誰にでも理解できる緩和ケアの実践書

誰にでも理解できる緩和ケアの実践書

著者 花岡一雄
ISBN 978-4-7719-0443-9
発行年 2015年
判型 B5
ページ数 320ページ
本体価格 7,800円(税抜き)
電子版 なし


わが国における緩和ケアのさらなる推進のために!

現在,わが国における医療用麻薬の使用量が先進諸国よりかなり少ないために,緩和ケアの浸透性が悪いと判断され,緩和ケアが,がん医療において十分に果たされていないことが推測された。すなわち,医療者間で,がん医療における緩和ケアの重要性の認識がまだまだ不足している,また国民に対して緩和ケアを正しく周知すること,および正しく理解してもらうという基本的な事項が進んでいないと考えられた。
多くの医師が“もう治療法がありません。緩和ケアかホスピスへ”という言葉を使うという話もあるように,一般社会においても“緩和ケア”は,もう手立てのない最後の医療手段のようにとらえられることが多い。緩和ケアは決して終末期医療ではないことを,訴えていく必要がある。そして,がん診療に緩和ケアを組み入れた診療体制にしていくことが重要である。 (序文より)

基礎編
I がん性疼痛はなぜ起きるか(表 圭一)
はじめに
A 侵害受容性の痛み
B 神経障害性の痛み
C 内臓の痛み
D 骨の痛み
おわりに

II がん性疼痛をどのように理解すればよいのか(橋本龍也/齊藤洋司)
はじめに
A トータルペイン(全人的苦痛)とは
B 身体的苦痛
C 精神的苦痛
D 社会的苦痛
E スピリチュアルペイン(霊的苦痛)

III がん疼痛の評価方法(佐藤哲観)
はじめに
A 痛みを評価することの重要性
B 痛みの評価方法
C 痛み治療に対する反応を評価する
D 痛み治療を行ううえでのバリアを探索する
まとめ

臨床編
I 身体的苦痛に対する薬物療法
A.非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)(大西佳子/細川豊史)
はじめに
A 作用機序
B NSAIDsの薬理作用
C NSAIDsの副作用
D NSAIDsの分類
E がん性疼痛治療におけるNSAIDs使用のコツとポイント
F 神経障害性疼痛とNSAIDs
おわりに
B.アセトアミノフェン(佐伯 茂)
はじめに
A アセトアミノフェンの歴史
B 構造式と薬物動態
C 作用機序
D アセトアミノフェンの薬物動態
E 本邦でがん性疼痛に使用が可能な製剤
F がん性疼痛におけるアセトアミノフェン
G 副作用
H 薬物相互作用
I アセトアミノフェン中毒の治療
おわりに
C.コルチコステロイド(田邉 豊)
はじめに
A コルチコステロイドの作用機序と薬理作用
B コルチコステロイドの種類
C 適用となる病態
D コルチコステロイドの投与法
E 副作用と対策
D.オピオイド
1 弱オピオイド:コデイン/ジヒドロコデイン/トラマドール(山口重樹/白川賢宗/Donal R. Taylor)
はじめに
A コデインリン酸塩水和物(コデイン)
B ジヒドロコデインリン酸塩(ジヒドロコデイン)
C トラマドール塩酸塩(トラマドール)
D CYP2D6とコデイン,ジヒドロコデイン,トラマドール
2 拮抗性鎮痛薬:ペンタゾシン/ブプレノルフィン(井手康雄)
はじめに
A ペンタゾシン
B ブプレノルフィン
まとめ
3 強オピオイド:モルヒネ(有田英子)
はじめに
A モルヒネの作用と特徴
B モルヒネ製剤の適用と種類
C モルヒネ製剤の適用および禁忌と注意すべき併用薬
おわりに
4 強オピオイド:オキシコドン(松田陽一)
はじめに
A オキシコドンの特徴
B オキシコドンを投与するときの注意点
C 各種オキシコドン製剤の投与法
5 強オピオイド:フェンタニル(林 章敏)
はじめに
A フェンタニルの特徴
B フェンタニルのpharmacodynamics(薬力学)
C フェンタニルのpharmacokinetics(薬物動態学)
D フェンタニルの特徴(ほかのオピオイドとの比較)
E フェンタニルの臨床
F フェンタニル貼付剤を使用する際のケアの留意点
G フェンタニルの耐性について
E.鎮痛補助薬
1 抗うつ薬:アミトリプチリン/デュロキセチン/ミルナシプラン(川股知之)
はじめに
A 抗うつ薬の種類と特徴
B 抗うつ薬の鎮痛機序
C 投与方法
D 化学療法による末梢神経障害に対する抗うつ薬の鎮痛効果
2 抗不安薬(後閑 大)
はじめに
A がん性痛と痛みの閾値
B 緩和ケアの鎮痛補助薬
C 抗不安薬の意義
D ベンゾジアゼピン系薬物の薬理作用
E セロトニン作動性薬物の薬理作用
F 実際の使用方針
G 抗不安薬の副作用
おわりに
3 抗痙攣薬(具志堅 隆)
はじめに
A 主な抗痙攣薬
B 実践―抗痙攣薬の選択
おわりに
4 抗不整脈薬:リドカイン/メキシレチン(柴田政彦)
はじめに
A 歴 史
B 抗不整脈薬がなぜ痛みに効くのか?
C 抗不整脈薬の利点
D 抗不整脈薬の欠点
E 適 用
F 投与方法
G 副作用
5 NMDA受容体拮抗薬(矢島 直)
はじめに
A ケタミン(ケタラール(R))
B デキストロメトルファン(メジコン(R))
まとめ
6 α2受容体アゴニスト(木村 哲/西川俊昭)
はじめに
A α2受容体アゴニストの作用
B 代表的α2受容体アゴニスト:デクスメデトミジンとクロニジン
C 緩和ケア領域におけるα2受容体アゴニストの有用性
まとめ
7 末梢神経障害性疼痛治療薬(住谷昌彦/山内照夫)
はじめに
A プレガバリン
B プレガバリンの使用方法
C 緩和医療においてプレガバリンが果たす役割
D ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤(ノイロトロピン(R))
E 緩和医療においてノイロトロピン(R)が果たす役割

