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❶ 麻酔の作用機序論文① 2電位依存性カリウムチャネル(図)ファミリーの中で,Kv1.2はニューロンの興奮性を調節することから,全身麻酔のメカニズムに関与する可能性がある.今回著者らは,意識の中枢と考えられている視床内側核群にKv1.2の抗体を微量注入し,全身麻酔薬の作用に及ぼす影響を検討した.雄性Sprague-Dawleyラットの視床内側核群あるいは視床外側核群に微量注入用カニューレを挿入した.麻酔用チャンバーを用いて,ラットにデスフルラン(3.6%)あるいはセボフルラン(1.2%)を吸入させた.意識(対向反射)が消失したことを確認してから,ラットの脳内にKv1.2の抗体を微量注入した.デスフルラン吸入中にもかかわらず,視床内側核群にKv1.2抗体を微量注入されたラットの75%が一時的に(約400秒間)麻酔状態(意識消失)から回復した.セボフルランでも同様の効果が得られた.視床外側核群に微量注入した群や,ほかの神経蛋白抗体を注入した群では,明らかな影響が認められなかった.このことから,視床内側核群が全身麻酔薬の意識消失作用に関わっていると考えられた.コメント全身麻酔のメカニズムに関する研究は,Meyer/Overtonの脂質二重膜からFranks/LiebのGABAA受容体まで,さまざまな実験系を用いて膨大な知見が蓄積された1)が,全身麻酔薬の明確な作用部位はいまだ明らかにされていない.本論文で特筆すべきは,全身麻酔薬作用(特に意識消失)の主要なターゲットとして視床皮質路を特定したことであり,今後の麻酔メカニズム研究の方向性を示す重要なランドマークになるといえよう.一方,本論文と同様の手法を用いて,視床内側へのニコチンの微量注入がセボフルラン麻酔を拮抗したという報告もあり,この結果は全身麻酔薬の作用部位が神経型ニコチン性アセチルコリン受容体(nAchR)である可能性を示唆している2).KvなのかThalamic microinfusion of antibody to a voltage-gated potassium channel restores consciousness during anesthesiaAlkire MT, et al. Anesthesiology 2009 ; 110 : 766─73廣田 弘毅■背景■方法■結果視床内側核への電位依存性カリウムチャネル抗体の 微量注入は,全身麻酔作用を拮抗する

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