周術期深部静脈血栓/肺血栓塞栓症

周術期深部静脈血栓/肺血栓塞栓症

編集 瀬尾憲正・古家 仁
ISBN 978-4-7719-0413-2
発行年 2013年
判型 B5
ページ数 264ページ
本体価格 7,400円(税抜き)
電子版 なし


深部静脈血栓/肺血栓塞栓症(静脈血栓塞栓症)にかかわる必要不可欠な最新の知見を体系的に収載!
総論として疫学、発症機序、診断・治療、予防法、各論として各診療科における予防・診断・治療、リスクマネジメント、予防ガイドラインなどについて、わが国のエクスパートの先生方に執筆いただきました。

国内外において、臨床レベルとともに医療政策レベルにおいても深部静脈血栓/肺血栓塞栓症(静脈血栓塞栓症)の予防はダイナミックに動き始めている。周術期の深部静脈血栓/肺血栓塞栓症(静脈血栓塞栓症)予防を隅々まで広げて行くためには、各外科系の手術麻酔を担当する麻酔科専門医が中心的な役割を担わなければならない。(序文より抜粋)

I.総論
1.疫学(黒岩政之)
周術期PEの発症率
周術期PEの死亡率
1 手術部位別に見た発症リスク/2 年齢および性別による特徴/3 危険因子

2.病態(呂 彩子)
リスク因子から見た周術期VTE
1 多因子疾患としてのVTE/2 周術期VTEのリスク因子/
3 周術期VTEの診療科/4 法医学的観点から見た周術期VTEの問題点
周術期VTEの病理学的特徴
1 下肢・骨盤部のDVTの3型
2 下腿型DVT初期発生源としてのヒラメ筋静脈
3 ヒラメ筋静脈血栓の成長と灌流経路
4 大腿部静脈への二次性血栓(フリーフロート血栓)形成
5 急性広範性肺血栓塞栓症
6 acute on chronic PTEとchronic thromboembolic pulmonary hypertension
病因から見た周術期VTEの特徴と予防
1 VTEの院内発症症例の特徴
2 ヒラメ筋静脈の特性から見たVTE予防
3 周術期VTE予防のポイント

3.症状、検査、診断(北口勝康)
麻酔・手術前のDVT
1 麻酔前評価/2 検査
麻酔・手術中のPTE
1 術中発症症例の特徴/2 所見/3 心エコー/4 その他
術後
1 症状/2 所見/3 検査/4 画像診断

4.治療
A 内科的治療
i)抗凝固薬(古家 仁)
未分画ヘパリン(unfractionated heparin:UFH)
1 作用機序/2 種類/3 薬物動態/4 使用方法/
5 投与上の注意/6 禁忌/7 合併症
低分子量ヘパリン
1 作用機序/2 薬物動態/3 使用方法/4 投与上の注意/
5 禁忌/6 合併症
Xa阻害薬フォンダパリヌクス
1 作用機序/2 薬物動態/3 使用方法/4 投与上の注意/
5 禁忌/6 合併症
ワルファリン
1 作用機序/2 薬物動態/3 使用方法/4 禁忌/
5 投与上の注意/6 合併症
静脈血栓塞栓症(VTE)予防に対する新しい抗凝固薬
1 トロンビン阻害薬/2 Ⅹa阻害薬

ii)カテーテルインターベンション(大西隆行、丹羽明博)
PE再発予防のカテーテルインターベンションの基本的方針:下大静脈フィルタ
1 フィルタの適用、有効性、合併症/2 フィルタの種類と特徴
PE治療のカテーテルインターベンションの基本的方針
1 カテーテルインターベンションの適用、有効性、合併症
2 カテーテルインターベンションの種類

B 外科的治療(安藤太三)
深部静脈血栓症
1 DVTの治療方針/2 外科的血栓摘除術
急性肺血栓塞栓症
1 急性肺血栓塞栓症の治療方針
2 血栓の外科的摘除の適応
3 直視下血栓摘除の方法
4 周術期静脈血栓塞栓症に対して外科的治療を行った症例
5 外科的血栓摘除の手術成績
慢性肺血栓塞栓症
1 手術適応/2 血栓内膜摘除の方法/3 外科的治療成績

5.予防(保田知生)
VTEの危険因子
術前評価と予防計画
術前VTEに抗凝固薬を用いる場合の注意点
理学的予防方法
1 弾性ストッキング
2 間歇的空気圧迫法(下腿大腿圧迫型、足底足関節圧迫型)
3 そのほかの血流改善医療機器/4 各種圧迫治療器の併用効果/
5 主な合併症と対策/6 理学的予防方法のまとめ
薬物的予防方法
1 生物学的製剤/2 合成製剤/
3 そのほか分類不能(低分子デキストラン、アスピリン)/
4 薬物的予防による主な合併症/5 まとめ
術中予防
術前に行う予防と重症化防止策
術後の予防
中心静脈カテーテル(CVC)留置に伴うVTE予防
病院としての取り組み具体例
地域医療への取り組み

