エピドラスコピー

エピドラスコピー

監修 花岡 一雄
編集 五十嵐 孝
ISBN 4-7719-0257-7
発行年 2002年
判型 B5
ページ数 176ページ
本体価格 7,000円(税抜き)
電子版 なし


I.エピドラスコピーの歴史…平林由広/1
1.光源先端型内視鏡/2
2.硬性ファイバースコープ/3
3.軟性ファイバースコープ/8
4.エピドラスコピー/12

II.腰痛・坐骨神経痛の診断と評価…大谷晃司ほか/17
はじめに/17
1.腰痛の定義と原因別分類/17
2.腰痛診断に必要な解剖学的事項/18
3.腰椎疾患の診断の手順/19
4.腰痛を生じる代表的な腰椎疾患/28
5.腰痛の自然経過/40
6.非器質性腰痛(心因性腰痛)/44
7.腰椎手術後成績不良例―いわゆるfailed back syndrome, MOB(multiple operated back)―/47

III.エピドラスコピーの適応,禁忌,合併症とその対策…細川豊史ほか/53
はじめに/53
1.適応/53
2.機序/53
3.腰椎椎間板ヘルニア/54
4.腰部脊柱管狭窄症/55
5.Failed back syndrome(FBS)or multiple operated back(MOB)/56
6.エピドラスコピーの有効性/56
7.エピドラスコピーの禁忌/57
8.合併症および副作用と対策/57
おわりに/66

IV.手術室の準備…表 圭一/73
はじめに/73
1.手術室における機器類の配置/73
2.各機器類・必要材料の準備/74
3.薬剤類の準備/78
4.エピドラスコープ施行のための準備/80

V.エピドラスコピーの手技…佐藤哲雄/81
1.エピドラスコピーに必要な機器/81
2.エピドラスコピーに必要な人員/82
3.患者体位のとり方/83
4.透視装置の位置/83
5.患者の麻酔法/83
6.ファイバースコープと点滴の用意/84
7.手技/84
8.合併症/89
9.現在までの成績/89
10.注意すべきこと/89

VI.周術期の患者管理…齋藤和彦/91
1.エピドラスコピーと患者管理/91
2.術前の患者管理/91
3.エピドラスコピー施行中の管理/98
4.術後管理/103
5.患者管理の実際/104

VII.エピドラスコピー所見…五十嵐孝 ほか/107
1.エピドラスコピー所見の意義/107
2.内視鏡の性能上の限界/108
3.硬膜外腔のオリエンテーション/109
4.硬膜外腔の正常所見/112
5.硬膜外腔の異常所見/113
6.その他の所見/113

VIII.仙骨硬膜外造影…伊達 久/115
1.仙骨硬膜外造影(lumbar peridurography)とは/115
2.仙骨硬膜外造影の歴史的背景/115
3.正常な仙骨硬膜外造影(解剖・手技)/115
4.X線造影剤/119
5.正常な仙骨硬膜外造影所見/121
6.術前の仙骨硬膜外造影所見/123
7.術中の仙骨硬膜外造影所見/126
8.術後の仙骨硬膜外造影所見とその変化/129
9.合併症(造影剤の副作用とブロックの副作用)/133
10.仙骨硬膜外造影の意味/136

IX.放射線の取り扱い…伊達 久/139
1.画像診断における放射線照射の指示/139
2.放射線の尺度(単位)/139
3.確定的影響と確率的影響/140
4.実効線量と等価線量/140
5.放射線被曝/141
6.公衆被曝/141
7.医療被曝/142
8.透視における患者の被曝量/142
9.職業被曝/144
10.職業被曝を低減するための防護措置/144
11.放射線による人体への影響/146
12.放射線による遺伝的影響/147
13.放射線による皮膚障害/147
14.放射線と癌・白血病との関係/148

X.内視鏡の保守…五十嵐孝 ほか/151
1.内視鏡の機種/151
2.内視鏡取り扱い上の注意/151
3.機器のトラブル,故障とその処理/153
4.内視鏡と感染/154
5.内視鏡の洗浄,消毒,滅菌/155
6.滅菌を行う医療従事者の安全対策/157

