Anesth_Calendar_3
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時の値まで回復した.ITBVIは変化せず,PPVおよびSVVは気腹後に上昇するものの,すぐにベースライン時の値まで回復し,頭低位による影響も認めなかった.[2]後負荷 SVRIは気腹によって25%上昇した.頭低位によって低下はしたものの,ベースラインより有意に高い状態が続いた.解除されたあとは,逆にベースライン時の値よりも25%低下した.[3]心収縮能 CIは気腹により8%減少したが,頭低位が加わることで増加した.気腹および頭低位終了後も上昇し続け,ベースライン時の値から17%まで上昇した.左心収縮能を反映するdpmxは軽度増加したものの,有意な変化ではなかった. ●参考文献 1) Haas S, et al. Haemodynamics and cardiac function during robotic-assisted laparoscopic pros-ロボット支援下手術において,極端な頭低位と気腹という非生理的な環境は循環動態にも大きな影響を与える.それらについて,分かりやすく解説した報告である.これまでの疑問点が解決する契機になればと考えて,この論文を選択した.PPVおよびSVVがこれらの環境に影響を受けないという点はいささか驚きであるが,両者が術中も信頼できる指標であるということが分かった意義は大きい.ロボット支援下手術中の循環変動については,報告によってその見解に矛盾がある1)〜3).その原因は使用されているカテコラミンや血管拡張薬が統一されていないこともあるであろうが,なによりも頭低位の角度や気腹圧が統一されていないことであろう.本論文の頭低位は45°,気腹圧は20 mmHgと,患者にかかる負荷としては,もっとも大きいものと考えられる.過度な頭低位や気腹を行わない施設や症例では,本研究のような循環変化は生じないかもしれない.本研究では,心収縮能こそ大きくは変わらなかったものの,後負荷は増加していた.通常,後負荷は心拍出量に直接影響するため,頭低位により後負荷が増加した状態が持続するうえに心拍数が増加することを考慮すると,ロボット支援下手術中には酸素必要量が増加すると考えられる.さほど過度な頭低位や気腹を行わない施設においても,患者にもともと虚血性心疾患の既往があり,安全域が狭いような場合には,術中の循環変動が合併症を悪化させることがあることを考慮して,酸素濃度を上昇させたり,後負荷を軽減させたりするために血管拡張薬を適宜投与して,酸素需要量の増加および心拍出量を安定させることを積極的に図るべきであろう.103 2) Lestar M, et al. Hemodynamic perturbations during robot-assisted laparoscopic radical pros- 3) Meininger D, et al. Effects of posture and prolonged pneumoperitoneum on hemodynamic tatectomy in steep Trendelenburg position. Int J Med Robot 2011 ; 7 : 408─13.tatectomy in 45°Trendelenburg position. Anesth Analg 2011 ; 113 : 1069─75.parameters during laparoscopy. World J Surg 2008 ; 32 : 1400─5.Comments

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