術式対応“わがまま”術後鎮痛マニュアル
~エビデンスと麻酔科医の本音に基づいた~

術式対応“わがまま”術後鎮痛マニュアル

監修 山蔭道明
編集 新山幸俊
ISBN 978-4-7719-0504-7
発行年 2018年
判型 B5
ページ数 182ページ
本体価格 5,300円(税抜き)
電子版 あり
医書.jp<電子版>
M2Plus<電子版>

Chapter1 頭頸部手術(溝田敏幸/西野彩子)

Section1 脳神経外科開頭術
1 痛みの性状と強さ/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section2 扁桃摘出術
1 痛みの性状と強さ/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section3 中耳・内耳手術
1 痛みの性状と強さ/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section4 頭頸部悪性腫瘍切除術
1 痛みの性状と強さ/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section5 下顎骨切り術
1 痛みの性状と強さ/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section6 抜歯
1 痛みの性状と強さ/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら

Chapter2 体表手術(櫻井静佳)

Section1 甲状腺手術(共著者:角田奈美)
1 はじめに/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section2 乳腺全摘出術(共著者:笠井飛鳥)
1 術後痛管理のストラテジー/2 術後鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section3 乳腺部分切除術(共著者:笠井飛鳥)
1 術後痛管理のストラテジー/2 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section4 熱傷手術(共著者:田中克哉)
1 はじめに/2 痛みの性状と強さ/3 術後痛管理のストラテジー
4 鎮痛プロトコール/自分がこの手術を受けるなら
Section5 皮膚および形成外科手術(共著者:堤 保夫)
1 はじめに/2 痛みの性状と強さ/3 術後痛管理のストラテジー
4 鎮痛プロトコール/自分がこの手術を受けるなら

Chapter3 胸部手術(田口志麻/濱田 宏)

Section1 胸腔鏡下肺切除術,開胸肺切除術
1 はじめに/2 痛みの性状と強さ/3 術後痛管理のストラテジー
4 鎮痛プロトコール/自分がこの手術を受けるなら
Section2 胸腔鏡下ブラ切除術
1 はじめに/2 痛みの性状と強さ/3 術後痛管理のストラテジー
4 鎮痛プロトコール/自分がこの手術を受けるなら
Section3 縦隔腫瘍摘出術
1 はじめに/2 痛みの性状と強さ/3 術後痛管理のストラテジー
4 鎮痛プロトコール/自分がこの手術を受けるなら
Section4 胸腔鏡補助下胸骨挙上術[Nuss法]
1 はじめに/2 痛みの性状と強さ/3 術後痛管理のストラテジー
4 鎮痛プロトコール/自分の子ども(12歳と仮定)がこの手術を受けるなら

Chapter4 上腹部手術(谷西秀紀)

Section1 胃切除術
1 痛みの性状と強さ/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section2 食道手術
1 痛みの性状と強さ/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら/46
Section3 肝切除手術
1 痛みの性状と強さ/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section4 腹腔鏡下胆嚢摘出術
1 痛みの性状と強さ/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section5 膵頭十二指腸切除術
1 痛みの性状と強さ/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section6 腹壁瘢痕ヘルニア手術
1 痛みの性状と強さ/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら

Chapter5 下腹部手術(新山幸俊)

Section1 開腹結腸切除術~硬膜外麻酔を施行する場合~
1 痛みの性状と強さ/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section2 開腹結腸切除術~硬膜外麻酔が施行できない場合~
1 はじめに/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section3 腹腔鏡下結腸切除術
1 痛みの性状と強さ/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section4 腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術
1 痛みの性状と強さ/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section5 試験開腹術
1 痛みの性状と強さ/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら

Chapter6 上肢手術(金谷明浩/山内正憲)

Section1 肩腱板断裂手術[鏡視下]
1 概念/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section2 観血的骨接合術[上腕骨骨幹部骨折]
1 概念/2 標準的な術式と特性/3 術後痛管理のストラテジー
4 鎮痛プロトコール/自分がこの手術を受けるなら
Section3 観血的骨接合術[上腕骨遠位部骨折,上腕骨顆状骨折]
1 概念/2 フォルクマン拘縮/3 術後痛管理のストラテジー
4 鎮痛プロトコール/自分がこの手術を受けるなら
Section4 手関節周囲の骨折観血的手術
1 概念/2 標準的な術式と特性/3 術後痛管理のストラテジー
自分がこの手術を受けるなら
Section5 上肢切断・離断術
1 概念/2 切断術と鎮痛/3 幻肢痛/4 術後痛管理のストラテジー
5 鎮痛プロトコール/自分がこの手術を受けるなら

