心電図学習編サンプル
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V1のS波が浅い場合にはR波が低くてもR/S比が1より大きくなるので,R波高の絶対値が0.7mV以上あることが右室肥大の高電位の基準として必要です.また,V1・V2前後の誘導ではT波が平低化から陰性化します. ただし,後述する後壁梗塞の場合にもR/S比が1より大きくなるので,その鑑別が必要です.第4章QRS波をチェックⅠⅡⅢ   RV5(またはRV6)>2.6mV(目盛り上26mm)    または,SV1+RV5(またはRV6)>3.5mV(目盛り上35mm)を,満たすことで高電位差と判断するものですから,V1とV5誘導にはしっかり注目せねばなりません. また,左室肥大では,左側胸部誘導でストレインパタンとよばれる,ST低下とTの非対称な逆転(非対称陰性T)を呈します(図4—5).Sokolov—Lyonによる電位の基準を満たすだけでは,高電位差(high voltage)という診断のみにすぎず,高電位差の基準(voltage criteria)を満たしたうえでストレインパタンを合併して,はじめて左室肥大と診断するという考えが重要です.筆者も,高電位差の基準だけでは,胸壁の厚さなどの影響が大きく,左室肥大基準に合致しない印象があります.心肥大に病的な意味を見いだすならば,ストレインパタンの合併は必須の基準と考えています.図4—4 右室肥大 V1のR/S比が1を超えるとともに,T波の逆転を認めます.R/S>1R波>0.7mVaVaVaVaVaVaVVVVVVV1111VVVVV2222VVVVV3333VVVVV4444VVVVVVVV5555VVVVV6666R/S>1R波>0.7mVT波の陰転77V1✿✿✿✿2—2.左室肥大:V1とV5誘導のQRS波高を計測(注目:章扉①,②)������������� 左室肥大の基本的変化も左側胸部誘導の高電位差です.すなわち,左室の肥大のために,起電力が左方に向かうため,Ⅰ・V5~V6誘導のR波が高くなります.左室肥大の診断基準は数多く提唱されていますが,ここでは,「日循協心電図コード2005」2)にも掲載されているSokolov—Lyonの基準を取り上げます.本基準は,

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