検査値から考える周術期血液凝固異常

検査値から考える周術期血液凝固異常

編集 香取信之
ISBN 978-4-7719-0485-9
発行年 2017年
判型 B5
ページ数 234ページ
本体価格 6,900円(税抜き)
電子版 あり
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病態を把握するためにはどのような検査を行えばよいのか? その結果をどのように解釈すればよいのか?

本書では,凝固系・線溶系検査の測定原理とともに,その結果の解釈について取り上げました。
検査原理を理解するとともに,急性期血液凝固障害をどのように診断し,治療を進めるかという実践的な部分にも重点をおきました。

I.総論
1 生体内と生体外の血液凝固は何が違うのか?(香取信之)
A 血液凝固と血液凝固カスケード
1 血液凝固カスケードの歴史/2 血液凝固カスケードと凝固検査
B 生体内の血液凝固
1 血管内皮細胞の働き/2 血管損傷部位での血液凝固
C トロンビン制御機構
1 アンチトロンビン(AT)/2 組織因子経路阻害因子(TFPI)/
3 トロンボモジュリン─プロテインC(TM─PC系)/
4 プロテインZ依存性プロテアーゼインヒビター(protein Z-dependent protease inhibitor:PZI)
D 線溶系の活性化
1 プラスミノゲンとプラスミノゲン活性化因子(PA)/2 プラスミン
E 線溶の制御
1 α2プラスミンインヒビター(α2-PI),またはα2アンチプラスミン(α2-AP)/
2 プラスミノゲン活性化因子インヒビター1(PAI-1)/
3 トロンビン活性化線溶阻害因子(TAFI)
F 生体内の血液凝固

II.凝固系検査の測定原理と解釈
1 プロトロンビン時間(PT),活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)(五十嵐 達)
はじめに
A プロトロンビン時間(PT)
1 測定原理/2 正常値
B 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)
1 測定原理/2 正常値
C 検査値の解釈・注意点
1 PT,APTTの短縮/2 PTの延長/
3 APTTのみの延長/4 PT,APTTの延長
D 臨床的意義
1 術前スクリーニング:硬膜外麻酔・脊髄くも膜下麻酔/2 術中検査
E point-of-care(POC)モニター
2 アンチトロンビン(AT),トロンビン─アンチトロンビン複合体(TAT)(香取信之)
A 凝固抑制因子の生理作用
1 アンチトロンビン(AT)/2 プロテインC(PC),プロテインS(PS)
B AT, PC, PSの測定原理
1 ATの測定/2 PCの測定/3 PSの測定
C AT, PC, PSの臨床的意義
3 凝固因子活性(山浦 健)
A 検査の原理
1 凝固因子の測定法/2 インヒビターの測定法/3 免疫学的方法
B 検査結果の解釈
1 凝固活性の測定の解釈/
2 交差混合試験(クロスミキシングテスト:凝固因子インヒビター定性)の解釈
C 生理作用
1 第I因子/2 第XIII因子/3 第II因子,プロトロンビン/
4 第X因子/5 第VII因子/6 第IX因子/
7 第VIII因子/8 第V因子/9 第XII因子,第XI因子
D 臨床的意義
1 因子活性低下による臨床症状/2 先天性と後天性/
3 凝固の亢進/4 治療
4 フィブリノゲン濃度(佐藤恒久,鈴木祐二)
A フィブリノゲンとは
1 一次止血と二次止血/2 フィブリノゲンの特徴
B フィブリノゲンの異常値と測定の意義
1 フィブリノゲンの濃度/2 濃度測定の意義
C フィブリノゲン測定の実際
1 フィブリノゲンをどのように定量するか/
2 Clauss法(トロンビン時間法)/
3 PT derived法(PT法,プロトロンビン時間誘導法)/4 その他の方法
D フィブリノゲンのpoint-of-careモニター
1 point-of-careモニターとは/2 フィブリノゲンの評価
E 検査値の解釈:シミュレーションモデル
1 検査値の活用/2 シミュレーションモデル
5 血小板機能検査(平方秀男)
はじめに
A さまざまな検査方法
1 簡便な検査法/
2 シェアーストレス下における血小板粘着・凝集を利用するもの/
3 血液の粘弾性試験と組み合わせて評価するもの/
4 特別な検査方法/5 血小板凝集計/6 特に興味深い検査機器
B 血小板turnoverと血小板数
1 血小板造血/2 turnover
おわりに
6 全血凝固point-of-care testing:TEG(R),ROTEM(R),Sonoclot(R)(平﨑裕二)
はじめに
A 周術期止血的輸血治療と全血凝固POCT
B 全血凝固POCTの特徴
C TEG(R)/ROTEM(R)
1 測定原理:Hartertのトロンボエラストグラム/
2 TEG(R) 6sを用いた血液凝固検査/
3 ROTEM(R) sigmaを用いた血液凝固検査
D Sonoclot(R)
1 測定原理/2 Sonoclot signatureの読み方
E 全血凝固POCTに基づく輸血アルゴリズムとガイドライン
1 輸血治療の戦略/2 血液希釈の影響/3 血小板かフィブリノゲンか/
4 止血治療アルゴリズム/
5 輸血療法ガイドラインにおける全血凝固POCTの位置づけ/
6 全血凝固POCTの限界と課題
おわりに

