ADVANCE SERIES I-8 画像診断と手術シミュレーション:最近の進歩

ADVANCE SERIES I-8 画像診断と手術シミュレーション:最近の進歩

監修 東京大学教授 波利井清紀
編集 藤田保健衛生大学教授 中島龍夫 ほか
著者 藤田保健衛生大学教授 中島龍夫 ほか
ISBN 978-4-7719-0169-8
発行年 1995年
判型 A4
ページ数 272ページ
本体価格 32,000円(税抜き)
電子版 なし


要旨

医療に関する画像化技術は,加速度的に進歩し,人体内部のようすが画像情報としてかなり正確に表現できるようになってきた。このような進歩を遂げたの は,アナログ画像のデジタル化により必要とされる情報を抽出してコンピュータ処理ができるようになって以来と思われる。X線CTの開発によりコンピュータ 断層の原理は画像診断の技術革新をもたらし,三次元CT,実物大立体モデル,バーチャルリアリティーとこの先どのような方向へ発達していくのか予測がつけ 難いほどである。形成外科で扱う疾患は体表とそれを構成する支持組織の変形であるが,その治療範囲は頭の先から足の裏までに及ぶ。そのため,従来の臓器別 を主体とした縦割りの知識だけではなく,関連各科のノウハウを総合した横割りの治療大系が必要とされる。具体的には身体の各部位の皮膚,軟部組織,骨,血 管など各種臓器の画像情報を総合的に把握して治療方針を決定する。また,これらの画像診断技術を利用して手術シミュレーションを行なうと難易度の高い手術 でも安全に行なうことが可能となり,経験の浅い術者でもコンピュータによりマニュアル化された術式を利用してイメージトレーニングを繰り返し,先人の経験 をある程度会得することができる。この画像情報はわかりやすいため,学生や患者家族への病状と手術法の説明にも有用である。

本書では,前半を画像診断,後半を手術シミュレーションの項目に分けた。画像診断の項では,CT,MRIなど通常の画像診断の成書での内容のほかに形成 外科医が必要としている画像診断知識は何か?を念頭におき,微小循環,血流測定,サーモグラフィー,モアレ,ビデオマクロスコープなどの項目を設けた。ま た,形成外科の手術では術前検討そのものがシミュレーションを行なっているわけであるので,本書ではコンピュータなどの先端技術を利用した方法だけでな く,X線単純撮影やペーパーサージャリーなどのアナログ手段によるシミュレーションにも重きをおいた。また前述のごとく形成外科には関連各科の知識が不可 欠である。そのため執筆陣には形成外科医だけでなく,画像診断,手術シミュレーションを専門とする他科の先生にも加わっていただき,内容の充実をはかっ た。この分野は発展途中であり,その進歩もとどまるところを知らない。したがって,本書を読んで現時点での最先端の内容を知ると同時に,今後の発展のため のきっかけをつかんでいただければ幸いである。

1995年11月
藤田保健衛生大学医学部形成外科
中島竜夫

Ⅰ.画像診断
1.X線単純写真診断(頭部・顔面)…渡辺 克益…3
A.臨床的意義/3  
B.繁用される撮影法/3  
C.骨折の単純X線診断について/5
D.顔面・頭蓋腫瘍の単純X線診断について/5  
E.臨床診断/5

2.軟部X線撮影,断層撮影…小川  豊…11
A.ゼロラジオグラフィー/11  
B.CR(computed radiography)/12  
C.断層撮影/17

3.血管撮影,DSA診断治療への応用…柿崎  大・伊藤 直記…19
A.概念/19  
B.解剖/19  
C.術前・術中・術後の評価/21  
D.手技(器械・器具を含む)/22
E.症例の供覧/24  F.考察/26

4.血流のイメージング…松崎 健司・西谷  弘…29
A.MRAの概念・原理/29  
B.各方法の検討/31  
C.臨床応用および問題点/32

5.CT診断の進歩…新橋  武・高木  博…36
A.ボリュームスキャンの基本原理/36  
B.ボリュームスキャンの特徴/37
C.ボリュームスキャンによる新しい三次元画像表示の試み/40  
D.考察/41

6.ヘリカルCTによる小児外表奇形の診断…小倉 祐子・片田 和廣…44
A.HES・CTにおけるデータ収集法と画像処理法/45  
B.頭頚部小児外表奇形におけるHES・CTの所見/45
C.HES・CTの利点/46  
D.HES・CTによる3D・CT像に関する注意点/51

7.三次元CTおよび実体モデルによる頭蓋顎顔面骨異常の診断…櫻井  淳・平林 慎一…54
A.3D・CTによる頭蓋顎顔面骨の異常の診断/55  
B.三次元実体モデルによる顔面非対称例の解析/59
C.考察/59

8.骨と軟部組織を総合した実体モデルによる頭蓋顎顔面形態異常の診断…中島 竜夫・中西 雄二…64
A.骨,軟部組織,血管を組み合わせた実物大立体モデルの作製法/66  
B.考察/66

9.MRI診断の進歩…辰野  聡・多田 信平…71
A.MRIの特徴/71  
B.MRI装置の進歩/72  
C.MRI撮像法の進歩/72  
D.MRI造影剤/79
E.MRIのアーチファクト/81