おわりに/158

監修者序文

光ファイバー技術の進歩により,硬膜外腔を内視鏡的に観察することが可能となり,慢性腰痛や坐骨神経痛などの治療として広く応用されるようになってきた。米国で1995年に臨床使用されて以来,我が国においても近年この技術が急速に普及しつつある。日本麻酔科学会第47回大会(2000年4月,東京都)において,ワークショップとしてエピドラスコピーを取り上げ,本編著者である五十嵐孝先生の司会のもと,米国エール大学 Lloyd Sabeshi先生,福島県立医大整形外科大谷晃司先生,防衛医大麻酔科佐藤哲雄先生,京都府立医大山下智充先生,栃木県立下都賀総合病院麻酔科安部充二先生,自治医科大学麻酔科齋藤和彦先生らの基礎的,臨床的見解について御提示戴いた。会場ははちきれんばかりの聴衆で満杯となり,熱気ある討論が繰り広げられた。参加者のエピドラスコピーへの強い興味と,また討論としても十分に満たされない部分があると私自身感じて,エピドラスコピーに関する書物を企画し,今回,克誠堂出版から本書「エピドラスコピー」が刊行されることになった。著者の方々はワークショップで御発表になられた先生方を中心として,ワークショップで呈示しきれなかった話題を加えてある。まことに時期を得ており,編著者の五十嵐孝先生をはじめとする諸先生の努力に深く敬意を表したい。

内容的には,エピドラスコピーの歴史からはじまって,腰痛や坐骨神経痛への診断と治療への応用など臨床的な適応,禁忌,偶発症とその対策,実際に使用する際の手術室での準備,手技,麻酔管理を含めた周術期患者管理,エピドラスコピーの所見呈示,硬膜外造影所見と放射線の取り扱いを含めたエピドラスコピーの保守など,本書はまさにエピドラスコピーの全てを網羅してある。これからエピドラスコピーに入門される先生方はもちろんのこと,既にかなりの域に達しておられる先生方にとっても,大変役立つ成書と確信する。

今後,エピドラスコピーが,腰痛や坐骨神経痛を含む痛みやしびれの治療法の1つとして広く適応される可能性を秘めている。したがって保険適応を得るためには更に症例数を重ね,その適切な応用についての検討も必要である。日本臨床麻酔学会第20回大会(2000年11月,佐賀市)時に,第1回エピドラスコピー研究会を立ち上げた。米国から実地医家であるElliot Krames先生をお招きし,臨床の実際について御自身の経験を踏まえて,米国での現状をお話し戴いた。また,日本の現状については,本編著者である五十嵐孝先生に述べて戴いた。この研究会でも満席の盛況さで,多くの先生方の興味をそそった。

本書が,エピドラスコピーの成書として,今後の痛み治療に大いに貢献できるものと確信する。

2001年春
花岡 一雄

編集者序文

エピドラスコピーは難治性の腰下肢痛を有する患者に対する診断治療法の1つである。この方法の特長は,侵襲度の低い方法であること,硬膜外腔の肉眼的観察所見が得られること,直視下の潅流・洗浄・癒着剥離が行えること,病変部位への確実な薬剤投与が期待できること,本法施行後の硬膜外ブロックの十分な広がりが期待できることである。

米国で始められたこの方法は,我が国をはじめ英国,独国,豪州,韓国などで難治性の腰下肢痛をもつ患者の診断治療に広く応用され,有効性が認められてきている。本法は今後重要な診断治療法になると思われるが,解決すべき研究課題も多く,未だ一般的な手技といえる状況ではない。

本書は,痛みの治療に携わる整形外科,ペインクリニック科,麻酔科などの臨床医,研修医,学生にエピドラスコピーの知識を短時間で整理してもらい,日常の臨床で本書がただちに役立つことを目指して企画されたものである。内容は,エピドラスコピーの歴史的背景,腰下肢痛の診断,エピドラスコピーの実際,患者や機器管理の大きく4つに分かれ,通読することによりエピドラスコピーの全てが網羅できるような内容とした。また,通読する時間的余裕のない場合には,リファレンスブックとして必要な部分だけを読んでもただちに役立つ内容とした。

執筆に御協力いただいた先生方は,エピドラスコピーに強い関心を持たれ,実際の臨床経験も豊富な先生方である。いずれの章にも,執筆者の経験からの意見や工夫が織り込まれており,役立つ記述がわかりやすく収められている。これからエピドラスコピーを行おうとしている先生方は勿論のこと,既にエピドラスコピーを行っている先生方にも,本書を役立てていただければ幸いである。

最後に,本書の企画とご指導をいただいた花岡一雄先生に心から御礼を申し上げると共に,快く執筆のご協力をいただいた平林由広先生,大谷晃司先生,菊地臣一先生,細川豊史先生,山下智充先生,廣瀬宗孝先生,表圭一先生,佐藤哲雄先生,齋藤和彦先生,瀬尾憲正先生,伊達久先生に心から感謝いたします。また,本書の作製にご努力いただいた土田明氏をはじめ克誠堂出版の方々に深い謝意を表します。

2002年春
五十嵐 孝