形成外科 最近の進歩:改訂第2版

監修 波利井清紀
編集 児島 忠雄
著者 児島 忠雄
ISBN 978-4-7719-0297-8
発行年 2005年
判型 A4
ページ数 246ページ
本体価格 19,000円(税抜き)
電子版 なし


序文

四肢の再建外科において、形成外科の果たす役割は大きく、その領域に確固たる地位が築かれてきたといっても過言ではない であろう。はじめに、マイクロサージャリ―の進歩と、それに伴う遊離組織移植の採取部としての皮弁の開発が行なわれ、その結果、多くの皮弁の応用が可能と なった。その後、全身にわたる筋肉,筋膜、皮膚の血行動態の解明が進み、筋皮弁、筋膜皮弁の概念が導入された。四肢においても種々の筋皮弁、筋膜皮弁が開 発された。これらの進歩に基づいて1980年代から1990年代にかけて多くの手術法が報告された。また、1980年代よりtissue expanderが導入され、四肢にも応用されるようになり、再建方法も多様となった。四肢の再建外科、形成外科の分野において、本邦の形成外科学のレベ ルは高く、国際的にも高い評価を受けてきた。

このような状況を踏まえて“形成外科ADVANCEシリーズ”「四肢の形成外科:最近の進歩」が企画され、刊行された。しかし、初版刊行以来、早くも 10年が経過した。この10年余の間に、さらに新しい方法の開発など、その後の目覚しい進歩・展開がみられている。また、一部の執筆者も、この間に定年で 退職、あるいは第一線から退かれた。これらの事情を勘案して、執筆項目と執筆者に多少の変更を行い、四肢の形成外科、その後の進歩・新展開を取り入れた改 訂版の刊行が企画された。そこで、四肢のそれぞれの分野に造詣の深いエキスパートにご執筆をお願いした。

本書は初版と同様に、3部より構成されている。第1部の新しい手術法の四肢への応用には、悪性腫瘍切除後の四肢の機能再建、穿通枝皮弁の四肢への応用、 陰圧ドレッシングを用いた植皮片の固定法、四肢のVascular Malformationの治療方法の4項目を新たに設け、Tissue Expanderはリザーバードームを用いる新しい試みに変更された。第2部の 上肢の再建には、遊離皮弁・遊離複合皮弁による手指の知覚再建・爪の再建を血管柄付き遊離複合組織移植による手指再建としてまとめて述べていただいた。第 3部の下肢の再建では、皮弁・筋膜皮弁と筋膜皮弁による下肢の再建を三つの部位にまとめ、足部の再建は皮弁による足底の再建のみについて述べていただい た。

以上のように、今日における最新の四肢の形成・再建外科の理論と手技、症例が述べられており、初版と同様に、形成外科医の勉学の良き指針として利用され るものと確信する。外科手術の進歩・発展は日進月歩であり、今後も多くの新しい方法が考案され、報告されていくであろう。ある新しい方法が確立されたもの として広く受け入れられるためには、十分な客観性を持たなければならない。そのためには、多くの追試がなされ、長期の遠隔調査が行なわれなければならな い。このような観点からも今後の一層の発展の礎として本書が利用されることを期待したい。

