日めくり麻酔科エビデンスアップデート2
~1日1つ,3カ月で100の知見を得る~

日めくり麻酔科エビデンスアップデート2
監修 山蔭道明
編集 新山幸俊
ISBN 978-4-7719-0508-5
発行年 2018年
判型 B5
ページ数 258ページ
本体価格 5,700円(税抜き)

1 遺伝子と麻酔(志賀俊哉)
①慢性術後疼痛における脳由来神経栄養因子遺伝子の役割
②分娩第I 期の頸管拡大に伴う疼痛は,ADRB2 遺伝子の多型で説明できる
③TACR1 遺伝子多型と術後悪心・嘔吐の関係
④遺伝的変異が心臓手術後の出血リスクに及ぼす影響
⑤周術期の昇圧薬の使用とGly16 アレル遺伝子多型

2 気道管理(鈴木昭広)
①麻酔科医の敵,挿管困難とマスク換気困難:そもそもその存在を予測できるという幻想は捨てるべき?
②成人病棟で院内急変,心停止への対応時“ちょっと待て,挿管は予後を悪くする!?”
③死後CT で胃がパンパン! やっぱ救命士・研修医はマスク換気が下手……え? そうじゃない?
④声門上器具(i-gel(R))の挿入:筋弛緩薬は使う? 使わない?
⑤海女からダイバーへ:desaturation までの時間を延長できる魔法のテクニック

3 末梢神経ブロック(佐倉伸一)
①帝王切開の術後鎮痛には,腹横筋膜面ブロックより腰方形筋ブロックのほうが優れている
②非定型的根治的乳房切除術(胸筋温存乳房切除術)の周術期疼痛管理に胸部傍脊椎ブロックを施行すると,慢性痛を軽減し,健康関連の生活の質(QOL)を改善する
③肩関節手術の術後鎮痛において,肩甲上神経ブロックは有用か?
④デクスメデトミジンをロピバカインに添加して神経ブロックを行うと,神経組織で作用するのか?
⑤末梢神経ブロックには,創部において局所的な感染防御効果がある

4 経食道心エコー(笹川智貴)
①経食道心エコーの教育にシミュレーターは有用か?
②包括的経食道心エコー検査のガイドライン2013 で追加された8 つの基本断面図
③リアルタイム3D 経食道心エコー検査:周術期僧帽弁画像の改善
④MitraClip(R) 使用時の経食道心エコー検査の役割
⑤経食道心エコーを用いたスペックルトラッキングによる周術期右心室機能評価

5 鎮静とモニター(古谷健太)
①デクスメデトミジンは,呼吸の低酸素応答をプロポフォールと同程度に減弱させる
②低用量のデクスメデトミジンは,術後せん妄の発生を減少させる
③意識の消失と意識の回復は,同じ効果部位濃度で起こる?
④内視鏡中の鎮静における換気量モニタリングの有用性
⑤鎮静中の痛みの感じ方は,鎮静薬ごとに異なる?

6 呼吸管理(柴﨑雅志)
①換気の不均質性を最小限にしたPEEP は,全身麻酔中の酸素化を改善する
②重症脳損傷患者でも① 40 歳未満,②追視可能,③嚥下可能,④ GCS 10 点以上のうち,3 つ以上を満たせば抜管できる可能性が高い
③非フッ素化リドカイン類似体であるJM25-1 は,気管支平滑筋の収縮と肺胞の炎症,末梢気道の線維化を抑制する
④従圧式人工呼吸では,新鮮ガス流量を増やすと1 回換気量が減少する
⑤喉頭鏡による気管挿管失敗症例では,その後の気管挿管成功率がビデオ喉頭鏡でもっとも高く,またその使用は年々増えている

7 循環管理(大久保潤一/垣花 学)
①術中の適切な血圧管理は,高血圧症を合併した高齢患者の術後急性腎障害を減少させる
②術中の血圧管理目標値は,術前の相対値よりも術中の絶対値を参考にするべきである
③術前の低血圧は,非心臓手術後の死亡率を増加させる
④低BIS 値と低MAP のdouble low は,死亡率と合併症発生率を増加させる
⑤GDT はERAS 併用下の腹腔鏡下腸切除術において,輸液管理のスタンダードとなりうるか?[新山幸俊]

8 脳外科手術(位田みつる/川口昌彦)
①小児脊椎手術における運動誘発電位モニタリングでは,デスフルランも使用できる
②出血によって血漿プロポフォール濃度は上昇し,運動誘発電位を低下させる
③術前の冠動脈造影は,頸動脈内膜?離術後,遠隔期の心筋梗塞発生率を低下させる
④髄膜腫合併妊娠:手術時期と母胎アウトカム
⑤難治性頭蓋内圧亢進に対する開頭減圧術は,死亡率を低下させるが,重度障害率を増加させる

9 心臓手術(松田敬一郎/今井英一)
①ハイリスク心臓手術において,人工心肺離脱後のフィブリノゲン製剤投与は出血量を減少させない
②心臓手術後のvasoplegic shock には,ノルエピネフリンよりもバソプレシンが予後を改善する
③加齢ラットの心臓では,remote ischemic preconditioning による心保護は阻害される
④新生児の人工心肺下開心術後の副腎不全:周術期ステロイド投与の有用性は?
⑤心臓手術時の輸血における制限群と非制限群の比較:赤血球輸血を始めるタイミングはいつか?