Chapter7 下肢手術(西池 聡)

Section1 全人工膝関節置換術~末梢神経ブロックを施行する場合~
1 はじめに/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section2 全人工膝関節置換術~膝関節局所浸潤麻酔を施行する場合~
1 はじめに/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section3 関節鏡手術
1 はじめに/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section4 全人工股関節置換術~末梢神経ブロックを施行する場合~
1 はじめに/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section5 全人工股関節置換術~末梢神経ブロックを施行しない場合~
1 はじめに/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section6 観血的骨接合術[大腿骨]
1 はじめに/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section7 観血的骨接合術[足関節など]
1 はじめに/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section8 下肢切断術
1 痛みの性状と強さ/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら

Chapter8 整形外科椎体手術(瓜本言哉)

Section1 骨盤骨折に対する観血的接合術:創外固定術
1 痛みの性状と強さ/2 術後痛管理のストラテジー
3 鎮痛プロトコール/自分がこの手術を受けるなら
Section2 骨盤骨折に対する観血的接合術:内固定術
1 痛みの性状と強さ/2 アプローチ/3 術後痛管理のストラテジー
4 鎮痛プロトコール/自分がこの手術を受けるなら
Section3 椎体固定術[側彎症を含む]
1 痛みの性状と強さ/2 術後痛管理のストラテジー
3 使用薬剤のストラテジー/4 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section4 椎弓切除術および椎弓形成術
1 痛みの性状と強さ/2 術後痛管理のストラテジー
3 鎮痛プロトコール/自分がこの手術を受けるなら

Chapter9 泌尿器科手術(安藤千尋/内野博之)

Section1 経尿道的切除[TUR]手術
1 はじめに/2 痛みの性状と強さ/3 術後痛管理のストラテジー
4 鎮痛プロトコール
Section2 腹腔鏡下腎摘出術
1 はじめに/2 痛みの性状と強さ/3 術後痛管理のストラテジー
4 鎮痛プロトコール/自分がこの手術を受けるなら
Section3 膀胱全摘,回腸導管手術~硬膜外麻酔を施行する場合~
1 はじめに/2 痛みの性状と強さ/3 術後痛管理のストラテジー
4 鎮痛プロトコール/自分がこの手術を受けるなら
Section4 膀胱全摘,回腸導管手術~硬膜外麻酔を施行できない場合~
1 はじめに/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section5 ロボット支援手術[前立腺摘出および腎部分切除術]
1 はじめに/2 痛みの性状と強さ/3 術後痛管理のストラテジー
4 鎮痛プロトコール/自分がこの手術を受けるなら
Section6 精巣摘出術
1 はじめに/2 痛みの性状と強さ/3 術後痛管理のストラテジー
4 鎮痛プロトコール/自分がこの手術を受けるなら

Chapter10 産婦人科手術(大橋雅彦/秋永智永子)

Section1 帝王切開術
1 はじめに/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section2 腹式子宮全摘術
1 はじめに/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section3 膣式子宮全摘術
1 はじめに/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら
Section4 付属器摘出術[開腹,腹腔鏡]
1 はじめに/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分がこの手術を受けるなら

Chapter11 心臓血管外科手術(柴田晶カール)

Section1 心臓外科手術
1 痛みの性状と強さ/2 術後痛管理のストラテジー
3 鎮痛プロトコール/自分がこの手術を受けるなら
Section2 胸部・腹部大動脈人工血管置換術[開胸・開腹術および血管内治療]
1 痛みの性状と強さ/2 術後痛管理のストラテジー
3 鎮痛プロトコール/自分がこの手術を受けるなら
Section3 低侵襲心臓外科手術[MICS]
1 痛みの性状と強さ/2 術後痛管理のストラテジー
3 鎮痛プロトコール/自分がこの手術を受けるなら
Section4 経カテーテル大動脈弁植え込み手術[TAVI]
1 痛みの性状と強さ/2 術後痛管理のストラテジー
3 鎮痛プロトコール/自分がこの手術を受けるなら

