筋弛緩薬

筋弛緩薬

編集 岩崎 寛
ISBN 978-4-7719-0373-9
発行年 2010年
判型 B5
ページ数 338ページ
本体価格 9,000円(税抜き)
電子版 なし


筋弛緩薬は臨床麻酔において極めて重要なものであり,近年,臨床使用薬物,投与法および拮抗に関して大きく変化してきています。

・基礎編として筋弛緩薬の歴史,神経筋接合部の構造や生理を解説し,筋弛緩薬の薬理作用について理解できるよう構成。
・臨床編では各種の筋弛緩薬の薬理学的作用の特徴を解説し,麻酔導入から維持,そして拮抗までの一連の麻酔管理における筋弛緩薬の上手な使い方,筋弛緩程度の適切な維持,そして至適筋弛緩拮抗について臨床的に平易に記載。

【基礎編】
1.筋弛緩薬の変遷の歴史(岩崎 寬)
はじめに
筋弛緩薬の起源
筋弛緩薬臨床応用の歴史
合成筋弛緩薬の開発
1 ガラミン(gallamine)/2 デカメトニウム(decamethonium)/
3 スキサメトニウム〔suxamethonium chloride hydrate
(サクシニルコリン:succinylcholine chloride)〕/
4 パンクロニウム(pancuronium)/
5 ベクロニウム(vecuronium),ロクロニウム(rocuronium)
日本における筋弛緩薬の変遷
1 d-ツボクラリン〔dTc(アメリゾールR)〕/2 スキサメトニウム(サクシンR)/
3 ヘキサフルオレミウム(マイラキセンR)/
4 アルクロニウム(ディアルフェリンR)/
5 ガラミン(ガラミンR)/6 パンクロニウム(ミオブロックR)/
7 ベクロニウム(マスキュラックスR)/8 ロクロニウム(エスラックスR)
理想的な筋弛緩薬の開発と特異的拮抗薬の臨床導入

2.神経筋接合部の解剖と生理
A 神経筋接合部の基本構造(矢島 直)
はじめに
筋肉の構造
1 張力発生のための構造/2 筋細胞の骨格/
3 筋線維中のミオシン分子数と発生する張力を推定する
神経筋伝達
神経筋接合部の機能
神経筋接合部の解剖
1 シナプス前領域/2 シナプス間隙/3 シナプス後膜
神経筋接合部の形成
1 神経と筋肉の発生/2 神経筋接合部の発生
神経筋接合部構造の多様性と生理学
神経筋接合部の病理
1 先天性筋無力症症候群/2 後天性神経筋伝達異常
まとめ

B シナプス伝達(成松英智,新谷知久)
はじめに
概要
運動神経末端
1 シナプス小胞と動員/2 運動神経興奮に伴うACh放出
接合部後膜
1 ACh受容体と後膜脱分極/2 コリンエステラーゼ(ChE)
神経筋伝達
1 終板電位/2 終板電位と放出素量数/
3 終板電位のrundown/4 終板電位からの活動電位発生

C シナプス伝達後の筋線維収縮(新谷知久,成松英智)
はじめに
骨格筋の筋線維型と筋原線維
筋フィラメント
興奮収縮連関
1 T管系による活動電位の伝達/
2 T管系の脱分極による筋漿中のCa2+上昇機構
筋収縮機序
悪性高熱症
直接筋収縮を抑制する薬物
1 ダントロレン/2 テトロドトキシン/
3 吸入麻酔薬/4 局所麻酔薬/5Mg2+

3.筋弛緩薬の作用機序(成松英智,新谷知久)
はじめに
非脱分極性筋弛緩薬
1 接合部後膜に対する作用/2 運動神経末端に対する作用/
3 接合部真性コリンエステラーゼに対する作用/
4 神経筋伝達に対する総合的作用
脱分極性筋弛緩薬
1 phaseⅠブロック/2 phaseⅡブロック/
3 神経筋伝達に対する総合的作用
筋収縮抑制薬
中枢性筋弛緩薬
1 チザニジン(テルネリンR)/2 バクロフェン(リオレサールR)/
3 エペリゾン(ミオナールR)/4 クロルフェネシン(リランキサーR)
抗生物質
1 アミノグリコシド系抗生物質/2 ポリペプチド系抗生物質/
3 テトラサイクリン系抗生物質/4 リンコマイシン系抗生物質
吸入麻酔薬

4.生体内における筋弛緩薬の薬物動態(坪川恒久)
はじめに
薬物動態に関する基礎的用語の解説
1 コンパートメントモデル/2 分布容積/3 クリアランス/
4 臓器クリアランス/5 持続投与時の濃度変化/
6 反復ボーラス投与時の濃度変化/7 2コンパートメントモデル/
8 3コンパートメントモデル/9 濃度─反応曲線/
10 effect site/11 Sheinerのモデル/12 蛋白結合率/
13 代謝物の活性の問題
日本で臨床的に使用される筋弛緩薬の特徴
1 スキサメトニウムの薬物動態/2 パンクロニウムの薬物動態/
3 ベクロニウムの薬物動態/4 ロクロニウムの薬物動態
各種条件が筋弛緩薬の薬物動態に与える影響
1 性別/2 年齢:小児/3 年齢:高齢者/4 肥満/5 熱傷/
6 肝機能障害/7 腎機能障害(透析患者)/8 心拍出量/
9 妊娠時/10 併用薬物
おわりに