II WHO方式がん性疼痛治療法(篠原 仁/下山恵美/下山直人)
はじめに
A WHO方式がん性疼痛治療法の歴史・社会的背景
B WHOがん性疼痛治療指針
C WHO方式と実際

III オピオイドの使い方の基本的概念(小川節郎)
はじめに
A オピオイドについて“知る”必要性
B オピオイドの基本的薬理学
C オピオイドに対する患者の意識と対応
D オピオイドによる治療の開始時期
E オピオイド投与経路について
F オピオイド継続中における疼痛管理
G 特殊な病態におけるオピオイドの使用
H オピオイド・ローテーション

IV オピオイドの副作用への対処法(原 聡)
はじめに
A オピオイドの薬理作用
B 投与開始からの副作用
C 投与中に見られる副作用
D 増量・過量による副作用
E そのほか

V 神経ブロック療法
A.交感神経ブロック(河西 稔)
はじめに
A 交感神経ブロックで痛みが和らぐ機序
B 身体各部位における交感神経ブロック
おわりに
B.知覚神経ブロック(山口敬介/井関雅子)
はじめに
A がん性疼痛における知覚神経ブロックの意義
B 対象疾患
C ブロック時の一般的注意事項
D 知覚神経ブロックの実際
E 症例呈示
C.脊髄鎮痛法:硬膜外鎮痛法,脊髄くも膜下鎮痛法(益田律子)
はじめに
A 脊髄鎮痛とは
B 脊髄鎮痛に用いられる薬物
C 脊髄鎮痛の意義
D 全身投与経路から脊髄投与経路に変更する場合の利点と欠点
E 脊髄鎮痛の適用,脊髄鎮痛導入前のチェックリスト
F 硬膜外鎮痛と脊髄くも膜下鎮痛の特徴:どちらを選ぶか
G 全身経路から脊髄経路への変更方法の実際
H 長期カテーテル留置手技と感染対策
I 副作用,合併症
J そのほか管理上の諸問題
K 全身性鎮痛から脊髄鎮痛への変更が奏効した具体症例
おわりに

VI 持続皮下・静脈内注入療法(橋口さおり)
はじめに
A 持続静注
B 持続皮下注
C 薬 物
D 静脈および皮下注によるオピオイド投与の実際
E PCA(patient-controlled analgesia:患者自己調節鎮痛)

VII 放射線療法(大熊加惠/中川恵一)
はじめに
A 緩和ケアとしての放射線治療
B 生存期間との兼ね合い
C 放射線治療の流れ
D 各 論
E 今後の緩和ケアにおける放射線治療

VIII 理学療法(リハビリテーション)(吉澤明孝/吉澤孝之)
はじめに
A 緩和におけるリハビリテーションの目的
B リハビリテーションの内容
C 終末期がん患者のリハビリテーションの実際
まとめ

IX 漢方療法(世良田和幸)
はじめに
A 漢方医学とは
B 漢方医学とがん
C 漢方医学の基礎
D がんに対する漢方治療

X 鍼灸治療(楳田高士/森本昌宏)
はじめに
A 鍼灸治療の概要
B 鍼灸治療と緩和ケアについて
C 緩和ケアにおける患者の愁訴と鍼灸治療
D 鍼灸治療を実施する時期について
E 鍼灸治療の実際(手技)について
F 緩和ケアにおける鍼灸治療の注意点(有害事象の防止)
おわりに

XI 精神的苦痛に対する心理療法(佐藤 智)
はじめに~心理療法とは~
A 心理療法の基本
B スピリチュアルペインの緩和
おわりに~達成感について~

XII 社会的苦痛に対するメディカルソーシャルワーカー(MSW)の役割(渡邊茂子)
はじめに
A 全人的苦痛(トータルペイン)の理解
B SW(social worker)とは
C MSWとは
D MSWの業務
E MSWの意見
F 対応に必要な知識・制度などの主な情報

XIII 在宅医療における緩和ケア(行田泰明/佐久間詠理/渡邉淳子)
はじめに
A 在宅緩和ケアの現状
B 在宅緩和ケアの特徴
C 医療連携
D 在宅訪問診療システム
E 在宅医療におけるがん性疼痛対策
F 在宅医療における栄養管理
G 在宅医療における緩和ケアの実際
おわりに