10 整形外科手術(石村博史)
①セボフルランは,ターニケット中の骨格筋における解糖系代謝産物を有効利用する?
②米国および欧州区域麻酔学会による最新のエビデンスに基づいた人工膝関節全置換術に対するクリニカルパス
③リポソームブピバカインを塩酸ブピバカインに混合して関節周囲に投与すると,血漿ブピバカイン濃度は投与後48 時間以降も上昇する
④待機的股関節全置換術に対する持続後方腰神経叢ブロックにおける合併症はまれである
⑤肩の手術に対する区域麻酔と横隔神経麻痺:解剖学的,生理学的,そして臨床的な考察

11 小児麻酔(釜田峰都/小林康磨/小原崇一郎)
①小児フルストマック患者の導入時,低圧のマスク換気は嘔吐の発生頻度を増加させない
②セボフルラン麻酔における覚醒時興奮予測スケールの作成
③高濃度セボフルラン使用下でも,声門上デバイスの抜去時に喉頭痙攣が発生する可能性がある
④術後回復室におけるカプノグラフィは,術後の低換気や無呼吸の発見に有用である
⑤小児の手術室外鎮静に麻酔科医が関わることの有用性

12 緊急手術(片山勝之)
①米国における大量輸血プロトコールに関する大規模アンケート調査
②緊急一般外科手術の予後改善のために,どんなエビデンスがあるのだろうか?
③ダメージコントロール蘇生時代におけるダメージコントロール手術
④周術期誤嚥を予防する術前絶飲食期間と薬物使用に関する米国麻酔科学会(ASA)ガイドライン・アップデート
⑤手術室火災予防と対策に関するASA 勧告

13 麻酔合併症(小坂康晴)
①腹部手術後のAKI 発症因子は,女性,高血圧やCKD の既往,再手術,ASA 全身状態分類IV・V である
②ノルアドレナリン持続投与による術中血圧管理は,ハイリスク患者の臓器障害を減少させる
③PONV の予防には,ミダゾラム投与が効果あり!
④術中脳波抑制は,術後せん妄に陥りやすい
⑤初回の股関節形成術における静脈内トラネキサム酸の持続投与は,単回投与と比較して効果は変わらない!

14 術後管理(新山幸俊)
①PONV 発症時にチューインガムを噛むと,オンダンセトロンと同等の改善効果が得られる
②脊髄くも膜下麻酔はERAS 併用下の腹腔鏡下腸切除術において,術後鎮痛法のスタンダードとなりうるか?
③術前,亜鉛トローチを舐めさせることで,術後咽頭痛は軽減する
④術前に食事内容を改善すれば,男性肥満患者における術後痛の増強を抑制できる?~肥満ラットにおける術後痛増強と性差についての考察~
⑤RNase は老齢ラットにおいてPOCD を軽減する

15 産科麻酔・無痛分娩(岡田尚子)
①産後過多出血に対する早期のトラネキサム酸投与は,死亡率を減少させる
②大規模データベースによる産科麻酔関連重症合併症の調査(SCORE project)
③妊婦への脊髄幹麻酔において,血小板数が70,000/μl 以上であれば硬膜外血腫のリスクはまれである
④硬膜外鎮痛による母体発熱モデルラットにおいて,非感染性の発熱は胎児脳の炎症を引き起こす
⑤無痛分娩での硬膜外フェンタニル投与は,母乳栄養継続に悪影響をもたらさない

16 救急医療(舩越 拓/有野 聡/志賀 隆)
①アンギオテンシンII は,血管収縮薬が無効の血管拡張性ショックの昇圧に有効である
②敗血症への早期介入は,死亡率を有意に低下させる
③PECARN,CATCH,CHALICE:3 つの小児頭部外傷ルールのうち診断精度が高いのはどれか?
④救急の現場で胸部外傷に対して胸腔ドレナージを施行する場合,20 ─ 22Fr の細いチューブで十分である
⑤脳梗塞発症6 ─ 24 時間で,症状と画像上の梗塞巣の大きさにミスマッチがある患者への血栓除去術

