臨床病理レビュー特集第157号
コンパニオン診断の進展 2016-2017 - 個別化医療の新展開に向けて -

臨床病理レビュー特集第157号
監修 登 勉
編集 (協力)日本遺伝子診療学会、遺伝子診断・検査技術推進フォーラム企画推進委員会
ISBN
発行年 2016年
判型 B5
ページ数 110ページ
本体価格 3,200円(税抜き)


はじめに(登 勉)巻頭
I.遺伝情報の取扱いをめぐる最近の動向
1.無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)の現状と今後の課題(関沢明彦)
I.無侵襲的出生前検査 : 母体血漿中cfDNA を用いた検査の歴史
II.母体血漿中胎児 cfDNA の由来
III.新しい出生前遺伝学的検査 : 母体血胎児染色体検査
( non-invasive prenatal genetic testing: NIPT)
A.母体血胎児染色体検査法の開発
B.MPS 法を用いた母体血胎児染色体検査法の原理
C.母体血胎児染色体検査法の検査精度
D.我が国における母体血胎児染色体検査の現状
E.母体血胎児染色体検査法の発展性
IV.母体血胎児染色体検査での遺伝カウンセリング
V.我が国における母体血漿 cfDNA を用いた胎児染色体検査の今後
2.日本 HBOC コンソーシアムの活動状況(新井正美・他)
I.JHC の概要
II.全国登録事業
A.測登録の概要
B.登録参加の実際
C. 登録事業の課題(FAP の登録と比較して)
D.登録事業の基本的なコンセプト
III.教育セミナーなどの普及活動
A.セミナーの概要
B.ニュースレターの発行や学術集会
3.遺伝子検査ビジネスの規制をめぐる課題(武藤香織)
I.個人遺伝情報取扱事業者への規制
A.個人情報保護法と個人遺伝情報ガイドライン
B.個人遺伝情報ガイドラインの特徴
II.NPO 法人個人遺伝情報取扱協議会による自主規制
A.「 個人遺伝情報を取り扱う企業が遵守すべき自主基準」の策定
B.体質遺伝子検査分野をめぐる諸問題
III.まとめ
4.ゲノムリテラシー向上の取り組み(櫻井晃洋)
I.医療者のゲノムリテラシー
A.医学部卒前教育
B.看護職者の認識
C.医師以外の医療職者の卒前教育における遺伝医学教育
II.一般市民のゲノムリテラシー
A.意識調査
B.学会を中心とした取り組み

II.コンパニオン診断( 薬) の現状と課題
1.リキッドバイオプシーの遺伝子変異検出における臨床有用性(渡辺玲子・他)
I.BEAMing Degital PCR 技術(BEAMing 法)の特長
II.大腸がんにおける RAS 遺伝子変異検出の有用性
A.抗EGFR 抗体薬治療と大腸がんRAS 遺伝子設
B.BEAMing 法を用いたRAS 遺伝子変異検査の有効性
III.今後の展望
2.臨床検査へのNGS やマルチマーカー検査導入の課題(別府弘規)
I.検査の品質保証
II.結果報告
III.情報管理とセキュリティ
IV.コスト
V.専門的人材の育成
VI.まとめ
3.製薬企業におけるコンパニオン診断薬開発のチャレンジと対策(廣橋朋子)
I.新薬と新規コンパニオン診断薬を同時開発する際のプロセスと課題
II.新薬と新規コンパニオン診断薬承認後の課題-後発コンパニオン診断薬の必要性-
III.診断薬の規制区分の課題
4.コンパニオン診断薬開発の現状と課題に関するアンケート調査の概要(鈴木孝昌)
I.背景
II.企業向けアンケート調査
III.アンケート結果
IV.アンケート結果から分かってきたこと
V.現状を踏まえた将来への提言

III.トピックス
エクソソームの診断・治療への応用(門田 宰・他)
I.エクソソームの特性
II.エクソソームのバイオマーカーとしての役割
III.エクソソームの治療薬としての可能性

