結核の今昔
-統計と先人の業績から学び今後の課題を考える-

結核の今昔

著者 島尾忠男
ISBN 978-4-7719-0333-3
発行年 2008年
判型 B5
ページ数 ページ
本体価格 154円(税抜き)
電子版 なし


明治初期から今日に至るまでの,
結核に関する疫学データをここに集結。

世界でもまれにみるわが国の膨大なデータを分析・考察し, 結核の未来についても語る著者渾身の一冊!

第1章 日本の近代化とともに結核が増加,主な被害者は若い女性

1.肺病死亡統計の始まり…1
1)肺病死亡統計/2)肺病死亡統計と結核死亡統計
2.結核流行の歴史…5
3.結核流行の第1期(1889?1918 年),最も被害を受けたのは若い女子…6
1)年齢階級別にみた結核死亡率の推移/2)若い女生と結核/
3)生年コホート別にみた女性の結核死亡率

第2章 インフルエンザの大流行で,結核はいったん減少し,再増加

1.結核流行の第2期,インフルエンザ大流行の影響で結核死亡率減少…14
2.大きな人口淘汰の感染症流行への影響…14
1)大きな事故の影響/2)1918年に始まったインフルエンザの大流行/
3)インフルエンザ大流行の結核流行への影響/
4)インフルエンザ大流行の諸外国の結核流行への影響
3.結核流行の第3期?結核は第2次工業化,戦時状態とともに再度増加?…28

第3章 結核流行の第4期-第2次大戦の影響と結核対策の成果-

1.第2次大戦の結核流行への影響…29
1)第2次大戦前後の結核死亡率の推移/2)第2次大戦の結核流行への影響
2.BCG接種の効果?…32
3.近代的な結核対策とその結核流行への影響…34
1)結核対策の狙い/2)結核の感染,発病,進展を阻止する手段/
3)本格的な結核対策の開始/4)結核対策の結核流行への影響

第4章 結核流行の第5期-結核減少の停滞,再増加-

1.結核減少の停滞,再増加…40
1)日本の結核の最近50年間の動向/2)諸外国の結核罹患率の動き/
3)結核減少速度の鈍化,再上昇の原因
2.日本人口の急速な高齢化と結核罹患率減少速度鈍化との関連…43
3.石川県でみられた過去の結核蔓延の後遺症…45

第5章 今後の結核の動向に影響する人口移動とエイズ流行

1.人口移動の結核への影響…51
2.エイズ流行の結核の蔓延状況への影響…53
1)世界のエイズ流行の状況/2)エイズ流行の結核への影響
3.日本のHIV感染,エイズの状況と結核との関係…59

第6章 初感染発病学説

1.結核の初感染発病学説の研究が始められた背景…62
2.結核初期変化群の病理解剖学的研究…62
3.小林義雄の海軍でのツ反応を用いた胸膜炎の研究…63
1)研究開始のきっかけ/2)ツ反応検査を応用した研究の開始/
3)ツ反応陽転者からの結核の発生/4)海軍で軍務中に発生した胸膜炎の検討
4.岡,小林の研究成績のまとめと所感…68
5.千葉保之,所沢政夫の結核初感染に関する臨床的研究…69
1)ツ反応検査に胸部単純X線検査を併用した研究の開始/
2)1941年当時の国鉄職員の結核蔓延状況/
3)ツ反応の陽転と胸部単純X線検査による結核性所見の発見状況/
4)陽転後長期間の観察中の結核発病/71
6.初感染発病学説の完成…72
7.結核の感染,発病についての私見…73

第7章 胸部単純X線写真の読影法の開発

1.X線の臨床診断への応用…74
2.肺の剖検方法の開発…74
3.トレース法の開発…74
4.結核症の構成の研究…76
5.乾酪巣内の結核菌の生態に関する研究…79
6.先達の偉大な成果と後を受け継いだ者としての反省…80

第8章 間接撮影法の開発,結核対策としての集団検診

1.間接撮影法の開発…83
2.間接撮影用機材の進歩…83
3.初期の集団検診の成績…85
4.第2次大戦終了後早い時期の集団検診…86
5.結核予防法に3本柱の一つとして採用…87
6.大企業の積極的な結核対策…88
7.結核健康診断のその後の展開…89
8.健康診断のあり方についての反省…91

第9章 日本の研究者が開発した技術

1.BCG接種-BCG凍結乾燥ワクチンの大量生産に成功-…93
1)BCGワクチン開発の歴史/2)日本の初期の研究/
3)凍結乾燥ワクチンの大量生産に成功/4)その後の日本国内でのBCG接種の動きと反省
2.ウサギの肺に空洞を作ることに成功…103
3.カナマイシンの開発…103

第10章 結核実態調査

1.結核の蔓延状況を知ることの難しさ…106
2.第1回結核実態調査の実施…106
3.その後の結核実態調査…108
4.断面調査の成績…109
5.動態調査,追跡調査の成績…113

第11章 結核と国際保健医療学

1.国際保健医療学とは…118
2.結核の蔓延状況を知る指標…118
3.世界の結核の蔓延状況…119
4.途上国の結核対策-なぜ失敗し,結核問題が1970年代,80年代に世界で無視されていたか-…122
5.なぜ結核問題の重要性が再認識されてきたか…123
6.世界の結核対策の新たな展開-格差是正への挑戦-…125
7.今後の方向…127

第12章 今後の課題

1.最近の結核の動向…130
2.今後の結核対策の問題点…134
3.今後の結核研究のあり方…136
1)結核感染の頻度に関する研究/2)結核感染の様相に関する研究/
3)新抗結核薬に関する臨床的研究/4)結核病床に関する研究/
5)内因性再燃の機序とその予防法の開発に関する研究
4.おわりに…138