5.筋弛緩薬の効果発現に影響を与える諸因子(加藤孝澄)
はじめに
投与量と作用発現時間・作用持続時間
骨格筋の種類の影響
循環の影響
薬物相互作用
1 脱分極性筋弛緩薬と非脱分極性筋弛緩薬の相互作用/
2 異なる非脱分極性筋弛緩薬間の相互作用/
3 同一非脱分極性筋弛緩薬の時間分割投与
体温
酸塩基平衡
1 呼吸性酸塩基平衡の影響/2 代謝性酸塩基平衡の影響
主な電解質イオンの影響
1 カルシウム/2 マグネシウム/3 カリウム
その他の薬物との相互作用
1 吸入麻酔薬/2 抗生物質/3 リチウム/4 抗痙攣薬
年齢

6.筋弛緩薬の神経筋接合部以外への影響(加藤正人)
はじめに
眼科麻酔と筋弛緩薬
1 眼圧と筋弛緩薬/2 眼科外傷緊急手術と筋弛緩薬
胎児手術と筋弛緩薬
筋弛緩薬とアレルギー反応

7.神経筋遮断効果の評価(モニタリング)(鈴木孝浩)
はじめに
筋弛緩モニターの種類
1 筋張力モニター(mechanomyogram:MMG)/
2 筋電図モニター(electromyogram:EMG)/
3 加速度モニター(acceleromyogram:AMG)/4 圧電気モニター
神経電気刺激
1 刺激電極/2 刺激強度
神経刺激モード
1 単一刺激/2 四連(train-of-four:TOF)刺激/
3 ポストテタニックカウント(post-tetanic counts:PTC)/
4 ダブルバースト刺激(double burst stimulation:DBS)/
5 テタヌス刺激
筋の種類による筋弛緩効果の違い
1 作用の強さ/2 作用発現/3 どの筋でモニタリングするか
筋弛緩モニタリング時の注意点
神経筋機能回復を示す臨床症状
筋弛緩モニターのピットフォール

8.筋弛緩薬に対する拮抗の作用機序(中塚秀輝,佐藤健治)
はじめに
抗コリンエステラーゼ薬による拮抗機序
1 AChE阻害による拮抗機序/
2 抗コリンエステラーゼ薬によるAChEの阻害様式/
3 AChE阻害以外の作用機序
抗コリンエステラーゼ薬の薬物動態と薬力学
抗コリンエステラーゼ薬の問題点
1 天井効果/2 副作用/3 拮抗を阻害する因子
抗コリンエステラーゼ薬以外の薬物による拮抗機序
1 スガマデクス/2 4-アミノピリジン
おわりに

【臨床編】
1.筋弛緩薬の薬理作用と特性(稲垣喜三)
はじめに
脱分極性筋弛緩薬
スキサメトニウム
非脱分極性筋弛緩薬
1 構造と薬理作用/2 非脱分極性筋弛緩薬の薬理学/
3 妊娠と非脱分極性筋弛緩薬/4 非脱分極性筋弛緩薬の副作用

2.筋弛緩薬の臨床使用の実際
A 麻酔導入時の筋弛緩薬の使い方(津崎晃一)
はじめに
通常の麻酔導入
1 吸入麻酔薬による麻酔導入(gaseous induction)/
2 静脈麻酔薬による麻酔導入/
3 ラリンジアルマスクエアウェイ挿入と筋弛緩薬
迅速導入
1 RSI/2 RSIにおけるロクロニウムとスキサメトニウム/
3 迅速導入変法/4 priming principleとtiming principle
おわりに

B 麻酔維持時の筋弛緩薬の使い方(奥 格,中塚秀輝)
はじめに
単回投与法
持続投与法
目標制御注入(TCI)
麻酔維持に用いられる筋弛緩薬
1 パンクロニウム/2 ベクロニウム/3 ロクロニウム
これからの麻酔維持と筋弛緩薬

3.臨床的筋弛緩モニターの利用法とそのコツ(鈴木孝浩)
はじめに
臨床麻酔に必要な筋弛緩モニター
刺激法の選択
モニタリング筋の選択
刺激電極の選択
刺激電流値の強度選択
加速度トランスデューサの部位選択
キャリブレーションの必要性
気管挿管の適切な時期
筋弛緩維持のポイント
筋弛緩からの至適回復

4.筋弛緩薬拮抗の至適時期とその方法(中塚秀輝,佐藤健治)
はじめに
筋弛緩効果の残存
筋弛緩効果の拮抗の目的
抗コリンエステラーゼ薬による拮抗
1 抗コリンエステラーゼ薬の作用発現時間/
2 抗コリンエステラーゼ薬の投与時期と投与量/
3 抗コリンエステラーゼ薬の副作用
筋弛緩効果の拮抗に影響する因子
適切な筋弛緩回復の程度
1 筋弛緩回復の臨床評価/2 神経筋モニターによる評価
スガマデクス
おわりに

5.特殊な病態下での筋弛緩薬の使い方
A 小児患者,臓器障害患者,帝王切開(門井雄司,齋藤 繁)
はじめに
小児患者
1 体組成の変化/2 神経筋接合部位の成熟度
臓器障害患者
1 肝障害患者/2 腎障害患者/3 重症患者
帝王切開
1 脱分極性筋弛緩薬/2 非脱分極性筋弛緩薬

B 神経・筋疾患患者,特殊な病態,集中治療領域(濱田 宏,河本昌志)
はじめに
神経・筋疾患患者
1 “神経”に異常を来す疾患/
2 “神経筋接合部”に異常を来す疾患/
3 “筋肉”に異常を来す疾患
特殊な病態
集中治療領域での使用
1 AChRのup-regulation/
2 重症疾患ミオパチー(critical illness myopathy:CIM)/
3 重症疾患多発ニューロパチー(critical illness polyneuropathy:CIP)/
4 ICUにおける筋弛緩薬使用上の注意