II.各論
1.産婦人科
A 産科(小林隆夫)
産科領域におけるVTEの発症頻度
1 第1回全国調査(1991~2000年)
2 第2回全国調査(2001~2005年)
3 日本病理剖検輯報および日本産婦人科医会での調査
妊産婦のVTEリスク評価
帝王切開時のVTE予防
1 早期歩行および積極的な運動/2 弾性ストッキング/
3 間歇的空気圧迫法/4 低用量未分画ヘパリン/
5 用量調節未分画ヘパリン/6 用量調節ワルファリン/
7 低分子量ヘパリンおよびⅩa阻害薬/8 出血リスク評価/
9 ガイドライン使用上の注意/
10 浜松医療センターで施行している術前リスク評価と予防の実際
症状、診断
治療の手順
妊娠中の管理
1 VTE治療後の妊娠中の予防/2 VTEの既往妊婦/
3 VTEの既往がない血栓性素因を有する妊婦/
4 人工心臓弁を装着している妊婦/5 授乳に関して/
6 下大静脈フィルタに関して

B 婦人科(小林 浩)
現状
周術期VTE予防対策マニュアル
特徴
1 婦人科疾患患者では術前からVTEが多い
2 がんと血栓症の関係
予防・診断・治療
1 予防すべき対象患者/2 実際の予防法/
3 予防すべきではない対象者/4 硬膜外麻酔の併用/
5 実際のVTE予防法

2.整形外科(藤田 悟)
周術期VTEの現状
1 人工股関節全置換術および人工膝関節全置換術
2 股関節骨折手術/3 脊椎・脊髄手術/4 その他の手術
整形外科関連のガイドラインの比較

3.外科(左近賢人)
外科領域における周術期VTEの現況
1 術後VTEの発症頻度/2 周術期VTEの特徴
周術期VTEの予防の実際
1 わが国のVTE予防ガイドライン
2 外科領域におけるVTE予防の現状/3 抗凝固療法の実際
周術期VTEの予防、診断、治療の実際
1 VTE予防における注意点/2 PTEの診断を何で行うのか/
3 治療における抗血栓薬の考え方

4.泌尿器科(島居 徹)
泌尿器科患者の周術期静脈血栓塞栓症(VTE)の現状
泌尿器科患者の周術期VTEの特徴
泌尿器科患者の周術期VTEの予防、診断、治療について
1 泌尿器科患者の周術期VTEの予防について
2 泌尿器科患者の周術期VTEの診断について
3 泌尿器科患者の周術期VTEの治療について

5.脳神経外科(毛利元信、鈴木秀謙、滝 和郎)
発生頻度
リスク評価
予防法
欧米および本邦における脳神経外科領域の各DVT/PTE予防法の効果と合併症
1 脳卒中/2 脳梗塞/3 脳内出血/4 メタアナリシス

6.救急・集中治療分野(田中啓治、山本 剛、圷 宏一)
ICUにおけるVTEの頻度
ICUにおけるPTEの頻度
診断法
ICUにおけるDVTやPTEの危険因子
1 人工呼吸器およびCOPD関連血栓症/2 カテーテル血栓症
予測法
ICUにおけるDVTやPTEの予防法
予防対策の実施

7.硬膜外麻酔と静脈血栓塞栓症(堀田訓久)
硬膜外麻酔による硬膜外血腫
1 発生メカニズム/2 発生頻度/3 診断/4 治療
予防的抗凝固療法と硬膜外麻酔・硬膜外鎮痛
1 抗凝固薬と硬膜外血腫のリスク
2 予防的抗凝固療法を行う場合の硬膜外麻酔の適用
3 ガイドラインに基づいた硬膜外麻酔の運用

8.超音波ガイド下末梢神経ブロックと静脈血栓塞栓症(山内正憲)
神経ブロックガイドライン
1 本邦の超音波ガイド下区域麻酔(神経ブロック)ガイドライン
2 American Society of Regional Anesthesia and Pain Medicine(ASRA)ガイドライン
3 European Society of Anaesthesiology(ESA)ガイドライン
4 The Austrian Society for Anesthesiology and Intensive Care Medicineガイドライン
5 各ガイドラインのまとめ
各ブロックの方法
1 頭頸部の神経ブロック/2 上肢の神経ブロック/
3 下肢の神経ブロック/4 体幹の神経ブロック

9.医療訴訟と静脈血栓塞栓症(木内淳子)
判例の紹介
1 浦和地方裁判所、平成12年2月21日判決、判例タイムズ1053;188
2 高松地方裁判所、平成22年3月29日判決、判例タイムズ1358;165
3 岡山地方裁判所、平成14年11月26日判決、判例タイムズ1138;212
4 福岡高等裁判所、平成18年7月13日判決、判例タイムズ1227;303
肺血栓塞栓症の判例における問題点とその対応
1 予見可能性と結果回避義務
2 判例において要求される医療水準
3 ガイドラインに関する判例での位置づけ
4 手術における医師の説明義務について
5 インフォームドコンセント(IC)に関して
6 医師が手術に関する説明をするときの言葉

10.静脈血栓塞栓症予防ガイドライン―海外の動向と本邦の展望―(中村真潮)
現在のVTE予防ガイドラインの策定
VTE予防ガイドライン公開後の状況
新しく承認された抗凝固薬
海外のVTE予防ガイドラインの動向
VTE予防ガイドライン改定への展望

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