人工呼吸療法:最近の進歩

人工呼吸療法:最近の進歩

編集 千葉大学 教授 西野 卓
ISBN 4-7719-0218-6
発行年 2000年
判型 B5
ページ数 176ページ
本体価格 7,600円(税抜き)
電子版 なし


第1章 人工呼吸療法の歴史と概念の変遷…西野  卓 1
I.人工呼吸の歴史 1
II.換気様式の発展 3
1.終末呼気陽圧(positive end-expiratory pressure ventilation:PEEP) 3
2.間欠的強制換気法(intermittent mandatory ventilation:IMV) 4
3.持続気道陽圧(continuous positive airway pressure:CPAP) 4
4.高頻度換気(high-frequency ventilation:HFV) 4
5.pressure support ventilation(PSV) 5
6.proportional assisted ventilation(PAV) 5
7.permissive hypercapnia 5
8.腹臥位(prone position)による呼吸管理 6

III.血液ガス分析の発展 6
IV.新しい呼吸管理法 7
1.非侵襲的陽圧換気法(noninvasive positive pressure ventilation:NIPPV) 7
2.液体換気療法(liquid ventilation) 8
3.体外膜型肺(extracorporeal membrane oxygenation:ECMO) 8

V.呼吸不全への新しいアプローチ 9
1.一酸化窒素(nitric oxide:NO) 9
2.ヘリウムガスを用いた人工呼吸治療 10
3.サーファクタント 10 4.薬物療法 10

VI.人工呼吸の今後 11
第2章 人工呼吸モードの整理…佐藤 二郎 15
I.はじめに 15
II.人工呼吸モードの体系化 17
1.吸気制御関数(control functions) 19
2.呼吸位相変数(phase variables) 19
3.二次条件変数(conditional variables) 21

III.人工呼吸モードの概説 23
1.強制換気 23
2.自発換気 28

IV.終わりに 35
第3章 人工呼吸中のモニター…磨田  裕 37
I.呼吸管理に使用されるモニター 37
II.パルスオキシメトリ 39
III.カプノメトリ(CO2モニター) 42
1.測定の原理 42
2.CO2波形 45
3.CO2カーブモニター―呼気量との関係― 47

IV.換気のモニター 48
1.気道内圧 48
2.流量,換気量 50

V.グラフィックモニター 51
VI.インピーダンスニューモグラフィー,インダクタンスプレチスモグラフィー 52
VII.血液ガスのモニター 52
1.動脈血の採血,測定 52
2.測定値の評価 52
3.Coオキシメータによる酸素飽和度測定 53
4.持続動脈内血液ガスモニター 53
5.混合静脈血酸素飽和度(SvO2)モニター 54

VIII.呼吸仕事量モニター 55
IX.代謝モニター 56
X.湿度モニター 56
XI.おわりに 56
第4章 体位変換療法 特に腹臥位呼吸管理…氏家 良人 59
I.はじめに 59
II.腹臥位呼吸管理の対象とその病態 59
1.ARDSとその定義 59
2.ARDSにおける背側肺濃度上昇と下側肺傷害 61

III.腹臥位呼吸管理の臨床報告 62
1.1970年代後半(腹臥位呼吸管理の黎明期) 63
2.1980年代後半~90年代前半(腹臥位呼吸管理の再評価) 63
3.1990年代後半(ARDSに対する治療戦略とその評価) 64

IV.腹臥位呼吸管理の酸素化および予後に関する評価 67
1.腹臥位は酸素化を改善するか 67
2.ARDS症例に対する腹臥位呼吸管理は死亡率を改善するか 68

V.腹臥位による酸素化改善の機序 70
1.横隔膜運動の変化 70
2.換気血流比の改善 71
3.体位ドレナージ 71
4.静水圧の変化 71
5.肺内外圧差の改善 7
1 6.FRCの増加 72

VI.腹臥位呼吸管理の実際 72
1.目的 72
2.適応 72
3.禁忌 74
4.腹臥位時間 74
5.施行上の注意点 74

VII.最後に 76
第5章 特殊な呼吸管理法(ECMO,ECLA,PCPS,etc)…田代 雅文,寺崎 秀則 79
I.はじめに 79
II.用語の定義 79
III.体外式肺補助(extracorporeal lung assist:ECLA), 体外式心肺補助(extracorporeal lung and heart assist:ECLHA)の適応 81
1.小児・成人症例 82
2.新生児症例 82