10.外表疾患におけるMRIの利用…小野 一郎…82
A.方法と対象/82  
B.結果/83  
C.考察/85

11.形成外科で行なう超音波診断…西村 正樹…89
A.超音波検査とは/89  
B.最近の皮膚および表在部位用の高周波超音波装置の特徴/90
C.代表的症例/90

12.光CT開発の現状と将来…山田 幸生…96
A.近赤外光による酸素化度の測定原理と酸素モニタ/96  
B.試作された光CT装置/97
C.生体内の光の伝播/99  
D.研究開発中の光CT手法/99

13.モアレトポグラフィーによる立体計測…古山 登隆…104
A.概念/105  
B.モアレトポグラフィーの長所と短所/105  
C.モアレトポグラフィーの種類/106
D.モアレ等高縞の形成/106  
E.モアレ撮影装置/107  
F.計測基準設定/108

14.サーモグラフィーの応用…新井 克志…109
A.概念/109  
B.手技/111  
C.症例の供覧/112  
D.考察/115

15.レーザー画像血流計による診断…山本 有平…117
A.特徴/117  
B.症例の供覧/118  
C.考察/124

16.微小循環系のイメージプロセッシング
―超高速度高感度ビデオシステムを用いた血球速度計測―…関塚 永一・大塩  力・南谷 晴之…126
A.腸間膜微小循環系の赤血球速度解析/127  
B.臓器微小循環におけるFITC標識赤血球螢光画像の解析/131
C.腸間膜集合リンパ管収縮動態とリンパ球速度計測によるリンパ流量の経時的解析/133
D.腸間膜微小循環における白血球動態の解析/135

17.ビデオマクロスコープの応用…中村 雄幸…138
A.ビデオマクロスコープの概要/138  
B.手術用ビデオ顕微鏡への応用/142  
C.考察/144

Ⅱ.手術シミュレーション
18.手術シミュレーションの開発と応用…安田 孝美・横井 茂樹…151
A.手術シミュレーションの研究動向/151  
B.CGによる手術シミュレーション/152
C.VRによる手術シミュレーション/154

19.ボリューム・ビジュアライゼーションと手術シミュレーション…周藤 安造…161
A.ボリューム・ビジュアライゼーションの概要/161  
B.ボリューム・ビジュアライゼーションの手法/163
C.シミュレーション機能と臨床応用/165

20.3D・CTによる頭蓋顎顔面外科の手術シミュレーション…福田 慶三…173
A.三次元画像装置/173  
B.症例の供覧/174  
C.考察/175

21.血管造影と3Dカラーデジタイザーによる皮弁その他の手術シミュレーション…丸山  優・林  明照…180
A.血管造影/180  
B.三次元カラーデジタイゼーション/183  
C.考察/187

22.皮弁のコンピュータシミュレーション
―有限要素法を用いて―…秋元 正宇…190
A.有限要素法の皮膚への適用/190  
B.解析プログラムと解析の実際/192  
C.有限要素法の限界と将来/198

23.家兎耳介チェンバー法での遊離皮弁内微小循環のシミュレーション
―動静脈瘻を用いた組織移植について―…鈴木 義久・鈴木 京子…200
A.動静脈瘻を血液流入路として用いる方法/201  
B.動静脈瘻を血液流出路として用いる方法/205

24.ナビゲーションシステムの形成外科への応用…大久保栄治・大森喜太郎…209
A.ニューロナビゲータとは/209  
B.術前の準備/210

C.ニューロナビゲータの使用法/210
D.ニューロナビゲータ使用の現状と将来性および問題点/211

25.レーザー計測装置による軟部組織の手術シミュレーション
―小耳症耳介形成術への応用―…金子  剛・藤野 豊美…213
A.小耳症耳介再建術におけるコンピュータシミュレーション手術の意義/213
B.レーザー光利用三次元曲面形状計測装置/214  
C.耳介形成術/216  
D.症例の供覧/216  
E.考察/218

26.レーザー計測装置の顔面骨切りへの応用…小坂 正明・上石  弘…222
A.表面計測法の変遷/222  
B.原理と特性/223  
C.利点/223  
D.欠点/224  
E.症例の供覧/225
F.考察/225

27.顎矯正手術における手術シミュレーション
―セファログラムと咬合モデルを中心として―…平野 明喜…228
A.方法/228  
B.症例の供覧/231  
C.考察/234

28.切削法を用いた三次元実体モデルによる手術シミュレーション…今井 啓介・田嶋 定夫…237
A.システムの概念/237  
B.手技/237  
C.症例の供覧/240  
D.考察/242

29.光造形実体モデル(光硬化樹脂モデル)
―その概要と手術シミュレーションへの応用―…平林 慎一・櫻井  淳…244
A.システムの概要/244  
B.光造形実体モデルの特長/246  
C.症例の供覧/247  
D.問題点と今後の展望/249

30.画像診断と手術シミュレーションの歴史,現状,将来展望…中島 竜夫…252
A.X線診断/252  
B.血管撮影/253  
C.血流測定/253  
D.超音波検査/253  
E.手術シミュレーション/254

索  引…257

中島 龍夫