IV.企業による取組み
1.個別化医療のための全自動クリニカルPCR 装置(天野雅彦)
I.臨床検査におけるエラー
II.臨床検査における品質保証
III.全自動解析装置
IV.小型全自動装置の可能性
V.課 題
A.装置と試薬のバランス
B.製品(ロット)間差の最小化と出荷基準のバランス
C.製品(ロット)間差の最小化と製造適正のバランス
D.検査ロバスト性の向上と誤判定抑止のバランス
E.アプリケーションの拡大
2.ロシュのシークエンシングにおけるビジョンと今後の製品展開(田中政道)
I.ロシュのシークエンシングにおけるビジョン
II.ロシュのシークエンシングにおける歴史
III.今後の製品展開
3.次世代シークエンス:Now(石倉清秀)
I.NGS が遺伝子検査にもたらしたもの
II.NGS ベースでの遺伝子解析の実際
A.エクソーム解析用キット
B.RNA シークエンシング:TruSeq RNA Access ライブラリー調製キット
C.カスタムパネル:TruSeq Custom Amplicon Low Input
III.Precision Medicine に向けて
IV.NGS の体外診断薬
V.LDT: Laboratory Development Test

おわりに(前川真人)

参考資料
ゲノム医療実現推進協議会中間とりまとめ(平成27 年7 月)

日本遺伝子診療学会 遺伝子診断・検査技術推進フォーラム企画推進委員会が公開シンポジウムをコクヨホール(品川)で初めて開催したのは、2011 年12 月9 日(金)でした。その後、毎年12 月第2 金曜日を中心に開催することが恒例になりました。公開シンポジウムの企画内容は、株式会社宇宙堂八木書店/ 臨床病理刊行会 編集部長の田中健治氏の強力な支援により、「臨床病理レビュー特集号」としてトピックスや参考資料を加えて刊行されてきましたが、昨年の公開シンポジウムをより豊かにした特集号「コンパニオン診断の進展2016-2017 -個別化医療の新展開に向けて-」が刊行の運びとなりました。
2011 年以降を振り返っても、個別化医療の進展は予想以上の速さです。オバマ米国大統領は昨年の一般教書演説でPrecision Medicine Initiative(PMI)を発表し、短期目標として「より良い癌の治療法の開発・提供」を掲げました。そして、本年(2016 年)1 月12 日、彼の大統領在任最後の一般教書演説では、Cancer Moonshot Initiative の司令塔に昨年息子を脳腫瘍で亡くしたバイデン副大統領を指名し、癌の治癒に向かって、先ずはmanageable chronic condition にするための取組が既に開始されています。昨年のPMI では、「規制の近代化」の1つとして「次世代シークエンサー(NGS)技術の評価法」が目標とされていましたが、FDA はNGS に関するガイダンス案作成のためのワークショップを数回開催しています。
一方、わが国では、健康・医療戦略(2014 年7 月22 日閣議決定)でゲノム医療の実現に向けた取組が掲げられ、健康・医療戦略推進本部(本部長:内閣総理大臣)の下に健康・医療戦略推進会議が設置されました。この推進会議の下には7 つの協議会とタスクフォースがあり、その1 つであるゲノム医療実現推進協議会(2015 年1 月設置)は4 回の会議の後、2015 年7 月に「中間とりまとめ」を発表しています。同年9 月7 日、厚生労働省はゲノム医療実現推進本部を設置しましたが、「欧米
に比べて実用化に向けた取組が出遅れており、実用化を推進する必要がある。このため(中略)今後の取組方針などの検討を行う」というのが設置趣旨です。ゲノム医療実現推進協議会の下に設置した「ゲノム情報を用いた医療等の実用化推進タスクフォース」の第1回会議が同年11 月17 日に開催されました。
わが国では、取組方針を検討するために設置された多くの(屋上屋を重ねた?)会議で、関係団体からの委員がそれぞれの立場で意見を出し、その結果として総論的な方針が出来上がり、方針の具体化には予算の獲得から始めなければならないというパターンになることが危惧されます。
オバマ大統領の一般教書演説では、PMI の取組内容と具体的な予算が同時に発表されましたが、わが国で同じことができないのは政策決定の仕組みの違いが理由でしょうか? 健康・医療戦略は閣議決定されていますから、政権が替わってもこの大方針には変化がありません、しかしながら、最も恐れるのは、役所の担当者の交替に合わせて「ゲノム医療実現推進」がバブルの如く萎んでしまうことです。
本特集号のサブタイトルになっている「個別化医療の新展開に向けて」には、ゲノム医療の根幹となる診断・検査技術の進歩と臨床応用に対するフォーラム企画推進委員会の決意の一端が表れているように思います。本特集号の内容が、昨年来のゲノム医療、個別化医療に関する動向と近未来の理解の一助になれば幸いです。
日本遺伝子診療学会
遺伝子診断・検査技術推進フォーラム担当理事
登  勉