17 集中治療(新山修平)
①敗血症時のバクテリアルトランスロケーションは急性期の脳の炎症反応に直接関与するが,慢性脳感染はもたらさない
②ARDS 患者において,駆動圧を減らす人工呼吸器設定は予後を改善する
③急性重症出血では,3 時間以内のトラネキサム酸の使用は有効かつ安全である
④新たな国際基準Sepsis ─ 3 の救急部門での使用は有用である
⑤カテーテル関連感染症予防のための皮膚消毒には,クロルヘキシジン・アルコールを使用すべきである

18 ペインクリニック(表 圭一)
①脊髄刺激療法の新しい刺激モードであるバースト刺激は,痛みだけでなく情動も修飾する
②神経障害性疼痛に対する脊髄刺激療法は,脊髄の疼痛関連遺伝子発現を修飾する
③周術期のリドカイン全身投与は,術後慢性疼痛の発症を抑制する
④腰下肢痛からの長期回復には,遺伝子要素が関わっている
⑤神経根症に対して,神経根ブロックとパルス高周波の併用は,長期間にわたる鎮痛効果を発揮する

19 緩和医療とオピオイド(佐藤 薫/星野 一/小幡英章)
①オランダにおける安楽死合法化前後の終末期の実際の動向(1990 ─ 2010 年)
②ガバペンチンとオピオイドの併用で,オピオイド関連死が増加する
③バイアスファクターと治療濃度域は,より安全なオピオイド治療の指標となる
④救急医によるオピオイド処方と長期使用の危険性
⑤終末期患者におけるdignity therapy の悩みや終末期の生活への影響:多施設無作為化比較試験

20 痛みの機序(吉田朱里/川股知之)
①慢性痛患者の脳内では,グリア細胞が活性化している
②ヒトにおいて,カプサイシン感受性C 線維およびA 線維の侵害受容器は,長期増強に似た痛みの増幅を制御する
③線維芽細胞から侵害受容ニューロンを誘導し,in vitro で痛みをモデル化する
④四肢切断術後の残存肢の慢性痛では,全身の炎症性メディエータの発現が変化している
⑤TRPV1 陽性神経の化学的除去による鎮痛効果

序 文

本書は2017 年5 月に出版された「日めくり麻酔科エビデンス アップデート~ 1 日1 つ,3 カ月で100 の知見を得る~」の続編です.本書のコンセプトは,前作と同様,多岐にわたる麻酔関連領域における知識のアップデートを楽しみながら行うというものです.有意義と思われる最新の知見を示した論文のエッセンスを,イラストを交えて理解しやすい形式で解説しています.執筆してくださった先生方に偏っていても構わないという前提で,あえて積極的に主観を入れていただいたコメントは一読の価値があります.大いに偏見に満ちた,そして,示唆に富むコメントをぜひ堪能していただきたいと思います.
どんなに多忙な麻酔科医でも,コーヒータイムに1 つの項目を読み解くことで,無理なく新しい知見を得ることができます.それでは皆さん,どうぞページをめくって1 日1 つずつ,新たな100 の知見を楽しみながら学んでください.
2018 年8 月吉日
札幌医科大学医学部麻酔科学講座 教授 山蔭 道明

 

序 文

昨年,刊行された前作が幸いにもご好評をいただき,この度,続編を上梓することができました.著者の先生方,編集担当の土田さん,そして前作を手にしてくださった皆様に心より感謝申し上げます.
今回は,前作から引き続きピックアップした重要な麻酔関連領域に加え,“遺伝子と麻酔”“経食道心エコー”“鎮静とモニター”“痛みの機序”という近年のトピックスや,麻酔科医として知っておくべき項目を新たに追加しました.前作同様,執筆を担当していただいた先生方のおかげで,魅力あふれる内容となりました.中でも,大いに主観と偏見に満ちた先生方のコメントは必読です.そして,前作で好評だったイラストは,引き続き高張 峰治さんに依頼しました.円熟味を増し,さらに味わい深いものになっています.本文と併せて,どうぞお楽しみください.
前作の序文にも記しましたが,本書のコンセプトは,麻酔関連領域を網羅したカテゴリーの中で,有意義と思われる最新の知見を示した論文のエッセンスを,理解しやすい形式で解説・紹介するというものです.本書を読むことで,すべてを理解したつもりになるということでは決してありません,あくまでも本書で興味を持った論文を個人がそれぞれ入手し,さらに読み込んで理解を深めるためのきっかけとして利用していただければ幸いです.
“こんな本があればいいな”と思って企画した本書ですが,まさか続編を出せるとは思っておらず,ありがたい限りです.こうなったら,かつての「男はつらいよ」のような長期シリーズを目指します.いつの日か,「花も嵐も日めくり麻酔科エビデンス アップデート」や「日めくり麻酔科エビデンス アップデート~麻酔科忘れな草~」を上梓できることをささやかに期待しております.
2018 年8 月吉日
札幌医科大学医学部麻酔科学講座 准教授 新山 幸俊