アナフィラキシーショック

アナフィラキシーショック

編集 光畑裕正
ISBN 978-4-7719-0344-9
発行年 2008年
判型 B5
ページ数 306ページ
本体価格 8,400円(税抜き)
電子版 なし


薬物を使用するすべての医師にとって、アナフィラキシーショックに遭遇したときの的確な診断・治療のために役立つ書。

・アナフィラキシーショックは発症頻度が少ないものの、適切な処置の時期を失うと重篤な結果を招くことがある急性期疾患である。反対に急性期疾患であるため、的確に診断し、ただちに適切な治療を行えば救命できうる疾患である。
・薬物を使用するときには、薬物の副作用をも含めた薬理学的作用を十分に理解して使用することはもちろんであるが、全く薬理作用とはかけ離れたアナフィラキシーのような有害事象を経験することがある。何科の医師であれ薬物を使用するすべての医師は、アナフィラキシーショックに対する診断と適切な治療に習熟する必要がある。また、アナフィラキシーの疑いがあるときには、安易にアナフィラキシーと診断するだけでなく原因薬物(抗原)の同定を行う必要がある。原因薬物を同定することは、患者と医師の双方にとって利益があり重要な事項であり、原因薬物の検査が終了した時点で初めてアナフィラキシーの治療が終了するといっても過言ではない。(はじめに より抜粋)

【基礎編】
1.アナフィラキシーショックの病態:免疫学(黒澤 伸)
アナフィラキシー反応とアナフィラキシー様反応
  アナフィラキシー反応:IgE が関与する狭義のアナフィラキシー/
  アナフィラキシー様反応:IgE が関与しないアナフィラキシー
IgE 依存性アナフィラキシーの免疫学的機序
IgE 非依存性アナフィラキシー(アナフィラキシー様反応)の発症機序
マウスの実験モデルから示唆されるアナフィラキシー発症機序
アナフィラキシーにおけるショックの標的臓器としての心臓
周術期におけるアナフィラキシーの免疫学的機序
  筋弛緩薬によるもの/ラテックスによるもの/抗生物質によるもの/
  造影剤によるもの/輸血製剤によるもの
アナフィラキシーに関与する主な化学伝達物質
  ヒスタミン/トリプターゼ/ヘパリン/プロスタグランジン/ロイコトリエン/
   血小板活性化因子/サイトカイン

2.アナフィラキシーショックの病態:生理学(芝本 利重)
アナフィラキシーの定義
アナフィラキシー反応
アナフィラキシーの診断基準
アナフィラキシーショックの病態
  アナフィラキシーショックの症状/二相性の反応/遷延症例/
  β アドレナリン受容体阻害薬/
   アナフィラキシーによる死因に占めるアナフィラキシーショック
アナフィラキシーショックの血行力学的なメカニズム
  心拍出量の低下/総末梢血管抵抗の低下
アナフィラキシー低血圧における肝血管収縮
実験動物モデルの標的臓器

3.アナフィラキシーと自律神経系(小山 省三)
自律神経系について
アレルギーについて
ショックについて

【臨床編】
1.発症頻度および疫学(宇賀神つかさ,横関 博雄)
発症頻度
性差・年齢
原因物質
重症度
再発性

2.アナフィラキシーの臨床診断(光畑 裕正)
アナフィラキシーの頻度
薬物による有害反応
  予測可能な有害反応/予測不可能な異常反応
薬物アレルギー反応の診断基準
薬物による遅延型過敏性反応における皮疹
アナフィラキシーとアナフィラキシー様反応
アナフィラキシーの臨床症状・所見
二相性アナフィラキシー
ショック発症後早期の検査
アナフィラキシー時の化学伝達物質
抗原(薬物)の同定
麻酔薬によるアナフィラキシー
  筋弛緩薬/ラテックス/静脈麻酔薬/膠質液/抗生物質/
  放射線造影剤/局所麻酔薬

3.アナフィラキシー時の心機能(横田 美幸)
症例呈示
  症例1/症例2
アナフィラキシーショックの病態
アナフィラキシー・アナフィラキシー様反応の循環動態への影響
アナフィラキシー時の心臓肥満細胞とその影響
肥満細胞の遊離伝達物質および作用器官としての心・血管および平滑筋
  ヒスタミン/ブラジキニン/プロスタグランジンとロイコトリエン/
  カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)

4.アナフィラキシー時の末梢循環,血行動態および各種臓器の血流(小森 万希子)
アナフィラキシーショック時の末梢循環
アナフィラキシーショック時の血行動態と各種臓器の血流

5.アナフィラキシーショック時の化学伝達物質の測定
    -トリプターゼ測定の意義-  (光畑 裕正,田島 圭子)
アナフィラキシー時のヒスタミン
アナフィラキシー時のトリプターゼ
症例呈示
  症例1/症例2/症例3
トリプターゼ値の解釈
アナフィラキシー時のトリプターゼ値増加の意味

6.確定診断のためのin vivo の検査法(田島 圭子,光畑 裕正)
皮内テスト
  検査の時期/検査の方法/皮内テストの意義
スクラッチテスト
プリックテスト
チャレンジテスト

7.確定診断のためのin vitro の検査法(菅原 由人)
アナフィラキシーにおけるin vitro の検査方法
  IgE 抗体/ヒスタミン遊離試験/cellular antigen stimulation test(CAST 法)/
   トリプターゼ/flow cytometric cellularantigen stimulation test(flow-CAST 法)/
   薬物によるリンパ球幼若化試験(lymphocyte stimulation test : LST)