IV.ECLA,ECLHAの方法 82
1.体外循環の脱送血 82
2.人工肺 83
3.体外循環回路と装置 84
4.血液凝固調節 85

V.実際 86
1.回路の充填 86
2.カテーテルの挿入 86
3.抗凝固療法 87
4.ベンチレータの設定 87
5.ガス流量の設定 87
6.循環動態の管理 87
7.離脱 88

VI.成績 88
1.extracorporeal life support organization(ELSO)集計 88
2.膜型人工肺研究会 89
3.熊本大学 90

VII.症例提示 92
VIII.進歩 92
1.技術的特徴 93
2.少量ヘパリンによるECLA 94
3.メシル酸ナファモスタットによるECLA 94
4.抗凝固薬を投与しないECLA 94

IX.今後 95
1.陽圧換気ECLA 95
2.救急蘇生への応用 95
3.脳低温療法とECLHAの併用療法 96

第6章 一酸化窒素(NO)吸入療法…今中 秀光 99
I.一酸化窒素(nitric oxide:NO)吸入療法の原理 99
II.NO吸入システム 100
1.プレミキシング方式 101
2.持続注入方式 101
3.吸気相同期方式 104

III.対象となる疾患 104
1.急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS) 104
2.新生児遷延性肺高血圧症(persistent pulmonary hypertension of newborn:PPHN) 107
3.開心術後の肺高血圧症 107

IV.モニタリング 108
V.NO吸入の副作用 109
1.回路内NO2の産生 109
2.メトヘモグロビン血症 109
3.NO吸入中止によるリバウンド現象 109
4.左心不全の増悪 109
5.酸素化能の悪化 109
6.余剰ガスの排気について 110

VI.NO吸入に際して 111
VII.まとめ 111
第7章 液体換気療法(liquid ventilation)…田村 正徳 115
I.液体換気療法(liquid ventilation:LV)の原理 115
II.液体換気療法に用いる液体 115
III.perfluorocarbon(PFC)とは? 116
IV.PFCの生体内での代謝 117
V.liquid ventilationで酸素化やガス交換が改善する機序 118
VI.total liquid ventilation(TLV)とpartial liquid ventilation(PLV) 120
1.total liquid ventilation(TLV) 120
2.partial liquid ventilation(PLV) 123

VII.他の呼吸管理法との組み合わせ 124
1.高頻度振動換気(high-frequency oscillation:HFO) 124
2.サーファクタント補充療法 125 3.一酸化窒素(nitric oxide:NO)吸入療法 125
4.体外膜型肺(extracorporeal membrane oxygenation:ECMO) 126

第8章 人工呼吸中の鎮静法…星  邦彦,松川  周 129
I.はじめに 129
II.鎮静の目的および方法 130
1.鎮静薬にミダゾラムを用いた持続鎮静法 132
2.鎮静薬にミダゾラムを鎮痛薬にケタミンを用いた持続鎮静法 133
3.鎮静薬にミダゾラムを鎮痛薬にフェンタニルを用いた持続鎮静法 137
4.鎮静薬にプロポフォールを用いた持続鎮静法 137
5.吸入麻酔薬による持続鎮静法 137
6.その他の薬物 139

III.鎮静中の注意点 140
IV.結論 141
第9章 非侵襲的陽圧換気法 鈴川 正之 143
I.非侵襲的陽圧換気法とは何か 143
II.従来の人工呼吸と何が違うのか 144
1.気管内挿管をしないことによって得られるメリット 144
2.気管内挿管をしないために起こるデメリット 146
3.マスクを付けるために起こるデメリット 147

III.どのような疾患に使うといいのか 147
1.急性呼吸不全における適応 147
2.慢性呼吸不全における適応 152

IV.どのように施行したらいいか 154
1.適応の判断 154
2.患者にマスクを付けるコツ 156
3.医師,看護婦,呼吸療法士の教育 157

V.NPPV用の人工呼吸器について 158
VI.おわりに 159
第10章 特殊患者の呼吸管理…五藤 恵次 163
I.はじめに 163
II.肺の保護とpermissive hypercapnia 163
1.人工呼吸の欠点 163
2.permissive hypercapnia 164
3.permissive hypercapniaの問題点と許容範囲 164

III.ARDSにおける呼吸管理 165
1.病態と人工呼吸 165
2.lung protective ventilatory strategy(LPVS) 165
3.人工呼吸条件の設定 165
4.LPVSの有効性の検討 166

