Anesth_Calendar_3
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ク前後の大腿の前・内・外側領域の冷覚遮断の有無,股関節内転・伸転運動時の筋力,磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging : MRI)上での局所麻酔薬の広がり(頭・尾側方向および大腰筋周囲の神経が走行する部位)について調べ,2つのブロック間で比較検討した.閉鎖神経ブロックの有無に関しては,知覚遮断および運動遮断による臨床的な評価が困難であるため,MRI画像上で解剖学的に閉鎖神経が走行していると思われる部位への局所麻酔薬の広がりによって判断した. ●参考文献 1) Desmet M, et al. A longitudinal supra-inguinal fascia iliaca compartment block reduces mor-鼠径上腸骨筋膜下ブロックでは,ブロック後に大腿の前・内・外側領域の80%で冷覚遮断が得られたが,鼠径下腸骨筋膜下ブロックでは30%にとどまった.しかし,筋力に差はなかった.MRI画像上,局所麻酔薬は鼠径上腸骨筋膜下ブロックではより頭側,鼠径下腸骨筋膜下ブロックではより尾側に広がっていた.解剖学的に閉鎖神経が走行する部位への局所麻酔薬の広がりが,鼠径上腸骨筋膜下ブロックで,より高頻度に認められた.超音波ガイド下腸骨筋膜下ブロックは,2011年Hebbardら3)によって発表された.その方法では,探触子を上前腸骨棘の内側で矢状方向に当て,針を鼠径靱帯の2─4 cm遠位から穿刺し頭側に向けて進め,局所麻酔薬を腸骨筋膜下に投与する.その結果,本研究で用いられた鼠径上腸骨筋膜下ブロックと同様に,死体では腸骨筋と腹壁の筋肉の間に局所麻酔薬が広がった.一方,本研究では鼠径下アプローチとして,Shari-atら2)が腸骨筋膜下ブロックの臨床研究に初めて使用したアプローチ法を採用している.この方法は,通常の大腿神経ブロックと同じもので,本研究は実際には腸骨筋膜下ブロックと大腿神経ブロックの比較研究と考えることができる.もし,Hebbardらのアプローチで鼠径下アプローチが行われていれば,針の穿刺部位が鼠径靱帯の近位・遠位どちらであっても得られる結果は変わらなかった可能性があるであろう.すなわち穿刺部位がどこかではなく,針の穿刺方向が矢状面か横断面かの違いを比較したにすぎない.針を尾側から頭側に進めるアプローチでは,閉鎖神経をブロックできる可能性があるので,このアプローチによって股関節手術の鎮痛の質を向上させることが期待できる.59 ■結果 2) Shariat AN, et al. Fascia iliaca block for analgesia after hip arthroplasty: A randomized dou- 3) Hebbard P, et al. Ultrasound-guided supra-inguinal fascia iliaca block: A cadaveric evaluation phine consumption after total hip arthroplasty. Reg Anesth Pain Med 2017 ; 42 : 327─33.ble-blind, placebo-controlled trial. Reg Anesth Pain Med 2013 ; 38 : 201─5.of a novel approach. Anaesthesia 2011 ; 66 : 300─5.Comments

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