おわりに編集に精力的に携われた克誠堂出版株式会社・大澤王子さんに厚くお礼を申しあげます。

2005年9月
埼玉成恵会病院・埼玉手の外科研究所所長
東京慈恵会医科大学客員教授
児島 忠雄

I.新しい手術法の四肢への応用
1.Tissue expander法の四肢への応用(竹内正樹,桜井裕之,磯野伸雄)
はじめに
A.術前評価
B.手術手技
C.術後管理
D.症例
E.考察
2.骨軟部悪性腫瘍切除後の四肢の機能再建(澤泉雅之,川口智義)
はじめに
A.概念
B.四肢の解剖・機能上の特性
C.術前の評価とプランニング
D.手術法の選択
E.術後管理
F.症例
G.考察
3.穿通枝皮弁の四肢への応用(光嶋 勲)
A.概念と歴史
B.術前の評価
C.手技
D.四肢に有用な代表的な穿通枝皮弁
E.術後の管理
F.考察
4.陰圧閉鎖ドレッシングを用いた植皮片固定法(小山明彦,本田耕一)
はじめに
A.概念
B.手技
C.術後管理
D.症例
E.考察
5.骨延長器の応用による再建(梶 彰吾)
はじめに
A.概念
B.術前の評価
C.手技
D.術後の管理
E.臨床症例
F.考察
6.四肢のvascular marformationの治療法(渡邊彰二,保阪善昭)
はじめに
A.診断方法
B.VMの治療法
C.治療法の選択
D.硬化療法の手技
E.症例
II.上肢の再建
7.手先天異常の治療の進歩(福本恵三)
はじめに
A.手先天異常治療の基本概念
B.分類
C.手術次期について
D.術前検査
E.術後管理
F.各疾患について
●合指症
●裂手症
●横軸形成障害合短指型に対する遊離趾骨移植術
●母指多指症

G.考察
おわりに
8.手熱傷の初期治療の進歩(菅又 章)
はじめに
A.手熱傷治療の概念
B.熱傷深度の判定
C.SDBの治療
D.DDBの治療
E.DBの治療
F.広範囲熱傷に伴う手熱傷
G.考察
9.皮弁による手指の再建(児島忠雄)
はじめに
A.概念
B.解剖
C.術前の評価
D.手技・術後管理・症例
E.考察
10.血管柄付き遊離複合移植による手指再建(柴田 実,城倉雅次)
はじめに
A.概念
B.術前の評価
C.手技
D.術後管理
E.症例
F.考察
11.前腕皮弁による手の再建(藤川昌和)
はじめに
A.概念
B.解剖
C.術前の評価
D.手技
E.術後の管理
F.臨床症例
G.考察
12.筋膜・中隔皮弁による肘関節部の再建(丸山 優,佐瀬道郎)
はじめに
A.概念
B.解剖
C.術前の評価,適応,特徴など
D.手技および症例
E.術後の管理
13.手指末節切断の再接着(石川浩三)
はじめに
A.概念
B.解剖
C.術前の評価
D.手術手技
E.術後の管理
G.考察
14.Degloving injuryの再建(平瀬雄一,山口利仁)
はじめに
A.概念
B.手技
C.症例
D.考察
III.下肢の再建
15.皮弁・筋膜皮弁による膝関節部の再建(林 明照,丸山 優)
はじめに
A.概念
B.解剖
C.術前の評価
D.手術手技
E.大腿二頭筋短頭筋弁による再建
F.術後の管理
G.考察
16.肩甲回旋皮弁を用いた血管柄付き肩甲骨による下腿の再建(関口順輔)
はじめに
A.下肢への遊離肩甲骨移植の概念
B.遊離肩甲骨の解剖
C.術前の評価
D.手術手技
E.術後の管理
F.症例
G.考察
17.筋膜皮弁による下腿の再建(佐藤兼重,木村直弘)
はじめに
A.概念
B.下腿皮膚の血管解剖
C.下腿の筋膜皮弁
D.症例
E.考察
18.筋膜皮弁による足関節部の再建(鳥居修平)
はじめに
A.概念
B.足関節周辺の血管解剖
C.術前の評価
D.手技
E.術後管理
F.考察
19.下肢リンパ浮腫の再建(前川二郎)
はじめに
A.概念
B.解剖
C.浮腫の術前評価と検査
D.LVAの手技
E.術後管理
F.症例
G.考察
20.皮弁を用いた足底の再建(多久嶋亮彦,波利井清紀)
はじめに
A.概念(再建方法の選択)
B.足底の解剖
C.術前の評価
D.手技
E.術後管理および二次的修正術
F.症例
G.考察
21.足趾先天異常の治療の進歩(吉田 純,石倉直敬)
A.多(合)趾症
B.合趾症
C.先天性絞扼輪症候群
D.第IV趾短縮症
E.巨趾症
22.陥入爪・巻き爪の再建(小坂正明)
はじめに
A.概念
B.爪甲の解剖と機能
C.評価法
D.治療の実際
●陥入爪
●巻き爪