8.治 療(光畑 裕正)
アナフィラキシーの病態
アナフィラキシー/アナフィラキシーショックに対する治療指針
  皮膚症状に対する治療/循環抑制(循環虚脱)に対する治療/
  呼吸症状に対する治療/併発症/薬物療法
アナフィラキシーと一酸化窒素
予防法

9.小児のアナフィラキシーショック(柴田 瑠美子)
アナフィラキシーの定義(診断基準)と重症度分類
小児のアナフィラキシーショックの頻度
小児のアナフィラキシーショックの原因
小児の食物アナフィラキシーの頻度と特徴
食物アナフィラキシーの原因食品
特殊な食物アナフィラキシー
  食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food dependent exercise induced anaphylaxis: FDEIAn)/
   口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome)とアナフィラキシー/
   食物アレルゲン吸入によるアナフィラキシー
食物アナフィラキシーの原因診断
アナフィラキシー発症時の治療
  アドレナリン自己注射器エピペン(R)
除去食と誤食の予防
食物アナフィラキシーの予後

10.局所麻酔薬によるアナフィラキシー(丹羽 均)
局所麻酔薬によるアレルギー反応
局所麻酔薬アレルギーの発生頻度
局所麻酔薬によるI型アレルギー(アナフィラキシー)
局所麻酔によるIV型アレルギー
局所麻酔薬の交差反応
局所麻酔薬への添加物によるアレルギー
  防腐剤のパラベン類によるアレルギー/
  抗酸化薬〔亜硫酸塩類(metabisulfite),硫酸塩類(bisulfite)〕によるアレルギー
局所麻酔薬アレルギーが疑われる患者の取り扱い
  異常反応が生じたときの詳細な状況の把握/皮膚テスト/
  皮内テストの問題点/チャレンジテスト/in vitro の検査

11.筋弛緩薬によるアナフィラキシー(神移 佳,山本 健)
日本で使用されている筋弛緩薬の種類
筋弛緩薬によるアナフィラキシーの頻度
筋弛緩薬の化学構造的特性
筋弛緩薬によるアナフィラキシーの危険因子
  性差/アトピー/薬物・食物アレルギー/筋弛緩薬の投与歴
筋弛緩薬によるアナフィラキシーの診断
  プリックテスト/皮内テスト/フローサイトメトリー/
  抗原特異的IgE 抗体の測定/樹状細胞による分析
筋弛緩薬に対するアナフィラキシーの既往がある場合の筋弛緩薬の選択

12.放射線造影剤によるアナフィラキシー(坂本 篤裕)
造影剤の歴史と改善
造影剤による副作用とアナフィラキシー
  分類/頻度/機序/副作用発現の予知/副作用発現の危険因子と問診の重要性
急性副作用の予防と治療
  予防/急変時の初期徴候と鑑別診断/モニタリング/
  造影剤使用に際して準備しておくべき緊急治療薬および器具/治療

13.抗生物質によるアナフィラキシー(山口 正雄,纐纈 力也)
ペニシリン系
セフェム系
β ラクタム系以外の抗生物質
注射用抗生物質使用前の即時型皮膚反応試験について
症例呈示
  症例1/症例2

14.ラテックスアレルギー(松永佳世子,矢上 晶子)
ラテックスアレルギー(LA)とは
LA の症状
LA と関係がある天然ゴム製品
LA のハイリスクグループ
主要なラテックスアレルゲン
LA の重症度分類
LA の診断方法
  問診/プリックテスト/使用テスト/ラテックス抗原特異IgE 抗体価
LA の確定診断
ラテックス-フルーツ症候群
ラテックス-フルーツ症候群の診断
LA に伴うアナフィラキシーショックの症例
LA およびラテックス-フルーツ症候群への対策
  各患者レベルでの取り組み/医療機関での取り組み/
  メーカーの取り組み/今後有望な治療法

15.手術室でのラテックスアレルギーの対応(近藤 陽一)
麻酔中のアナフィラキシーの症状と徴候
原因物質
アナフィラキシーの治療
アナフィラキシーの予防
ラテックスアレルギーの予防
術前にラテックスアレルギーをチェックすることは可能か
国立成育医療センター手術室のラテックスアレルギー対策
未解決の問題

16.特発性アナフィラキシー(円山 啓司)
分類
発症機序
臨床症状
診断
急性期治療
長期継続治療
予後

17.アナフィラキシーの病理的所見(村山 学子)
鑑定の現状
投与経路と感作率
肉眼的所見
  外表所見/内景所見
組織病理学的所見
組織学的検査方法
剖検事例
  事例1/事例2

18.アナフィラキシーと民事訴訟(水澤 亜紀子)
判決の意義と先例拘束力
  裁判例を解釈するうえでの留意点/裁判例をどのように参考にするか
アナフィラキシーに関する裁判例総論
病態や死因について
  急変の原因/病態や死因判断に関する診療上の留意点
過失論と因果関係論
  総論/アナフィラキシーショックの場合
問診
  問診義務総論/横浜地裁平成15 年6 月20 日判決/
  青森地裁平成15 年10 月16 日判決/内視鏡検査前投薬に関する裁判例/
  臨床上の留意点
適応
  必要性に乏しく適応外となる医薬品について/
  禁忌に該当するため適応外となる場合について
皮内テストなどの生体内検査
薬物の投与方法
  投与量/速度など/観察
観察
  最高裁平成16 年9 月7 日判決/臨床実務の参考になる点/
  その後の裁判例の動向
救命処置
  裁判例の検討/検討と対策
因果関係