Chapter12 小児手術−1(香川哲郎)

Section1 多指症などを含む四肢手術
1 はじめに/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分の子どもがこの手術を受けるなら
Section2 比較的低侵襲な体表などのその他の手術
1 はじめに/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分の子どもがこの手術を受けるなら
Section3 心臓手術
1 術後痛管理のストラテジー/2 鎮痛プロトコール
自分の子どもがこの手術を受けるなら

Chapter13 小児手術−2(深田智子)

Section1 鼠径ヘルニア
1 はじめに/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分の子どもがこの手術を受けるなら
Section2 消化管手術
1 はじめに/2 術後痛管理のストラテジー/3 鎮痛プロトコール
自分の子どもがこの手術を受けるなら

Chapter14 緩和医療中の患者の手術(髙橋正裕)

Section1 オピオイド投与中患者の術後鎮痛
1 はじめに/2 オピオイド鎮痛薬ごとの基本的な対応方法
3 オピオイド鎮痛薬を使用する原因となっている疾患に対して外科的処置を行う場合
4 術後鎮痛に区域麻酔を用いる場合/5 術後鎮痛に経静脈的PCAを用いる場合

麻酔科医にとって麻酔管理のアウトカムは,術後の速やかな機能回復と患者満足度であり,そのために良好な術後鎮痛は必須です.そして,時間経過を逆算して考えると,術後鎮痛法の選択は,術前の麻酔計画,麻酔法の決定に直結します.
近年,内視鏡手術が普及し,手術が低侵襲化することで,これまでの持続硬膜外麻酔一辺倒だった術後鎮痛は大きく変わりました.さらに,超音波ガイド下末梢神経ブロックやオピオイドiv-PCAの普及,アセトアミノフェン静注液の登場などにより,さまざまな術後鎮痛法を選択できる環境が整いました.しかし,選択肢が多様化する中で“個々の術式に対し,どの術後鎮痛法を選択すべきか?”“使用する薬剤の濃度,投与量などをどのように選択すべきか?”そして,“それらに十分なエビデンスはあるのか?”という問題が麻酔科医を悩ませています.
本書の目的は,個々の術式に対するもっとも望ましい術後鎮痛法を最新のエビデンスを踏まえて,具体的に呈示し,適切に選択できるよう導くものです.はじめに手術の侵襲度とその理由,障害される神経などを説明した後,術後鎮痛のストラテジーを解説し,そのうえでエビデンスに則った具体的な鎮痛法を呈示しています.投与する薬剤の濃度や投与設定,追加鎮痛薬などについても解説を加え,さらに術後鎮痛プロトコールを図示して概要を把握しやすいようにしています.
そして,本書では“もしも,麻酔科医自身が手術を受けるとしたら,どのような術後鎮痛を希望するか?”という点についてもコメントしています.麻酔科医が患者さんに対して行う鎮痛法と,自身が希望する鎮痛法が乖離するなど,本来あってはならないことです.しかし,エビデンスで推奨されている鎮痛法は,純粋な鎮痛効果だけでなく,在院日数やコストを主要なアウトカムとして設定していることも事実です.実際に患者さんの術後の様子を見ている麻酔科医が,いざ自分が手術を受けると仮定した際にエビデンスに則った鎮痛法を呈示され,そのまま受け入れられるか? という点は非常に興味深いものです.それはひいては,麻酔科医はエビデンスに裏打ちされた術後鎮痛では,鎮痛という点のみに着目すると不十分と感じているということになります.本書でお示しするのは,麻酔科医が最高の術後鎮痛をオーダーするという,きわめて“わがまま”な内容です.それをすべての患者さんで実践することは,もしかしたら,医療者の負担が増えてしまい,困難なことなのかもしれません.しかし,その“わがまま”を突き詰めれば,患者満足度を極限まで高める術後鎮痛を実践できる可能性があります.
こんな極端なコンセプトで本を作ることこそが“わがまま”なのかもしれません.本書の主旨をご理解いただき,魅力あふれる文章を紡いでくださった筆者の先生方に心より感謝申し上げます.また,本書が術後鎮痛法を選択する際に読者の皆さんのお役に立てることを切に願います.

2018年4月5日
札幌医科大学教授  山蔭 道明
(同)  准教授 新山 幸俊