iii 心臓麻酔の教科書は多く出版されているが,実際の現場でどう麻酔するのかということに言及しているものは少ない。教科書として出版するにはエビデンスとして確立されたものを記載して最大公約数的な見解を述べなければならない。 そうなると,どうしても同じような内容になり,エビデンス集のようになってしまい,若い先生にとってはやや物足りないものになってしまっているかもしれない。私も研修医のころ,いろいろな教科書をあさってはよくわからないなぁという絶望感にさいなまれたことが記憶に残っている。 今回,克誠堂出版さんから症例ごとの心臓麻酔の教科書をということで依頼を受けたが,そのとき,症例提示をしながらというよりは,疾患,術式ごとに麻酔の管理を実践的にまとめたものを紹介できれば,若い先生にとっても読みやすいものになるのではと思い立った。編者の先生といろいろと構想を話すうちにエビデンスにこだわらず,実践的な心臓麻酔の本をつくれたらいいかなという結論に至った。 執筆者は国立循環器病研究センターにかかわった先生に依頼し,国循ではどのような麻酔を行っているのかという形でまとめることにした。 したがって,内容に関しては賛否両論あると思われる,エビデンスとして確立されていないものも多く含んでいる。たまにはそういった教科書があってもいいのかなと思い,なんとか,原稿を集め出版に至ることができた。 若い先生の心臓麻酔の一助となればうれしい次第です。2022年7月吉日序文吉谷 健司
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