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Ⅰ章 システマティックレビューを始める前に20異質性(heterogeneity)とは、メタアナリシスの対象となった研究間でどれだけ結果が異なっているか、という概念です。I2は0≦I2<100の範囲を取ります。I2=0%で異質性なし、I2>60%でそこそこ異質性あり、I2>85%で高度の異質性あり、が一応の目安です1)。解析対象となった複数のデータが同じ値の統計量(平均差やオッズ比)を提示している場合は異質性はないのですが、研究間で結果が大きく異なる場合にI2が高くなります。エビデンスの確実性の評価において、非一貫性という概念が出ますが、ほぼ同じ概念です。通常、I2と合わせて異質性のP値(P value for heterogeneity)を記載します。効果量のP値(いわゆる普通のP値)と混同しないように気をつけてください。異質性のP値は0.05でなく、0.1をカットオフにすることもあります2)。メタアナリシスの計算方法として、固定効果モデル(母数効果モデル、fixed-effect model)、変量効果モデル(random-effect model)があり、メタアナリシスを実行するさいにはいずれかを選択する必要があります。固定効果モデルは、各研究から得られた重み(weight)をそのまま用いて計算を行います。重みは、患者人数やイベント数にほぼ比例します。3,000人のRCTは、500人のRCT 6本分の重みがあります。計算式はやや複雑ですが、RevManが自動的に行ってくれます。一方、変量効果モデルは異質性により重みを減じてから計算を行います。固定効果モデルは、すべての研究の結果が同一であるという非現実的な仮定に基づいており、変量効果モデルは、研究間の結果のばらつきを許容しています。メタアナリシスを行う場合の現場の感覚としては、重みを減じられることのある変量効果モデルではなく、固定効果モデルを使うことで95%信頼区間(95%confidence interval、95%CI)が狭くなり、P値が有意になりやすいため、固定効果モデルを使いたい誘惑にかられます。次の例ではStudyA‒Fでオッズ比の推定値が大きく異なり、0.37‒1.65に幅広く分布し、95%信頼区間も重なりに乏しいため、異質性を評価する指標であるI2が89%ととても高くなっています。異質性のP値もP<0.000001ときわめて小さいです。各研究の重みをそのまま用いる固定効果モデル《図1》では、ひし形で示される95%信頼区間が効果なし(null、ここではオッズ比=1)のバーをまたがず、有意差がつきました(Test for overall effect P<0.001)。一方、高い異質性により重みの減じられる変量効果モデル《図2》では有意差がつきませんでした(Test for overall effect P=0.18)。[注:図中のweightは全体を100%とした相対的なweightであるため、変量効果モデルを選択しても減少しません。]さて、しばしば生じる問題は、固定効果モデルと変量効果モデルのいずれを選択すべきかです3)。I2=0%のように、異質性が低いときには2つのモデルの結果が完全に一致するので、異質性と固定/変量効果モデルの選択08

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