一歩進んだ麻酔管理:常識は常に真実か?
7/10

3─300.5─31─510─5012─405─201─300.3─1.2(Feltracco P, et al. Perioperative benefit and out-come of thoracic epidural in esophageal surgery: A clinical review. Dis Esophagus 2018; 31: 1─14より改変引用)0.01─0.120.01─30.3─30.0004─0.030.01─0.051074表1 胸部硬膜外麻酔に伴う副作用と合併症の発生頻度(%)血圧低下、徐脈、頻脈筋力低下、運動ブロック局所麻酔薬中毒除痛不均衡・偏在、鎮痛不十分悪心・嘔吐皮膚瘙痒尿閉傾眠酸素飽和度低下硬膜穿刺一過性神経症状、神経根症状、麻痺出血硬膜外血腫カテーテル留置失敗迷走神経反射失神穿刺部痛カテーテル関連感染症、硬膜外膿瘍の有用性は、最近の研究でも過去の研究同様、有用性を示す報告が多くなっています。食道手術に対する胸部硬膜外麻酔の影響を検証したシステマティックレビュー5)においては、硬膜外麻酔は早期離床、術後呼吸機能の改善、鎮痛により咳を可能とし、無気肺、肺炎リスクを減らし、腸管機能回復を促進し、イレウス発生率を減らし、人工呼吸期間を短縮させると結論づけています。腹部大動脈瘤に対する開腹手術においても、硬膜外麻酔の効果を調べた大規模調査6)では、硬膜外麻酔C 術中管理(Ⅱ):基本的な管理法・手技を施行した患者群で、在院日数、術後30日の死亡率については有意差を認めなかったものの、術後の視覚アナログスケール(VAS)の低下、心筋梗塞発症率の減少、抜管までの時間短縮、術後呼吸不全発症率の減少、ICU滞在期間の短縮、胃腸管出血発生の減少を認めました。それでは、硬膜外麻酔の有用性が否定されるような多角的鎮痛方法には、どのようなものがあるのでしょうか。Joshiら7)は、腹腔鏡下大腸手術患者の術後鎮痛管理について、1995年から2011年に出版された論文のメタアナリシスにより、手術終了時の局所麻酔薬注射、ステロイド全身投与、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やシクロオキシゲナーゼ(COX)-2阻害薬、アセトアミノフェンの積極的な使用、オピオイドによるレスキュー、静脈内リドカイン点滴など(表2)が有効な手段であると述べていますが、鎮痛効果については非硬膜外麻酔群では硬膜外麻酔群よりもペインスコアが高かったと結論づけています。ただし、脊髄くも膜下麻酔や腹横筋膜面ブロックを含む鎮痛方法に対する評価については新しい知見も出てきているので、今後の研究結果が俟たれます。頻度不明頻度不明頻度不明このように、胸部硬膜外麻酔のその高い鎮痛効果は揺るぎないものです。しかし、その優位性については術後1日目か2日目までであり、その後はほかの多角的鎮痛方法と有意差はなくなります。また、まれではありますが、硬膜外麻酔には重大な合併症がいくつかあり、ひとたび起これば患者にとっても、医療者にとっても甚大なものとなります。高い鎮痛効果と、さまざまな利点を持つ硬膜外麻酔ですが、利点と合併症を十分に理解し、手術部位、術式、術前の患者因子も加味したうえで、適用を慎重に吟味する必要性がより

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る