IV.COPDにおける呼吸管理 167
1.病態の特徴 167
2.人工呼吸の影響 169
3.呼吸管理とウイニング 169

V.肺気腫に対するvolume reduction surgery(VRS)の周術期管理 170
1.肺のvolume reduction surgery(VRS)とは 170
2.patient profile 172
3.周術期の病態 172
4.モニタリング 173
5.術前および術中の人工呼吸 173
6.早期抜管 175
7.術後疼痛管理 176
8.術後呼吸管理 176
9.術前呼吸機能評価と術後呼吸不全の発生 177
10.VRSによる呼吸機能改善の機序 177

VI.肺移植患者の周術期呼吸管理 178
1.病態 179
2.NO吸入と体外膜型肺(extracorporeal membrane oxygenation:ECMO)の使用 180
3.術後呼吸管理 180
4.免疫抑制剤の影響 180

VII.おわりに 180
第11章 腎不全合併呼吸不全の治療 持続的血液濾過透析(CHDF)の有効性  菅井 桂雄,平澤 博之,松田 兼一,中西加寿也 183
I.はじめに 183
II.急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)の病態生理 183
III.ARDS症例におけるhumoral madiator血中濃度 184
IV.ARDS症例における血漿膠質浸透圧(colloid osmotic pressure:COP) 185
V.CHDFを用いたARDS治療戦略 186
VI.ARDSに対するCHDFの適応と施行方法 187
1.ARDSに対するCHDFの適応 187
2.ARDSに対するCHDFの施行条件 187
3.ARDSに対するCHDFの施行方法 188

VII.ARDS症例に対するCHDFの効果 189
1.mediator除去能 189
2.mediator除去による肺酸素化能に与える影響 190
3.CHDF施行による血漿膠質浸透圧(COP)の変化とRI 190
4.ARDS症例に対しCHDF施行による3日間のcumulative water balanceとCOP,CVPおよびRIの変化 191

VIII.おわりに 192
第12章 在宅人工呼吸療法…木村謙太郎 195
I.はじめに 195
II.在宅人工呼吸療法(home mechanical ventilation:HMV)の定義と意義 196
1.定義私案 196
2.意義と目的 196

III.わが国のHMVの歴史と現状 197
1.歴史 197
2.現状 198
3.支援体制 200

IV.適応と前提条件 200
1.適応病態 201
2.前提条件 201
3.小括 202

V.方法のポイント 202
1.準備 202
2.換気補助法 203
3.教育とトレーニング 204

VI.HMV形成に向けての諸活動と作業課題 204
1.諸活動 204
2.作業課題 205

VII.結語 206
第13章 人工呼吸中の感染の予防と治療…稲葉 英夫 209
I.院内感染症としての肺炎(nosocomial pneumonia) 209
II.集中治療における院内感染症 210
III.人工呼吸管理中の肺炎 210
IV.院内感染による肺炎の病態生理 211
V.院内感染による肺炎の診断 212
VI.院内感染としての肺炎の危険因子 213
VII.感染制御のための方略 214
1.体位 215
2.人工呼吸 215
3.ストレス潰瘍予防 215
4.selective digestive decontamination(SDD) 215

VIII.医療の効率と質 216
索 引 219

20世紀後半のテクノロジーの発展により,レスピレータを含む医療器具の改良にはめざましいものがあった。しかし,現段階においても重症な呼吸不全や低酸 素血症に対する治療が確立したとはいえず,人工呼吸療法はなお混沌とした状態にある。このような状況を打破するためには,これまでの知識や情報を一度整理 し,何が解決し,何が未解決なのかを明らかにしたうえで次の段階を模索する必要がある。残念ながら,これまでこのような要求を満たす書物が見当たらなかっ た。そこで,本書の出版が企画された。

本書では人工呼吸療法に関連するいくつかの厳選したテーマについて,それぞれの専門家から最新の知見を加えて解説してもらった。本書はいわゆる人工呼吸 の教科書ではない。人工呼吸療法を理解するための基礎的事項についてはもちろん述べられているが,単なるレスピレータの使用法の解説は避け,人工呼吸療法 に関連するさまざまな問題点を広く実践的な見地から解説する内容となっている。

本書の第1章は人工呼吸療法の歴史と概念の変遷について解説してあり,人工呼吸療法の歴史を含めた全体の流れを知りたい場合はこの章から読み始めるのが 良いかもしれない。しかし,本書の各章はそれぞれ独立した内容であり,興味ある章から読み始めても一向に構わない。各章を独立した内容とさせたため,全体 を通して多少の重複がみられる点はご容赦願いたい。

本書によって人工呼吸療法に対する過去の知識・情報が整理され,21世紀に向けた新しい方向が少しでもみえてくると本書の目的は達成されたことになる。特に,これからこの分野で活躍される若い医師のお役に立つことを願っている。(序文より抜粋)