眼の形成外科 形成外科手術手技シリーズ

眼の形成外科 形成外科手術手技シリーズ

編集 筑波大学教授 添田周吾
ISBN 4-7719-0124-4
発行年 1993年
判型 B5
ページ数 258ページ
本体価格 14,100円(税抜き)
電子版 なし


序…添田周吾
I.眼窩・眼瞼の解剖…田邊吉彦/1

A.眼窩の解剖/1
1.骨性眼窩/1 2.眼窩脂肪と結合織/5 3.眼窩の血管系/6 4.眼窩の神経/7
B.眼瞼/8
1.眼瞼の外観/8 2.眼瞼の二層構造/10 3.眼瞼の構成要素/10 4.導涙系/12 5.眼瞼の血管/13
II.眼瞼再建の基本手技…添田周吾/15
A.前葉の欠損および眼瞼縁の欠損/15
1.縫合法/15 2.Z-plasty/17 3.植皮/20 4.瞼板縫合法tarsorrhaphy/24 5.局所皮弁/25
B.全層欠損の再建/36
1.上眼瞼の再建/37 2.下眼瞼の再建(前葉と後葉を別々に作製する方法)/41 3.内眼角部の再建/46 4.その他の方法/47
III.眼瞼の外傷・疾患/51
1.外傷性眼瞼欠損…大浦武彦/51
A.新鮮外傷の取り扱い方/51
B.外傷性眼瞼欠損/54
1.前葉欠損(瞼板に達していない欠損)/54 2.眼瞼全層欠損(瞼板に達する欠損)/55 3.Switch flapの計画と手術手技/58
C.外傷性涙道損傷/61
1.涙器の解剖と生理/61 2.涙道の損傷/62

2.眼瞼の熱傷と瘢痕の治療…平山峻/66
A.眼瞼の特異性/67
1.眼瞼解剖上の特徴/67 2.東洋人と西洋人の眼瞼の相異/68
B.眼瞼熱傷および兎眼予防法/70
1.新鮮熱傷型/70 2.特殊熱傷/70
C.熱傷後の瘢痕,瘢痕拘縮/72
1.軽度瘢痕形成/72 2.眼瞼の植皮術/72
D.兎眼の治療法/84

3.腫瘍(母斑,良性腫瘍,悪性腫瘍)…添田周吾/87
A.母斑および良性腫瘍/87
1.色素性母斑/87 2.太田母斑/91 3.血管腫,リンパ管腫/92 4.眼瞼黄色腫/95 5.皮様嚢腫/95 6.神経線維腫/96
B.悪性腫瘍/96
1.基底細胞癌/96 2.有棘細胞癌/105 3.マイボーム腺癌/106 4.黒色腫/107

4.眼瞼奇形…田邊吉彦/109
A.先天性内反症/109
B.先天性外皮症/111
C.瞼裂縮小症/112
D.先天性眼瞼欠損/115
E.先天性眼瞼後退/117

5.眼瞼下垂…岡田忠彦/120
A.眼瞼下垂の種類と手術の適応/120
B.術前検査/121
C.眼瞼挙筋に対する各種手術法/121
1.結膜側からの手術法/122 2.皮膚側からの手術法/128 3.両側からの手術法/130 4.眼瞼挙筋短縮による手術症例/131 5.Fasanella-Servat法/131 6.筋膜利用の手術法/132

6.顔面神経麻痺に対する眼瞼の形成術…上田和毅・波利井清紀/134
A.顔面神経麻癖による眼瞼部の障害/134
1.他覚症状/134 2.自覚症状/135
B.治療/136
1.静的手術(static operation)/136 2.動的手術(dynamic operation)/143
IV.眼窩部の骨折と奇形/155
1.眼窩の骨折…渡辺克益/155
A.眼窩周囲骨折の解剖学的要点/155
B.眼窩周囲骨折の分類/156
C.眼窩骨折の症状と診断/156
D.合併症/156
E.X線診断/157
F.治療の原則/158
G.頬骨骨折/159
1.頬骨分離型骨折/159 2.頬部粉砕型骨折/162
H.その他の眼窩縁部骨折/162
1.眼窩上縁骨折/164 2.眼窩内側縁骨折/164
I.眼窩壁部の単独骨折(blowout fracture)/164
1.症状と診断/164 2.治療法/166

