Anesth_Calendar_3
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与するとオタマジャクシは麻酔状態となり,不動化したが,UV照射により覚醒し,遊泳を再開した(図─C).口で考えてみよう.では,また明晩…… ●参考文献 1) Franks NP, et al. Molecular and cellular mechanisms of general anaesthesia. Nature 1994 ; “光で麻酔をコントロール”という新奇性に目を奪われがちであるが,本論文は麻酔メカニズム研究の観点からきわめて興味深い.周知のように全身麻酔薬の作用機序は,膜脂質に非特異的に溶解して細胞膜機能を修飾するという“脂質説”と,細胞膜のレセプタやチャネルに特異的に修飾するという“タンパク説”の相反する2つの仮説が提唱され,論争を繰り広げてきた(表).現在では,光学異性体で麻酔作用力価が異なることなどから“タンパク説”で説明されることが多いものの,多様な分子構造を有する全身麻酔薬分子が単一のレセプタ・チャネルに結合するとは考えにくい.表 古典的な全身麻酔薬の作用機序仮説脂質説(非特異説)この矛盾を解決するために,FranksとLieb1)は,麻酔薬分子は細胞膜タンパクの疎水ポケットに結合するという“麻酔ポケット仮説”を唱えた.全身麻酔薬の作用力価は44444444という考え方で,この麻酔ポケット仮脂溶性と相関するのではなく,疎水性と相関する説は,Meyer─Overton則や光学異性体で作用力価が異なる現象(タンパク説)の両方を説明しやすい2).しかしながら,麻酔薬分子が入り込むポケット構造が実在し,さらにそこに結合した麻酔薬分子が細胞機能を修飾するかどうかの証明は難しかった.本論文で示されたように,AP2は分子配列は同一のまま,分子構造をトランス/シス型に変えることで麻酔作用が発現/消失したことから,膜タンパクにおけるなんらかの結合部位(麻酔ポケット)が存在し,さらにそこに結合した麻酔薬が細胞機能を修飾して意識消失を来したことが証明されたといえる.次項論文②では,意識のメカニズムという根元的な問題について,麻酔という切りタンパク説(特異説)3作用機序全身麻酔薬は膜脂質に物理的に溶解して非特異的に膜タンパク機能を修飾する全身麻酔薬に構造特異性がない圧拮抗作用全身麻酔の作用力価が脂溶性と相関する(Meyer─Overton則)光学異性体で麻酔作用が異なる現象を説明できない根拠矛盾点 2) 廣田弘毅.麻酔をめぐるミステリー.京都:化学同人;2012.367 : 607─14.〔詳細は文献2)を参照〕Comments全身麻酔薬は膜タンパクに特異的に作用して,その機能を修飾する圧拮抗作用メカニズムへの疑問脳に麻酔薬の特定飽和部位がある光学異性体で麻酔作用が異なる全身麻酔薬に構造特異性がない事実を説明できない

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