III.線溶系検査の測定原理と解釈
1 フィブリン・フィブリノゲン分解産物(FDP),Dダイマー(川島信吾)
はじめに
A 血管内での線溶作用
1 一次線溶/2 二次線溶
B FDPとDダイマーとは
1 一次線溶分解産物/2 二次線溶分解産物
C 測定法
1 原理/2 ラテックス凝集試験/
3 ラテックス凝集免疫比濁法(LAIA)/4 エバネセント波による蛍光免疫測定
D 臨床的使用
1 FDP/2 Dダイマー/3 評価基準/4 臨床的意義/
5 DICの病型分類/6 Dダイマーの可能性/7 t-PAとプラスミノゲン
2 プラスミン─α2プラスミンインヒビター複合体〔PIC(PAP)〕(中山力恒)
はじめに
A 線溶系におけるPICの位置づけ
B PICの測定原理
1 なぜPICなのか/2 PICの測定方法/3 検査結果の解釈
C PICの臨床的意義
1 PICとDIC/2 PICと血栓・塞栓症

IV.周術期に遭遇する血液凝固異常と検査所見・治療
1 凝固因子欠乏症(小高光晴)
はじめに
A 症例提示
B 疫 学
C 各 論
1 先天性血友病A・B/2 後天性血友病A/3 第Ⅶ因子欠乏症/
4 第因子欠乏症
2 アンチトロンビン欠乏症,プロテインC/S欠乏症(香取信之)
はじめに
A AT欠乏症
1 先天性AT欠乏症/2 後天性AT欠乏症
B プロテインC欠乏症
1 先天性PC欠乏症/2 後天性PC欠乏症
C プロテインS欠乏症
1 先天性プロテインS欠乏症/2 後天性プロテインS欠乏症
D 症例提示
1 術前/2 術中/3 術後
3 血小板異常症(中嶋康文)
A 血小板の生理的機能と役割
B 血小板機能異常症
1 血小板無力症/2 ベルナール・スーリエ症候群/
3 後天性血小板機能異常症/4 症状/5 診断・検査/
6 治療
C 先天性von Willebrand病
1 背景/2 症状/3 検査所見/4 治療
D 後天性von Willebrand症候群(acquired von Willebrand syndrome:AvWS)
1 疫学/2 症状/3 診断/4 治療
4 播種性血管内凝固症候群(DIC)(奥田 淳)
A 概 念
B 原因となる基礎疾患
C 発症機序
1 敗血症/2 造血器悪性腫瘍・固形がん/3 血管性疾患
D 病型分類
1 線溶抑制型DIC/2 線溶亢進型DIC/3 線溶均衡型DIC/
4 検査項目と検査所見
E DIC診断基準と検査所見の特徴
F 治 療
1 遺伝子組換えヒトトロンボモジュリン/2 アンチトロンビン製剤/
3 合成プロテアーゼ阻害薬/4 未分画ヘパリン/5 トラネキサム酸/
6 輸血療法
G 症例提示
1 症例/2 解説1/3 その後の経過/4 解説2
おわりに
5 外傷性凝固障害(船曵知弘)
はじめに
A 外傷における死の三徴
B 外傷における凝固異常
C 必要な外来検査
D 鋭的損傷での凝固障害
E 外傷凝固異常への対策と治療
1 輸液に関して/2 血圧に関して/3 輸血に関して
F 症例提示
1 患者概要/2 病院到着後経過/3 解説
おわりに
6 心臓外科手術に伴う凝固異常(佐藤正顕)
【症例】
A 人工心肺開始後の止血凝固系
1 血液希釈による希釈性凝固障害/2 消費性の凝固因子低下/
3 プラスミン産生の亢進/4 血小板の変化(数,機能)
B 人工心肺中の抗凝固管理
1 ヘパリンのモニタリング:活性化凝固時間(ACT)について/
2 ヘパリン抵抗性/3 人工心肺中のヘパリン抵抗性/
4 ヘパリン抵抗性の治療
C 人工心肺離脱後の止血凝固管理
1 プロタミン投与後のACTの延長=プロタミン追加投与?/
2 血液弾性粘稠度検査(ROTEM(R),TEG(R)を用いた検査)/
3 凝固因子低下の治療/4 線溶亢進の診断と治療/
5 ヘパリンのリバウンド現象/6 プロタミンの凝固阻害作用/
7 血液弾性粘稠度検査を用いた止血治療アルゴリズムの使用
7 産科播種性血管内凝固症候群(DIC)(角倉弘行)
A 産科DICの原因
B 産科DICの診断
C 産科DICの治療
D 症例提示
1 癒着胎盤(希釈性凝固障害)の一例/2 羊水塞栓(消費性凝固障害)の一例
8 ヘパリン起因性血小板減少症(前田琢磨)
はじめに
【症例】
A HITの病態
1 HITは血栓が問題である/2 HITの出血はまれ/
3 HIT抗体は抗PF4─ヘパリン抗体
B HITの診断
1 HITの診断は難しい/2 診断
C 治 療
D 心臓血管外科手術が予定されるHIT患者における対応
1 HIT患者の心臓手術の方針決定に必要な知識は何か
2 アルガトロバンで人工心肺を回すことの地獄
おわりに
9 薬剤性凝固障害:抗凝固薬(ワルファリン,ヘパリン類,抗トロンビン薬,抗FⅩa薬)および抗血小板薬(市川順子)
【症例】
はじめに
A 抗凝固薬
1 アンチトロンビン(AT)依存性抗凝固薬/2 AT非依存性抗凝固薬
B 抗血小板薬
1 TXA2合成阻害薬/2 ADP受容体拮抗薬/
3 抗血小板薬のモニタリング
C 薬剤性凝固障害のリスク評価法
D 待機的手術における抗凝固薬,抗血小板薬の休薬について
E 薬剤溶出性ステント(DES)留置後の抗血小板薬休止とステント血栓症との関連
F DOACと腎機能