2.眼窩の奇形…大森喜太郎・上地貴/172
A.眼窩離開症/172
B.眼窩離開症修正術小歴/173
C.眼窩間の狭小化(orbital hypotelorism)/174
D.眼窩形態の異常/175
E.眼窩離開症に対する骨切り術/175
1.麻酔/175 2.手術/176
F.症例/181
V.義眼床の再建…冨士森良輔/185

A.義眼床の収縮(contraction of eye sockets)/185
B.Skin socket,dry socket/185
C.義眼陥凹(anophthalmic enophthalmos)/187
1.眼窩内容の増量/187 2.眼窩縁およびその周辺の増量/190
D.上眼瞼下垂/194
E.下眼瞼の沈下(lower eyelid ptosis)/194
F.前頭―眼瞼溝の陥凹(fronto-palpebral sulcus depression,supratasal depression)/196
1.義眼の調整/196 2.眼窩内充填,組織,インプラントの埋植/196 3.上眼瞼の充填/196
G.眼瞼内反(entropion)/199
VI.眼瞼の整容外科…平賀義雄/203

A.重瞼,内服角部の矯正/203
1.重瞼/203 2.内眼角形成術/212
B.眼瞼の皺伸ばし/216
1.術式選択の考え方/216 2.手術手技/217
C.Baggy eyelidsの治療/224
1.上眼瞼のbaggy deformity/225 2.下眼瞼のbaggy deformity/225
D.症例供覧/226
VII.眉毛の再建…中山凱夫/235

A.正常な眉/235
B.再建法について/236
1.Z形成術/236 2.植毛術/236
C.再建法の選択について/242
索 引/243

「目は口ほどにものを言い」,「目から鼻に抜ける」,「目を皿にする」など,広辞苑で引くと目が頭についた言い回しは数十にのぼる。これが口だと目の半分もなく,鼻はもっと少ない。顔の中でも目がいかに表情に大切かを示すものであろう。目という時はやはり,広辞苑によると眼球と眼瞼を含めたものであり,目の字そのものが眼瞼があいて黒目がある状態からできている。

眼瞼の形成手術は古くから,実に多数の方法が報告されている。これも一つには,眼が機能上も表情の上でも,さらには美容の上でも重大なポイントであるとともに,眼瞼は血行に富む組織であるため,皮弁や遊離移植がよく生着することも関係している。

歴史的に見ても,多くの皮弁や植皮はまず眼瞼で用いられ,それから体の他の部分に応用されている例が多い。これは別の見方をすると,眼瞼の形成手術では新しいと思ったことも,よく調べると似た方法がずっと昔に報告されている例が多いことにもつながる。また逆に,細かいところの術式の変化を一つの新しい方法として報告する傾向にもなる。眼瞼の形成手術の大部分の例は,基本となる再建術式をしっかりと身につけていれば,治療はまず不自由なく完全にできると考えられる。

本書では多くの術式を網羅するよりは,基本的な術式をよく理解できるように心掛けてある。さらに,本書はアトラスとは銘打たなかったが,それと同じような役割を果たせるように,症例の写真や術式の図をできるだけ多数のせて,読者の理解と日常の臨床に役立つようにしたことである。実際の症例の写真があれば,似たような例のあった時に参考になるとともに,その方式でどんな結果が得られるかを明確に知ることができ,術式の選択にも大いに役立つはずである。

眼瞼・眼窩の形成手術には,以前には考えられなかったように大きく進歩し変化した分野もある。遊離皮弁や頭蓋顎顔面の骨切り,さらに診断におけるCTなど,日進月歩であり,これに遅れずについていくのも実は容易でない時代である。古くからの基本術式とともに,それらの進歩にもできるだけ対応するように,各執筆者に心がけて頂いた。

眼瞼・眼窩の形成手術については,すでに欧米には多数の成書がある。最近はわが国でもこれに関する本がいくつか刊行されている。いずれも特色のある本であるが,このような時期にあえて本書を世に問うゆえんは,基本手技を重視して,これを見ればまず日常の手術治療に困ることはないものを作りたいと考えたからである。また,眼瞼・眼窩の形成手術に携わる方には,その専門分野の如何にかかわらず,ごく初心の人も十分理解でき,かつ翌日からの治療にすぐ役立つものと信じるからである。

1992年12月14日
添田周吾